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六
未沙と良夏
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「あの防犯カメラ、見れたらいいのにな」
尚は軒下に設けられた無機質な眼を見上げた。
「無理だよ。一般の人は」未沙がその眼に向かって、べえっと舌を出した。
「ねえ、ミサちゃんとヨシカって、僕が来る前から駅前にいたの?」
街灯が灯り始めていた。まだ雨はやみそうもない。
「そうね。ナオちゃんの下りた電車の一本前。昼前の待ち合わせだったの」
「その時さ、子連れの自転車とか見なかった?」
「お喋りに夢中だったから。んー、でも子供の声は聞いてないよ」
「……ヨシカと何の話をしてたの?」
話の流れで、聞かなくてもいいことを聞いていた。
「ナオちゃんのことを聞かれたわ。この間、ココシティーで見たってね。で、お友達倶楽部を利用してるのかって。あとは、ヨシカのダンス仲間のことを話したの」
未沙があまり話したくなさそうに話し出した。
佐野ビルまでほんのニ、三分の距離。けれど沈黙を続けるには長い距離だった。
「ダンスイベントは上手くいったんだって、ヨシカちゃんなりに。でさ、無料配布の地方誌ってあるじゃん。それのイベント紹介の欄に、ヨシカちゃん達のチームが載ったの」
「すごいね」
チーン――尚が感心したと同時に、エレベーターのドアが開いた。
「ヨシカちゃんが言うにはさ、それのメインの写真がヨシカちゃんだったんだって。……でさ、そのせいでリーダー格の子から無視され始めたって」
未沙がエレベーターの壁にもたれた。青白い光が未沙の横顔を照らす。
「ダンスなんか上手くならなきゃ良かったって、別れ際に言われちゃった」
未沙の顔は泣きそうに見えた。
「なんでそんなこと」――良夏からダンスを習いたいって言ったくせに。
尚には、小学校でリーダー格だった良夏が無視されているという事実も驚きだったが、何よりも、それを言うために、わざわざ〈お友達〉を買ったことの方が信じられなかった。
「わけわかんない」
「友達を見返すためのダンスはさ、結果、友達の嫉妬を買っちゃったってわけ」
未沙が短い溜息を吐いた。
「……まあいいの。私は彼女が望む〈お友達〉を演じてあげただけだから。ちゃんと料金も貰ったしね。ナオちゃんは気にしないで」
未沙が寂しそうに笑った。
尚は、尋ねなきゃいけないことがまだあるような気がしていた。けれどそれを思いつくよりも早くエレベーターは三階に到着し、静かにドアが開いた。
「わ、タツヤさん!」
出てすぐ、自動販売機の横で、龍也が腕組みをして立っていたのだ。
「遅かったからさ」
尚の方を向かず、視線を逸らしたまま言い訳のように言った。
「何か見逃していないかなって思って探してたんだよ」
過保護じゃん――と、未沙の呆れた表情を、鈍感な龍也が気付くはずもなく、「今日はさ、もう遅いだろ。送ってやるよ」とまで、言い出した。
「え、まだ早いよ。塾の時は八時回ることだってあるし」
「遠慮すんなよ」
尚が反発するも、龍也の決意は変わらなさそうだ。
「いいなあ。私に『送ってやる』なんて、タツ、言ってくれたことあったっけ?」
未沙が茶化す。
「うるせえな。ナオはまだ中坊なんだぜ」
龍也の反応の早さが可笑しかった。
「お帰り。何か見つかったかい?」
部室では、竜平が自販機のミルクティーを飲みながら待っていた。
未沙が「リュウもナオちゃんの帰りを待ちわびてたの?」とからかった。
「まさか。タツじゃあるまいし」
それでも二人して迎えに出たのだろう。過保護だろうが、心配してくれる友人がいるってことは羨ましいと思うのだ。
今日、良夏に売ったのは、〈友達〉なんかじゃなかったと、密かに未沙は後悔していた。
尚が竜平の向かいに座った。
「この帽子、僕がお昼に落としたみたい。そのまま残っていた」
「……そうか」
それが何を意味するのか、頭のいい竜平はすぐに察した。
「なあ次郎長、メモやオクルミを警察に届けるのは、明日の方が良くないか。もう定時を過ぎている」
竜平がスマホ越しに次郎長の考えを問うた。
「昼間落とした帽子がそのままだったってことは、警察は自転車置き場に立ち寄っていないってことじゃないか」
「うーん。もしかしたら、駐輪場を管理している……例えば商工会とかで、直接、監視カメラの録画をチェックしたのかもしれないよ。けどまあ、確かに朝からの方が、ケーサツも頑張って仕事してくれそうだけどね。俺は少し気になるカキコを見つけたから、もうちょい調べるわ。明日、そっちに行く」
「珍しいな。何時だ?」
「ミサも来るかな?」
竜平の問いに質問で返って来た。少しばかり引っかかるものを感じつつも、未沙に質問を振った。
「ミサ、明日はバイトを休むんだっけ?」
「うん! みんなは何時に集合?」
いつもなら休日はお昼、だいたい十一時から十二時過ぎくらいに集まっていた。
「警察にこの品物を届けるんだろ。だったら九時には」龍也が言った。
それに対して、「君が起きられるとは思えんがな」竜平が呆れた口調で返した。
「こんな時ぐらい、早寝早起きだ」
「ぼ、僕も頑張ります!」
慌てて尚も九時集合に賛成した。
「だとさ。ミサもそれでいいかな?」
「オッケーよん」
「ってことで、明日は全員九時集合だ。まあ、タツとナオにはすぐに〈手がかり〉を持って、警察に出頭してもらうがな」
「出頭って……クククク……お前らしい言い方だな。わかった、じゃあ、明日ってことで」
次郎長との会話がプツリと切れた。
「さてと、僕も帰ろう。ミサも遅くならないうちに帰った方がいいぞ。で、ナオはタツが送ってくれよな」
竜平は立ち上がり、黒のメッセンジャーバッグにラララの最新号を放り込んで斜めがけにした。
「ミサ、次郎長はミサに用があるみたいだ」
「え?」
去り際、未沙にそっと耳打ちをした。そのまま竜平は「じゃ」と短い別れの挨拶と共に出て行った。
ゲームをしない未沙と次郎長にはほとんど接点が無い。
未沙の表情が陰った。
「どうしたの?ミサちゃん」
尚は未沙のことが心配だった。どう考えても良夏の件は、未沙に影を落としていた。
「ううん。私も帰るわ。タツ、ナオちゃんをよろしくねぇ」
いつも以上に明るく、大げさに細い手を振った。
バンッ――「あいた! てへへ」
ぶんぶん振り回したせいで、腕をドアにぶつけている。わざとらしい照れ笑いをしながら、未沙が帰って行った。
龍也が呆れて苦笑いをした。
――ヨシカの件、タツヤさんに言ったらミサちゃん嫌がるかな……。
尚はソファーの背もたれに頭を預けた。
尚は軒下に設けられた無機質な眼を見上げた。
「無理だよ。一般の人は」未沙がその眼に向かって、べえっと舌を出した。
「ねえ、ミサちゃんとヨシカって、僕が来る前から駅前にいたの?」
街灯が灯り始めていた。まだ雨はやみそうもない。
「そうね。ナオちゃんの下りた電車の一本前。昼前の待ち合わせだったの」
「その時さ、子連れの自転車とか見なかった?」
「お喋りに夢中だったから。んー、でも子供の声は聞いてないよ」
「……ヨシカと何の話をしてたの?」
話の流れで、聞かなくてもいいことを聞いていた。
「ナオちゃんのことを聞かれたわ。この間、ココシティーで見たってね。で、お友達倶楽部を利用してるのかって。あとは、ヨシカのダンス仲間のことを話したの」
未沙があまり話したくなさそうに話し出した。
佐野ビルまでほんのニ、三分の距離。けれど沈黙を続けるには長い距離だった。
「ダンスイベントは上手くいったんだって、ヨシカちゃんなりに。でさ、無料配布の地方誌ってあるじゃん。それのイベント紹介の欄に、ヨシカちゃん達のチームが載ったの」
「すごいね」
チーン――尚が感心したと同時に、エレベーターのドアが開いた。
「ヨシカちゃんが言うにはさ、それのメインの写真がヨシカちゃんだったんだって。……でさ、そのせいでリーダー格の子から無視され始めたって」
未沙がエレベーターの壁にもたれた。青白い光が未沙の横顔を照らす。
「ダンスなんか上手くならなきゃ良かったって、別れ際に言われちゃった」
未沙の顔は泣きそうに見えた。
「なんでそんなこと」――良夏からダンスを習いたいって言ったくせに。
尚には、小学校でリーダー格だった良夏が無視されているという事実も驚きだったが、何よりも、それを言うために、わざわざ〈お友達〉を買ったことの方が信じられなかった。
「わけわかんない」
「友達を見返すためのダンスはさ、結果、友達の嫉妬を買っちゃったってわけ」
未沙が短い溜息を吐いた。
「……まあいいの。私は彼女が望む〈お友達〉を演じてあげただけだから。ちゃんと料金も貰ったしね。ナオちゃんは気にしないで」
未沙が寂しそうに笑った。
尚は、尋ねなきゃいけないことがまだあるような気がしていた。けれどそれを思いつくよりも早くエレベーターは三階に到着し、静かにドアが開いた。
「わ、タツヤさん!」
出てすぐ、自動販売機の横で、龍也が腕組みをして立っていたのだ。
「遅かったからさ」
尚の方を向かず、視線を逸らしたまま言い訳のように言った。
「何か見逃していないかなって思って探してたんだよ」
過保護じゃん――と、未沙の呆れた表情を、鈍感な龍也が気付くはずもなく、「今日はさ、もう遅いだろ。送ってやるよ」とまで、言い出した。
「え、まだ早いよ。塾の時は八時回ることだってあるし」
「遠慮すんなよ」
尚が反発するも、龍也の決意は変わらなさそうだ。
「いいなあ。私に『送ってやる』なんて、タツ、言ってくれたことあったっけ?」
未沙が茶化す。
「うるせえな。ナオはまだ中坊なんだぜ」
龍也の反応の早さが可笑しかった。
「お帰り。何か見つかったかい?」
部室では、竜平が自販機のミルクティーを飲みながら待っていた。
未沙が「リュウもナオちゃんの帰りを待ちわびてたの?」とからかった。
「まさか。タツじゃあるまいし」
それでも二人して迎えに出たのだろう。過保護だろうが、心配してくれる友人がいるってことは羨ましいと思うのだ。
今日、良夏に売ったのは、〈友達〉なんかじゃなかったと、密かに未沙は後悔していた。
尚が竜平の向かいに座った。
「この帽子、僕がお昼に落としたみたい。そのまま残っていた」
「……そうか」
それが何を意味するのか、頭のいい竜平はすぐに察した。
「なあ次郎長、メモやオクルミを警察に届けるのは、明日の方が良くないか。もう定時を過ぎている」
竜平がスマホ越しに次郎長の考えを問うた。
「昼間落とした帽子がそのままだったってことは、警察は自転車置き場に立ち寄っていないってことじゃないか」
「うーん。もしかしたら、駐輪場を管理している……例えば商工会とかで、直接、監視カメラの録画をチェックしたのかもしれないよ。けどまあ、確かに朝からの方が、ケーサツも頑張って仕事してくれそうだけどね。俺は少し気になるカキコを見つけたから、もうちょい調べるわ。明日、そっちに行く」
「珍しいな。何時だ?」
「ミサも来るかな?」
竜平の問いに質問で返って来た。少しばかり引っかかるものを感じつつも、未沙に質問を振った。
「ミサ、明日はバイトを休むんだっけ?」
「うん! みんなは何時に集合?」
いつもなら休日はお昼、だいたい十一時から十二時過ぎくらいに集まっていた。
「警察にこの品物を届けるんだろ。だったら九時には」龍也が言った。
それに対して、「君が起きられるとは思えんがな」竜平が呆れた口調で返した。
「こんな時ぐらい、早寝早起きだ」
「ぼ、僕も頑張ります!」
慌てて尚も九時集合に賛成した。
「だとさ。ミサもそれでいいかな?」
「オッケーよん」
「ってことで、明日は全員九時集合だ。まあ、タツとナオにはすぐに〈手がかり〉を持って、警察に出頭してもらうがな」
「出頭って……クククク……お前らしい言い方だな。わかった、じゃあ、明日ってことで」
次郎長との会話がプツリと切れた。
「さてと、僕も帰ろう。ミサも遅くならないうちに帰った方がいいぞ。で、ナオはタツが送ってくれよな」
竜平は立ち上がり、黒のメッセンジャーバッグにラララの最新号を放り込んで斜めがけにした。
「ミサ、次郎長はミサに用があるみたいだ」
「え?」
去り際、未沙にそっと耳打ちをした。そのまま竜平は「じゃ」と短い別れの挨拶と共に出て行った。
ゲームをしない未沙と次郎長にはほとんど接点が無い。
未沙の表情が陰った。
「どうしたの?ミサちゃん」
尚は未沙のことが心配だった。どう考えても良夏の件は、未沙に影を落としていた。
「ううん。私も帰るわ。タツ、ナオちゃんをよろしくねぇ」
いつも以上に明るく、大げさに細い手を振った。
バンッ――「あいた! てへへ」
ぶんぶん振り回したせいで、腕をドアにぶつけている。わざとらしい照れ笑いをしながら、未沙が帰って行った。
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初回公開日時 2019.01.25 22:29
初回完結日時 2019.08.16 21:21
再連載 2024.6.26~2024.7.31 完結
❦イラストは有償画像になります。
2024.7 加筆修正(eb)したものを再掲載
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