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鍛えられた老人
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ところが、大男の蹴りは涼介の腹を直撃することは無かった。武闘家のような老人が現れて、素早く大男の蹴り出した足を上に押しやりながら足を払ったのだ。大男はひっくり返って宙を舞って転んだ。最初はその動きの速さからとても老人とは思えなかった。しかし、涼介の目の前に立って構えているのは、長い深いシワの刻み込まれた白髪の老人であった。老人とはいえ、鍛え抜かれた体は無駄な脂肪が全くついてなく、理想的な筋肉がしっかりと付いていた。大男は老人の姿を見ると「ア、アビバ」と叫んで慌てて走り去って行った。カラスもその後を追っていく。どうやらこの老人はこの辺りでは恐れられている存在のようだ。
老人はしわがれた声で涼介に聞いた。
「おい。若者。今の一撃を浴びていたら致命傷を負っていたぞ。そこまでしてなぜ、そのスライムをかばう」
涼介は少し考えてから「こいつが懐いてきたから」と言った。
「ただ、それだけの理由で命をかけて守ろうとしたというのか。モンスターをかくまうのは重罪なんだぞ!」
「モンスターだからと言って倒さないといけない理由はないです」
「ぬ、ぬっ!」
老人は顔を紅潮させた。そしてしばらくすると、両目から涙を溢れさせて泣き始めた。
涼介には老人がなぜ泣いているのか理解できなかったが、もしかしたら自分はとんでもないことをしてしまっているのかもしれないと感じた。
「若者よ、私は感動した。誰もが自己の利益を追求して生きているこのご時世で、貴様の生き様は素晴らしい。どんなに困難があろうとも突き進め! さらば」
そう言って老人は林の奥へ消えていった。涼介は「ありがとうございました」とお礼を言ったが、老人の耳には届いていなかっただろう。
とりあえずの危機を脱して安堵した涼介は体中に痛みを感じた。少し体を動かすだけで痛みが走る。何とか「ラ、ラ、ラララ」と気絶してうなされているスライムを草むらに隠すとそれ以上は動けなくなった。
涼介はぐったりしたスライムを見ながら回復する事を願った。この時はまだスライムをかばうことでとてつもない状況に追いやられることを知らなかった。
老人はしわがれた声で涼介に聞いた。
「おい。若者。今の一撃を浴びていたら致命傷を負っていたぞ。そこまでしてなぜ、そのスライムをかばう」
涼介は少し考えてから「こいつが懐いてきたから」と言った。
「ただ、それだけの理由で命をかけて守ろうとしたというのか。モンスターをかくまうのは重罪なんだぞ!」
「モンスターだからと言って倒さないといけない理由はないです」
「ぬ、ぬっ!」
老人は顔を紅潮させた。そしてしばらくすると、両目から涙を溢れさせて泣き始めた。
涼介には老人がなぜ泣いているのか理解できなかったが、もしかしたら自分はとんでもないことをしてしまっているのかもしれないと感じた。
「若者よ、私は感動した。誰もが自己の利益を追求して生きているこのご時世で、貴様の生き様は素晴らしい。どんなに困難があろうとも突き進め! さらば」
そう言って老人は林の奥へ消えていった。涼介は「ありがとうございました」とお礼を言ったが、老人の耳には届いていなかっただろう。
とりあえずの危機を脱して安堵した涼介は体中に痛みを感じた。少し体を動かすだけで痛みが走る。何とか「ラ、ラ、ラララ」と気絶してうなされているスライムを草むらに隠すとそれ以上は動けなくなった。
涼介はぐったりしたスライムを見ながら回復する事を願った。この時はまだスライムをかばうことでとてつもない状況に追いやられることを知らなかった。
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