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第二話 因縁
お美津の恋と身投げの謎
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宗次郎は川を眺めていた。
ついさっきまで混沌とした墨汁のようだった川面に、己の姿が揺れる様を見て、夜が明けていたことに気付いた。
故郷の紀ノ川とは全然違う。大いに人の手の加わった川だ。江戸の町を機能させるために造られた川は、その流れの穏やかさゆえに、再び降り出した小雨の波紋すら明瞭に見える。
その先で水を落とし続けている堰は、ずっと止むことなく音を響かせていた。
◇
「昨夜の話だが、結局、尾張殿の弟君が左遷させられた理由って、何だったんだ」
朝餉に添えられた香の物を噛みしめながら、雲雀の後ろ姿に問いかける。
間部と新井が失脚……というのは理解できたが、安房守こと松平通温が江戸を追われた理由がわからないままだった。
「あのお方はまこと切れ者で、しかし恐れ知らずでございました」
「あのお方」とは、安房守のことだろうか。
振り返った雲雀は、少し遠くを見るような目をした。
「将軍職の跡目争いに敗れたのは尾張殿ではありません。あれは尾張の殿様を押し上げたかった間部様や新井様と、その御二方に反目する幕閣たちとの争いでした。御二方の力により尾張の弟君は安房守から近衛府の少将にまで進んでおったのですが、それが一転。我が殿様が将軍職に就かれるや、負けた間部様と新井様は役を解かれて隠居。後ろ盾を失った安房守様は、その憤慨を耐えることなく、声高に上様の政策を批判なさっていました。それが目に余るほど過激になられたので、幕府との軋轢を危惧した尾張の殿様の命で、江戸から追放となったのです」
(ほんならお美津さんは、安房守の謀りを知って、尾張の手のもんに消されたっちゅう可能性もあるな)
宗次郎の憶測にすぎない。役者が全て舞台を降りてしまったのだから、今はもう、お美津の死は謎でしかない。
「しかし、どこへ行ってらしたのですか、朝も早くから」
土間のすみに置きっぱなしにしていた蓑を、雲雀が汚らしそうにつまみ上げる。
「雨降りの日は鳥を刺さないと思っておりましたが」
「そんなことはない。橋の下で雨宿りする鳩は狙いやすいのだ」
雲雀が得意気に口角を上げた。
「ああ、揚場の橋へ行ってらしたのですね」
こんなあからさまな誘いに答えてしまったことに悔しくなって、湯漬けの米をかき込んだ。
「なにか、わかったことがありましたか」
興味を示されたことに少しばかり意外な気がして、まじまじと雲雀の顔を見る。しかし相変わらずの無表情は、愛想など微塵も見られない。
「どうしました?」
「いや、お前が俺の仕事を気にするとは思ってもいなくて」
宗次郎は素直に答えた。
「もしや、目を付けていた奥女中が、目を離した途端に死んだから気にしているのか」
「ふっ、そんなことで気を病むなどあり得ませぬ」
素っ気なく否定された。不貞腐れた顔をしていると、雲雀は台所の板の間に腰を掛け、前掛けで手を拭いた。
「私たちの仕事は奥女中を守ることではありません。上様をお守りすることですから」
「そんなことはわかっている」
憮然として返す。
「ねえ、宗次郎さんは江島生島事件というのをご存知?」
「いや……?」
お美津の背景を知った今、宗次郎は己の無知さが歯がゆかった。
「七代目将軍様が御隠れになる二年前の事です。幼君を支えておられたのは間部たちだけではありませぬ。江島様という大奥御年寄が月光院様と先代の上様を支えておられました。しかし、月光院様の名代で城外へ出られた江島様の門限破りがもとで、失脚させられたというのがこの事件のきっかけです。この江島様の失脚から、間部様の力が一気に落ちて行ったとも言われております」
雲雀から聴く大奥の事情は、どうも理不尽かつ、不穏な事ばかりに思えた。
「は? たかが門限だろ」
宗次郎が思わず漏らした考えなしの言葉に対し、雲雀は呆れる事もなく諭すように説く。
「ええ。ですから、それはただのきっかけです。そこから大奥の贅沢や規律の乱れが次々と明るみに出て、それらを問い質されたのです。そもそも、大奥は閉ざされた場所。門限破りは許されませぬ。さらに門限を破った理由も問題でした」
ここの壁に耳は無いだろうに、雲雀は声を潜めて言った。
「御用の帰途、生島という役者との逢引きの末の門限破りだそうでございます」
男女の密会だったというわけだ。
「で、何が言いたい」
先代の権力争いが、やたらときな臭かったことだけは理解できた。だが、それがお美津の死と、どう関りあると言うのか、宗次郎には雲雀の言いたいことが見えない。
「大奥に上がる女というのは、下々の女たちよりも初心でございます」
雲雀の猫のような目と、真正面でかち合う。
「奥女中の多くは男を知らないまま大奥に仕えます。ほとんどが厳しく躾けられた武家の娘でございます。大奥は女の園。娘たちは恋など、本や絵草紙の絵空事しか知りませぬ。つまり江島様のように、手腕も権力もお持ちの方ですら、恋に溺れると我を失うということです」
「もしや、お美津さんも」
「ええ、謀りの恋を仕掛けられたとすれば、大奥に仕えていた娘など、赤子の手をひねるより容易いでしょうね」
雲雀は宗次郎が食べ終えた膳を手に土間へ降りると背を向けた。
「江島様の件では、江島様はもとより、お相手となった生島、その生島を抱えていた座長、果てはその役者を江島様に逢わせた呉服屋までもが重い刑を受けたとのこと。……私はね、お美津さんの死に裏があろうと無かろうと、相手の男が何の痛みもなく、のうのうと生きているのは道理ではないと思うだけですよ」
流しの洗い桶に膳が音を立てて置かれた。
宗次郎は目を見張った。
情がないどころか、私心を挟みまくった雲雀の想いが、宗次郎の胸を熱くした。
「お美津さんは……お前の知っている彼女は、どんな人だったのだ」
「そうですね……直に話したりしたことはないのだけれど……」そう前置きすると、宗次郎の方へ向き直った。
「お美津さんはとても器量よしで賢く、御小姓として御台所様の雑用係をしておられたそうです」
つまり、御目見え以上であったわけだ。優秀な娘だったと言って間違いないだろう。
「それが月光院様の目に留まったそうです。私が奥に入った時はすでに月光院様に引き抜かれ、私的に雇われておりました。私から見ても、とても可愛がられていたように思えました」
それなのに、節倹に則り辞職とは不自然ではないか。それも安房守の失脚後、時を合わせたように。
聞けば聞くほどに、お美津の身投げは怪しさを増す。
「お美津さんは水に落ちて直ちに心の臓が止まったのだろうと、検視の同心が言っていた。俺はそれを確かめたかったのだ」
船河原橋の上で、真っ黒な川の流れに身を投げたお美津を思い描いていた。紅い牡丹が闇に飛んだ様を……。
「空が白む頃には舟が行きかう。それに明るくなった川ではすぐに死ぬことはできないだろう。だが、辻番が閉まる前に身を投げたにしては、お美津さんの体は美しすぎた。とすると、身投げしたのは夜が更けた丑三つ時から明ける寸での寅の刻と考えられる」
「なるほど」
「なあ、雲雀。お美津さんはどこに潜んでいたと思う? 良家の娘が夜をどこで明かしたと思う」
「近くの木戸番や辻番に確認は?」
「した。揚場町の木戸番に、木戸を閉める前に堀沿いを通った娘がいなかったかどうか。あの友禅の花柄は目立つだろ」
「そうね。その姿で夜に出歩いていたら、誰か気付くはずね」
きち、と雲雀が親指の爪を噛んだ。
「手引きした者がいるはず。調べましょう」
ついさっきまで混沌とした墨汁のようだった川面に、己の姿が揺れる様を見て、夜が明けていたことに気付いた。
故郷の紀ノ川とは全然違う。大いに人の手の加わった川だ。江戸の町を機能させるために造られた川は、その流れの穏やかさゆえに、再び降り出した小雨の波紋すら明瞭に見える。
その先で水を落とし続けている堰は、ずっと止むことなく音を響かせていた。
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朝餉に添えられた香の物を噛みしめながら、雲雀の後ろ姿に問いかける。
間部と新井が失脚……というのは理解できたが、安房守こと松平通温が江戸を追われた理由がわからないままだった。
「あのお方はまこと切れ者で、しかし恐れ知らずでございました」
「あのお方」とは、安房守のことだろうか。
振り返った雲雀は、少し遠くを見るような目をした。
「将軍職の跡目争いに敗れたのは尾張殿ではありません。あれは尾張の殿様を押し上げたかった間部様や新井様と、その御二方に反目する幕閣たちとの争いでした。御二方の力により尾張の弟君は安房守から近衛府の少将にまで進んでおったのですが、それが一転。我が殿様が将軍職に就かれるや、負けた間部様と新井様は役を解かれて隠居。後ろ盾を失った安房守様は、その憤慨を耐えることなく、声高に上様の政策を批判なさっていました。それが目に余るほど過激になられたので、幕府との軋轢を危惧した尾張の殿様の命で、江戸から追放となったのです」
(ほんならお美津さんは、安房守の謀りを知って、尾張の手のもんに消されたっちゅう可能性もあるな)
宗次郎の憶測にすぎない。役者が全て舞台を降りてしまったのだから、今はもう、お美津の死は謎でしかない。
「しかし、どこへ行ってらしたのですか、朝も早くから」
土間のすみに置きっぱなしにしていた蓑を、雲雀が汚らしそうにつまみ上げる。
「雨降りの日は鳥を刺さないと思っておりましたが」
「そんなことはない。橋の下で雨宿りする鳩は狙いやすいのだ」
雲雀が得意気に口角を上げた。
「ああ、揚場の橋へ行ってらしたのですね」
こんなあからさまな誘いに答えてしまったことに悔しくなって、湯漬けの米をかき込んだ。
「なにか、わかったことがありましたか」
興味を示されたことに少しばかり意外な気がして、まじまじと雲雀の顔を見る。しかし相変わらずの無表情は、愛想など微塵も見られない。
「どうしました?」
「いや、お前が俺の仕事を気にするとは思ってもいなくて」
宗次郎は素直に答えた。
「もしや、目を付けていた奥女中が、目を離した途端に死んだから気にしているのか」
「ふっ、そんなことで気を病むなどあり得ませぬ」
素っ気なく否定された。不貞腐れた顔をしていると、雲雀は台所の板の間に腰を掛け、前掛けで手を拭いた。
「私たちの仕事は奥女中を守ることではありません。上様をお守りすることですから」
「そんなことはわかっている」
憮然として返す。
「ねえ、宗次郎さんは江島生島事件というのをご存知?」
「いや……?」
お美津の背景を知った今、宗次郎は己の無知さが歯がゆかった。
「七代目将軍様が御隠れになる二年前の事です。幼君を支えておられたのは間部たちだけではありませぬ。江島様という大奥御年寄が月光院様と先代の上様を支えておられました。しかし、月光院様の名代で城外へ出られた江島様の門限破りがもとで、失脚させられたというのがこの事件のきっかけです。この江島様の失脚から、間部様の力が一気に落ちて行ったとも言われております」
雲雀から聴く大奥の事情は、どうも理不尽かつ、不穏な事ばかりに思えた。
「は? たかが門限だろ」
宗次郎が思わず漏らした考えなしの言葉に対し、雲雀は呆れる事もなく諭すように説く。
「ええ。ですから、それはただのきっかけです。そこから大奥の贅沢や規律の乱れが次々と明るみに出て、それらを問い質されたのです。そもそも、大奥は閉ざされた場所。門限破りは許されませぬ。さらに門限を破った理由も問題でした」
ここの壁に耳は無いだろうに、雲雀は声を潜めて言った。
「御用の帰途、生島という役者との逢引きの末の門限破りだそうでございます」
男女の密会だったというわけだ。
「で、何が言いたい」
先代の権力争いが、やたらときな臭かったことだけは理解できた。だが、それがお美津の死と、どう関りあると言うのか、宗次郎には雲雀の言いたいことが見えない。
「大奥に上がる女というのは、下々の女たちよりも初心でございます」
雲雀の猫のような目と、真正面でかち合う。
「奥女中の多くは男を知らないまま大奥に仕えます。ほとんどが厳しく躾けられた武家の娘でございます。大奥は女の園。娘たちは恋など、本や絵草紙の絵空事しか知りませぬ。つまり江島様のように、手腕も権力もお持ちの方ですら、恋に溺れると我を失うということです」
「もしや、お美津さんも」
「ええ、謀りの恋を仕掛けられたとすれば、大奥に仕えていた娘など、赤子の手をひねるより容易いでしょうね」
雲雀は宗次郎が食べ終えた膳を手に土間へ降りると背を向けた。
「江島様の件では、江島様はもとより、お相手となった生島、その生島を抱えていた座長、果てはその役者を江島様に逢わせた呉服屋までもが重い刑を受けたとのこと。……私はね、お美津さんの死に裏があろうと無かろうと、相手の男が何の痛みもなく、のうのうと生きているのは道理ではないと思うだけですよ」
流しの洗い桶に膳が音を立てて置かれた。
宗次郎は目を見張った。
情がないどころか、私心を挟みまくった雲雀の想いが、宗次郎の胸を熱くした。
「お美津さんは……お前の知っている彼女は、どんな人だったのだ」
「そうですね……直に話したりしたことはないのだけれど……」そう前置きすると、宗次郎の方へ向き直った。
「お美津さんはとても器量よしで賢く、御小姓として御台所様の雑用係をしておられたそうです」
つまり、御目見え以上であったわけだ。優秀な娘だったと言って間違いないだろう。
「それが月光院様の目に留まったそうです。私が奥に入った時はすでに月光院様に引き抜かれ、私的に雇われておりました。私から見ても、とても可愛がられていたように思えました」
それなのに、節倹に則り辞職とは不自然ではないか。それも安房守の失脚後、時を合わせたように。
聞けば聞くほどに、お美津の身投げは怪しさを増す。
「お美津さんは水に落ちて直ちに心の臓が止まったのだろうと、検視の同心が言っていた。俺はそれを確かめたかったのだ」
船河原橋の上で、真っ黒な川の流れに身を投げたお美津を思い描いていた。紅い牡丹が闇に飛んだ様を……。
「空が白む頃には舟が行きかう。それに明るくなった川ではすぐに死ぬことはできないだろう。だが、辻番が閉まる前に身を投げたにしては、お美津さんの体は美しすぎた。とすると、身投げしたのは夜が更けた丑三つ時から明ける寸での寅の刻と考えられる」
「なるほど」
「なあ、雲雀。お美津さんはどこに潜んでいたと思う? 良家の娘が夜をどこで明かしたと思う」
「近くの木戸番や辻番に確認は?」
「した。揚場町の木戸番に、木戸を閉める前に堀沿いを通った娘がいなかったかどうか。あの友禅の花柄は目立つだろ」
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