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第二話 因縁
大奥の女
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「宮井殿から先日の件について報せを受けている」
その夜、きちんと玄関から訪ねて来た村垣が開口一番に告げたのは、戸山荘に入って行った闇餌差に関することだった。
珍しく、雲雀も同席して二人の会話を聞いていた。
「ああ、尾張の……あれをどうするおつもりですか。追わないのですか。追えと言うのなら、下屋敷に忍び込むくらいはやれますが」
雲雀が初めに言っていた。『村垣の持ってくる仕事は碌なもんじゃない』と。
――「殺生は鳥だけで済まぬやも知れませんね」
全く彼女の言った通りになった。四人も殺してしまった。だが、これで終いではない。むしろこれから、なのだ。
だが村垣の話は思っていたものと違った。
「もう少し待て。尾張殿がかかわっているか否かを確かめてからだ」
「どうやって」
「そこは俺たちが検する。その先は上様次第や」
政治的な交々が絡んでくるということである。むしろ、その言い方では、事実を探ること自体から逃げているようにも勘繰れる。
(なら勝手にしろ)
役人が一人殺されている。宗次郎自身も殺されかけた。だが、その命と政を天秤にかけたとして、重さの傾きまでは口出しはできないのだ。
村垣の用件はそれだけではなかったようで、話が済んだにもかかわらず、雲雀も席を立たなかった。
「で、先日の身投げの娘やが、確か、元大奥の使い版をしていたらしいな」
村垣が雲雀の方を見た。
「ええ。あの人は月光院様にお仕えしていたの。大奥にいるとき、あの人を張っていたことがあったから、此度の身投げに引っかかりを覚えるのよ」
宗次郎には全く話が見えない。
「どういうことだ」
雲雀が姿勢を正して宗次郎の方に向き直った。
「八代目将軍には、実は上様と尾張の殿様の御二方が候補に挙がっていらしたのです」
宗次郎が江戸に上がる前の話である。
「ですが、六代目将軍様の御正室であらせられる天英院様の御支持を受け、紀伊の御殿様が将軍と御成りあそばされたのです。こういったいきさつもあり、上様の息のかかったくノ一が大奥には絶えず数人、常に奥の動きを見張っております」
宗次郎の知らない城内の、しかも大奥の内情であった。
「一年も前になりますが、七代目将軍様の御母堂、月光院様に間部一派の尾張安房守様がお近づきになったとの密告があり、様子をうかがっていたのです」
「その……『あわのかみ』とは、どなたのことだ。間部一派とは、上様と反目する派閥なのか」
宗次郎には幕府の、特に上層の人間関係についての知識はない。雲雀が説明するも、まるで意味がわからなかった。
「安房守様とは、尾張の弟君にあらせられる松平安房守通温様にございます。兄君の尾張殿を支持しておられたのが先の将軍様の側近であった間部越前守様です」
一から説明している雲雀を見て、村垣が渋い顔をした。
「うーむ、先ずは宗次郎殿に此度の将軍御世継までの派閥争いを知ってもらわねばならぬな」
己はただの殺生人。殺れと言われた相手を追い詰め始末するのが仕事だと思っている。だから勢力関係の構図などまるで興味はない――とばかり宗次郎は将軍の周りのことなど、気に掛けたこともなかった。せいぜい御側役の名と位を覚えるのが関の山である。
しかし、村垣のにがり顔をみるにつけ、そうも言っておられないのだと悟り、黙って雲雀の話に耳を傾けた。
「実は、先の将軍様は年端もいかぬ幼君だったこともあり、その御側用人であった間部越前守様と新井筑後守様(新井白石)が後ろ盾となり、政を牛耳っておりました。その御二方、特に間部様に月光院様が大いに肩入れをなさって、一方で、譜代大名一派を推しておられたのが六代目将軍様の御正室であらせられた天英院様で」
「ちょっと待て」
雲雀の話を、宗次郎が途中で遮った。
「つまるところ、幕府内の派閥争いは、六代目将軍様の御正室と御側室との勢力争いやったと?」
やたらと複雑に聞こえるが、要するに女同士の喧嘩っちゅうことやんけ――と。
雲雀がからかうように言った。
「あら、ご理解が早いですこと」
「おまえ、馬鹿にしているだろ」
「いいえぇ。まあ、平たく申しますと、そういうことです。ですが、実際には、七代目将軍様が御隠れになられると、月光院様は天英院様と手を組まれて、我が殿様を推すこととなったのですがね」
つまり月光院様は、間部たちが支持していた尾張殿を裏切ったということか。いや、尾張殿というよりは、間部を裏切ったということだ。
「なぜ、そのようなことに」
「紀州の殿様が将軍になられるのは、すでに六代目様の遺言であったと私どもは伺っておりますが、定かではございません。ですが、尾張殿を推していた間部様と新井様は失脚。同時に、安房守様も後ろ盾が無くなり、幕府内での権力も失っていきました」
「……で、その安房守様が月光院様に近づいたというのは、怪しいことなのか」
「先の将軍様の御母堂につけ込んで、悪しき企てを謀っているのでは、と用心したまでです。まあ、安房守様というのは、そういう御方だということです」
なるほど――と、宗次郎は頭の中を整理する。
「では、浅井殿の娘さんはどういう関係が」
「上様の改革の一つに、大奥の節倹(予算節約)があり、それに関して大奥から強い反発がございましたの。で、その折、月光院様に安房守様が御近づきになられたので、私どもは月光院様を張っていたのです。その月光院様から安房守様の従者へ使わされていた使い版が浅井様のお嬢様、お美津さんなのですよ」
ようやく、話しのあらましが見えた。だから雲雀はお美津さんのことを知っていたのだ。
ここまで黙って聴いていた村垣が口を開いた。
「だが、安房守様は昨年、尾張殿の手で帰国を命じられたと聞いちゃある。案ずるに及ばんやろ。それに月光院様に限っては、上様より吹上御殿を拝領なさっとる。何を不満に思う必要がある」
「ええ確かに。しかも安房守様が尾張に戻られた後、お美津さんも大奥の節倹に則り暇を出されたので、私たちもこの件に関しては手を引きました」
結局、謀の火種は消えたと判断したわけだ。
だが……宗次郎の感じている不可解さを村垣が代弁するように呟く。
「それにしても、戸山荘も尾張。娘と関係があるかどうかはともかくとして、浮かび上がった安房守様も尾張け」
天井を仰ぎ見た村垣の言葉に、宗次郎が同意した。
「なんだか気持ち悪いですね」
「ああ、気味がわりぃ」
「私は……」
何かを言いかけ、雲雀が口をつぐんだ。
「言うてみぃ、見当違いでも何でもええ」
村垣に促され、雲雀が神妙な面持ちで答えた。
「私、お美津さんは殺されたんじゃないかと……」
それを聞いた宗次郎は、喉に刺さった小骨が抜けたような気持ちになった。
「実は、お美津さんが遺した草履に恋文らしき歌が添えられていたんだ」
宗次郎があの時の状況を改めて説明すると、村垣が聞き返した。
「歌?」
「はい、崇徳院という方の古い和歌です。お美津さんの手ではなかったことから、男から贈られたものだろうと浅井殿は思われたようです。あれを見せられた時から、どうも、あの身投げに納得がいかねえというか……引っかかっていて……」
だからつい、雲雀に話してしまったのだ。
宗次郎はあの日の状況を、村垣にも詳しく説明すると、村垣が眉間の皺を深くした。
「ほいじゃあ、お前さんは、お美津さんの恋の相手が殺しの下手人やと」
「いや、そうではない。むしろ、そんな単純なもんじゃないような気さえする」
月光院と安房守の件といい、それに携わっていたお美津の死といい、どこかで何かが引っかかっているが、その本質が全く見えないでいる。それが気持ち悪い。
ただなんとなく、お美津を死に追いやった恋が、ただの恋ではなかったような気がするのだ。むしろ、恋はただの見せ掛けではないかとすら思える。
気がする――だけでは、検分のしようもないが。
「村垣殿。戸山荘の件について新たな下知があるまで、お美津さんのことを探っても良いですかね」
この気持ち悪さを払拭したいだけなのかも知れないが、探ってみるべきだという己の勘を信じてみたかった。
「……別に悪くは無いだろうよ。お前の仕事は鳥刺しだ。その足でどこにでも行けるだろ」
ひねくれた返答であったが、宗次郎と雲雀は目を合わせ、小さく頷き合った。
その夜、きちんと玄関から訪ねて来た村垣が開口一番に告げたのは、戸山荘に入って行った闇餌差に関することだった。
珍しく、雲雀も同席して二人の会話を聞いていた。
「ああ、尾張の……あれをどうするおつもりですか。追わないのですか。追えと言うのなら、下屋敷に忍び込むくらいはやれますが」
雲雀が初めに言っていた。『村垣の持ってくる仕事は碌なもんじゃない』と。
――「殺生は鳥だけで済まぬやも知れませんね」
全く彼女の言った通りになった。四人も殺してしまった。だが、これで終いではない。むしろこれから、なのだ。
だが村垣の話は思っていたものと違った。
「もう少し待て。尾張殿がかかわっているか否かを確かめてからだ」
「どうやって」
「そこは俺たちが検する。その先は上様次第や」
政治的な交々が絡んでくるということである。むしろ、その言い方では、事実を探ること自体から逃げているようにも勘繰れる。
(なら勝手にしろ)
役人が一人殺されている。宗次郎自身も殺されかけた。だが、その命と政を天秤にかけたとして、重さの傾きまでは口出しはできないのだ。
村垣の用件はそれだけではなかったようで、話が済んだにもかかわらず、雲雀も席を立たなかった。
「で、先日の身投げの娘やが、確か、元大奥の使い版をしていたらしいな」
村垣が雲雀の方を見た。
「ええ。あの人は月光院様にお仕えしていたの。大奥にいるとき、あの人を張っていたことがあったから、此度の身投げに引っかかりを覚えるのよ」
宗次郎には全く話が見えない。
「どういうことだ」
雲雀が姿勢を正して宗次郎の方に向き直った。
「八代目将軍には、実は上様と尾張の殿様の御二方が候補に挙がっていらしたのです」
宗次郎が江戸に上がる前の話である。
「ですが、六代目将軍様の御正室であらせられる天英院様の御支持を受け、紀伊の御殿様が将軍と御成りあそばされたのです。こういったいきさつもあり、上様の息のかかったくノ一が大奥には絶えず数人、常に奥の動きを見張っております」
宗次郎の知らない城内の、しかも大奥の内情であった。
「一年も前になりますが、七代目将軍様の御母堂、月光院様に間部一派の尾張安房守様がお近づきになったとの密告があり、様子をうかがっていたのです」
「その……『あわのかみ』とは、どなたのことだ。間部一派とは、上様と反目する派閥なのか」
宗次郎には幕府の、特に上層の人間関係についての知識はない。雲雀が説明するも、まるで意味がわからなかった。
「安房守様とは、尾張の弟君にあらせられる松平安房守通温様にございます。兄君の尾張殿を支持しておられたのが先の将軍様の側近であった間部越前守様です」
一から説明している雲雀を見て、村垣が渋い顔をした。
「うーむ、先ずは宗次郎殿に此度の将軍御世継までの派閥争いを知ってもらわねばならぬな」
己はただの殺生人。殺れと言われた相手を追い詰め始末するのが仕事だと思っている。だから勢力関係の構図などまるで興味はない――とばかり宗次郎は将軍の周りのことなど、気に掛けたこともなかった。せいぜい御側役の名と位を覚えるのが関の山である。
しかし、村垣のにがり顔をみるにつけ、そうも言っておられないのだと悟り、黙って雲雀の話に耳を傾けた。
「実は、先の将軍様は年端もいかぬ幼君だったこともあり、その御側用人であった間部越前守様と新井筑後守様(新井白石)が後ろ盾となり、政を牛耳っておりました。その御二方、特に間部様に月光院様が大いに肩入れをなさって、一方で、譜代大名一派を推しておられたのが六代目将軍様の御正室であらせられた天英院様で」
「ちょっと待て」
雲雀の話を、宗次郎が途中で遮った。
「つまるところ、幕府内の派閥争いは、六代目将軍様の御正室と御側室との勢力争いやったと?」
やたらと複雑に聞こえるが、要するに女同士の喧嘩っちゅうことやんけ――と。
雲雀がからかうように言った。
「あら、ご理解が早いですこと」
「おまえ、馬鹿にしているだろ」
「いいえぇ。まあ、平たく申しますと、そういうことです。ですが、実際には、七代目将軍様が御隠れになられると、月光院様は天英院様と手を組まれて、我が殿様を推すこととなったのですがね」
つまり月光院様は、間部たちが支持していた尾張殿を裏切ったということか。いや、尾張殿というよりは、間部を裏切ったということだ。
「なぜ、そのようなことに」
「紀州の殿様が将軍になられるのは、すでに六代目様の遺言であったと私どもは伺っておりますが、定かではございません。ですが、尾張殿を推していた間部様と新井様は失脚。同時に、安房守様も後ろ盾が無くなり、幕府内での権力も失っていきました」
「……で、その安房守様が月光院様に近づいたというのは、怪しいことなのか」
「先の将軍様の御母堂につけ込んで、悪しき企てを謀っているのでは、と用心したまでです。まあ、安房守様というのは、そういう御方だということです」
なるほど――と、宗次郎は頭の中を整理する。
「では、浅井殿の娘さんはどういう関係が」
「上様の改革の一つに、大奥の節倹(予算節約)があり、それに関して大奥から強い反発がございましたの。で、その折、月光院様に安房守様が御近づきになられたので、私どもは月光院様を張っていたのです。その月光院様から安房守様の従者へ使わされていた使い版が浅井様のお嬢様、お美津さんなのですよ」
ようやく、話しのあらましが見えた。だから雲雀はお美津さんのことを知っていたのだ。
ここまで黙って聴いていた村垣が口を開いた。
「だが、安房守様は昨年、尾張殿の手で帰国を命じられたと聞いちゃある。案ずるに及ばんやろ。それに月光院様に限っては、上様より吹上御殿を拝領なさっとる。何を不満に思う必要がある」
「ええ確かに。しかも安房守様が尾張に戻られた後、お美津さんも大奥の節倹に則り暇を出されたので、私たちもこの件に関しては手を引きました」
結局、謀の火種は消えたと判断したわけだ。
だが……宗次郎の感じている不可解さを村垣が代弁するように呟く。
「それにしても、戸山荘も尾張。娘と関係があるかどうかはともかくとして、浮かび上がった安房守様も尾張け」
天井を仰ぎ見た村垣の言葉に、宗次郎が同意した。
「なんだか気持ち悪いですね」
「ああ、気味がわりぃ」
「私は……」
何かを言いかけ、雲雀が口をつぐんだ。
「言うてみぃ、見当違いでも何でもええ」
村垣に促され、雲雀が神妙な面持ちで答えた。
「私、お美津さんは殺されたんじゃないかと……」
それを聞いた宗次郎は、喉に刺さった小骨が抜けたような気持ちになった。
「実は、お美津さんが遺した草履に恋文らしき歌が添えられていたんだ」
宗次郎があの時の状況を改めて説明すると、村垣が聞き返した。
「歌?」
「はい、崇徳院という方の古い和歌です。お美津さんの手ではなかったことから、男から贈られたものだろうと浅井殿は思われたようです。あれを見せられた時から、どうも、あの身投げに納得がいかねえというか……引っかかっていて……」
だからつい、雲雀に話してしまったのだ。
宗次郎はあの日の状況を、村垣にも詳しく説明すると、村垣が眉間の皺を深くした。
「ほいじゃあ、お前さんは、お美津さんの恋の相手が殺しの下手人やと」
「いや、そうではない。むしろ、そんな単純なもんじゃないような気さえする」
月光院と安房守の件といい、それに携わっていたお美津の死といい、どこかで何かが引っかかっているが、その本質が全く見えないでいる。それが気持ち悪い。
ただなんとなく、お美津を死に追いやった恋が、ただの恋ではなかったような気がするのだ。むしろ、恋はただの見せ掛けではないかとすら思える。
気がする――だけでは、検分のしようもないが。
「村垣殿。戸山荘の件について新たな下知があるまで、お美津さんのことを探っても良いですかね」
この気持ち悪さを払拭したいだけなのかも知れないが、探ってみるべきだという己の勘を信じてみたかった。
「……別に悪くは無いだろうよ。お前の仕事は鳥刺しだ。その足でどこにでも行けるだろ」
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