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御座候
まだ食べた事ない御座候
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僕は御座候を食べたことがない。
というか、実は昨日まで御座候が何かを知らなかった。
「ござそうろうって知ってる?」
そう彼女が語りかけてきた時、僕はお芝居か映画のタイトルかなにかかと思った。
「知らない」と答えると、彼女はまくし立てるように御座候について説明を始めた。
「御座候は私が一番好きな大判焼きで、この辺だと福山の天満屋の地下で売っているんよ。食べたことないの?」
そう話す彼女はキラキラと輝いていた。僕は彼女のそういったこだわりのある所はとても好きだ。きっととても美味しいに違いない。彼女がそこまで言う御座候を一度は食べてみたいなと率直に思った。
「それでさあ」更に話は続いた。
「これすごくない?」そう言って見せてくれたスマホの画面には大きくてリアルな大判焼きのクッションを抱える女性の写真。僕は思わず笑った。無駄に美味そうなクッションである。
「これ、とても出来がいいでしょ? すごく欲しいんだけど、エッセイを書いて応募しないともらえないんよ」
「へぇ」僕はそんなものを欲しがってる彼女が可愛いなと思った。
彼女がエッセイの書き方を友達に相談したところ、みんなからおばあちゃんとの思い出話を提案されたそうだ。
「他に何かいいアイデアないかな? 締切まであと3日しかないのよ」
創作でも何でもいいからエッセイを書いてクッションを手に入れたい。彼女は本気モードだ。
僕は無駄にリアルな大判焼きのクッションの上に寝そべる彼女を想像する。彼女はきっと幸せに違いない。彼女にはクッションをぜひ手に入れて欲しい。だけど僕は御座候を食べたことすらない。時間もない。良い思い出エッセイなんて思いつくはずもない。
ただ、いつか彼女と一緒に御座候を食べてみたいなとは思っている。
おわり
というか、実は昨日まで御座候が何かを知らなかった。
「ござそうろうって知ってる?」
そう彼女が語りかけてきた時、僕はお芝居か映画のタイトルかなにかかと思った。
「知らない」と答えると、彼女はまくし立てるように御座候について説明を始めた。
「御座候は私が一番好きな大判焼きで、この辺だと福山の天満屋の地下で売っているんよ。食べたことないの?」
そう話す彼女はキラキラと輝いていた。僕は彼女のそういったこだわりのある所はとても好きだ。きっととても美味しいに違いない。彼女がそこまで言う御座候を一度は食べてみたいなと率直に思った。
「それでさあ」更に話は続いた。
「これすごくない?」そう言って見せてくれたスマホの画面には大きくてリアルな大判焼きのクッションを抱える女性の写真。僕は思わず笑った。無駄に美味そうなクッションである。
「これ、とても出来がいいでしょ? すごく欲しいんだけど、エッセイを書いて応募しないともらえないんよ」
「へぇ」僕はそんなものを欲しがってる彼女が可愛いなと思った。
彼女がエッセイの書き方を友達に相談したところ、みんなからおばあちゃんとの思い出話を提案されたそうだ。
「他に何かいいアイデアないかな? 締切まであと3日しかないのよ」
創作でも何でもいいからエッセイを書いてクッションを手に入れたい。彼女は本気モードだ。
僕は無駄にリアルな大判焼きのクッションの上に寝そべる彼女を想像する。彼女はきっと幸せに違いない。彼女にはクッションをぜひ手に入れて欲しい。だけど僕は御座候を食べたことすらない。時間もない。良い思い出エッセイなんて思いつくはずもない。
ただ、いつか彼女と一緒に御座候を食べてみたいなとは思っている。
おわり
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