30 / 46
第二話 因縁
偽装心中
しおりを挟む
その日は小雨だった。すっかり梅雨に入った空は、降ったりやんだり。はっきりしない空模様に、筑土明神の参拝者もまばらである。
しっとり濡れた石灯籠を背に、着流し姿の宗次郎は石段の方を睨んでいた。髪も総髪のままであるが、たぼを作って結い上げていた。
この間からの張り込みで、乙八と旭屋の若旦那は、ほぼ三日に一度の割合で逢引きしていることを確認していた。そして昨日は午後から夕刻まで色茶屋に入り浸っている。だから、本来なら今日、乙八とは会わないはずなのだ。
(それでもあいつは来る)
――筑土明神奥、乙八、巳
そう書いた紙を今朝、若旦那に渡すよう旭屋の小僧に遣いをやらせた。
そろそろ昼四ツ(巳の刻)の鐘が聞こえる。その鐘が鳴りやまないうちに、茶色い番傘が視界に入った。
(ほら来た)
からころと下駄の音をさせ、嬉しそうに傘までさして、足場の悪い石畳を着物の裾をからげて駆けて来る。
そしてがっかりするのだ。待っていたのが乙八じゃないから……
旭屋の息子は、不機嫌と不信感を露わに、宗次郎に向かって言った。
「誰、あんた」
「俺? 乙八の良い人だよ」
自分で言っておいて虫唾が走った。
「はあ? 何言ってやがる」
宗次郎の嘘にまんまと引っかかった旭屋の息子は、まるで食ってかかりそうな勢いで近寄ってきた。
宗次郎はさらに、薄く紅を引いたような己の赤い下唇に、人差し指を添えて、きゅっと口角を上げた。
「最近、あいつがつれなくってさ。そろそろ目障りなあんたに消えてもらおうかなって」
雲雀から教わった下手な演技の、ただそれだけの仕種に翻弄され、表情を変える男が少々憐れだと思う。だがお美津を、こいつらは同じように騙したのだ。それを思うと、地獄に落ちやがれ、と願わずにいられない。
怒りで顔を真っ赤にした男が、傘を投げ捨て宗次郎の胸倉をつかんだ。
「こ、んの、てめえ……俺を騙して呼び出しやがったな」
お上品そうに見えたものの、所詮、江戸っ子だ。気が荒い。怒りを耐え切れない様子でギリリと奥歯を鳴らし、宗次郎を睨みつける。
――「いいですか。宗次郎さんは、そのお顔を上手に使わない手はないんですよ」
雲雀に言われた。敵に上手く喋らせるためにも、表情や仕種を工夫するのだと助言されたのだ。
――「宗次郎さん自身がご自分の顔を好きとか嫌いとか、そんなことどうでも良いのです。自分のお顔や体が相手にどう映っているのか、ご自分がよくお判りでしょう。それも武器とするのです」
さらに煽るように宗次郎は目を細め、ゆっくりと口角を引いた。
「だったら何? お美津さんの次は俺を殺すかい」
冷静を装って見上げると、怒りに歪んだ顔から血の気が引いて行くのがありありとわかった。
「残念だけどさ、次はあんたの番。邪魔者は俺じゃなくて、あんた。乙八が好きなのは、この俺だ。だいたいあんた、あの文の字が乙八の手じゃないことにも気付けなかったじゃないか」
追い打ちをかけるように挑発すると、思い切り押されて、石灯籠に押し付けられた。
「っざけんな! 乙八は俺のもんだ。てめえみてえなガキにあいつを囲えるかってんだ」
首を捩じ上げるように、着物の衿を締め上げて来る。
「おめえも、あの女同様、消えちまいな」
八幡宮の奥の杜に入って来る人などわずかだ。ましてやこんな雨の日に、縁結びの噂にあやかってお参りに来る娘もいやしない。都合の良いことに、辺りはぼんやりと靄がかかったように、うっすら白く煙ってきた。だから気が大きくなっているのだろう。殺す勢いで力を加えて来た。
なまっちろく見える割には力が強い。首根っこを押さえられ血の道が狭くなったのか、唇に痺れを感じ始めた。
「へっ、こう見えても船宿の後継ぎだぜ。舟の扱いぐれえは雇いの船頭らにも負けてねえ。おめえの首をへし折るくれえの腕っぷしはあるんだよ」
もう一方の手が、宗次郎の首に回る。それでも宗次郎は抵抗しなかった。声を振り絞って引導を渡すひと言を告げた。
「そう、だから自分で屋形船を操って、お美津さんを拾ったんだね。日本橋で」
「な、なんで、それを」
「ぐっ」
怒りの中、わずかに差した怯えのせいで、首を締めつける力がさらに強くなる。宗次郎が耐え切れず顔を歪ませた時だった。
「おい! そこまでだ!」
背後からの怒号と足音に、旭屋の息子が慌てて振り返る。
「遅いよ……」
ケホッと一つ咳込んで、宗次郎は文句を言うと衿を正した。
木陰に隠れていた岡っ引きとその手下が現れ、あっという間もなく、旭屋の息子は押さえられた。
遅れて祠の陰から嶋田が姿を見せた。
「ああ、すまねえ。お美津さんの殺しを吐くかどうかなってぇ、待っていたんでさ」
「そんなの、奉行所で拷問でも何でもすりゃいいじゃないか」
悪びれもしない嶋田に宗次郎が文句を返すと、旭屋の息子が吠えた。
「なんでぃ! 茶番かよ! てめえら、この俺をおちょくりやがったな!」
暴れるのを、岡っ引きが十手で羽交い締めにする。
「喚くな! 後は番所で洗いざらい喋ればよい」
喚くなと言われてもなお、悪態を吠え続ける若旦那は、嶋田の手で縄をかけられ連行されて行った。
「さて……」
喧騒が去ると、宗次郎は嶋田らとは別に、八幡前町の中を抜け、〈くめや〉へと向かった。
この喧騒を、あいつが黙って見ているはずがない。だから急がねばと、着物の裾をからげて走る。
今はそいつの気配を察することはできない。だが、あいつなら気配を消すことくらい造作ないことだ。
北町奉行の同心嶋田には、旭屋の息子の証言を取って、それから乙八をしょっ引いた方が確実だ――と話しておいたが、それはあくまでも色恋、艶事の拗れからお美津を消したのだという、乙八首謀者前提での話だ。
宗次郎の頭の中では、別の筋書きができていた。
雨に半分濡れた〈くめや〉の暖簾をくぐる。
息を切らせながら問う。
「乙八、いますか」
乙八があいつと繋がっているという確証などない。ただ単に宗次郎の勘だった。たった一言発した言葉から持ってしまった疑念にすぎない。それでも確信していた。
「乙八! 乙八や!」
店の亭主が階下から大声で呼ぶ。
「早く降りてきな、お客さんだよ!」
しかし、何度呼んでも乙八は来なかった。
「おかしいねえ。賭場に行った様子もなかったんだけどねえ」
首を傾げる亭主だったが、宗次郎は嫌な予感を拭えず、その場で草履を脱ぎ捨てる。
「あ、ちょいと兄さん、困るよ、勝手に」
追いかけて来る亭主と共に、乙八の部屋の襖を開けた。隣の部屋からは、何事かと、別の若衆髷の少年が、襖を開けて首を出している。
「乙八!」
叫んだのは亭主の方だった。
(遅かった!)
仰向きで口から血の色の泡を流して横たわる乙八を跨ぎ、開いてあった窓の外を見るが、そこには何もいない。
「ごふっ」
背後で乙八の咳が聞こえた。生きているのだ。
亭主が乙八の体を起こす。
「乙八! おまいさん、誰にやられたんだい」
宗次郎がその首の後に、三角の針が刺さっているのを見つけた。慎重に抜き取る。
「毒針だ。吹き矢……忍びの者か……」
乙八が弱々しく咳ながら何かを言おうとしている。
「おい、やったのは九鬼丸か」
乙八に聞こえるように耳の側で言った。だが、乙八はわずかに首を横に振った。
そして震える唇で言葉を絞り出した。
「く、くき、じゃ、ない、あい……つが、お、おれを、うら、ぎ、る、もん、か……く、き、じゃ」
訳を分かっていない亭主がおろおろと、空いた方の手を乙八の頭と首元を無意味に行ったり来たりさせながら問い返す。
「いったい、あんたは何言ってんだい!?」
乙八の、濁ってほとんど見えなくなってしまっているだろう目から、涙が零れだした。
「お、れが……わ……かっ……ん、だ……」
言葉は途切れ途切れで、ほぼ聞き取れない。直後、一層激しく咳込んだと思うと、白目を剥いてぐったりとした。
「乙八っ! しっかりおし! 乙八!」
亭主が衿元を掴んで揺さぶる。
「乙八!乙八!」
宗次郎は、陰間茶屋の亭主に抱きかかえられる乙八を残したまま部屋を出た。
しっとり濡れた石灯籠を背に、着流し姿の宗次郎は石段の方を睨んでいた。髪も総髪のままであるが、たぼを作って結い上げていた。
この間からの張り込みで、乙八と旭屋の若旦那は、ほぼ三日に一度の割合で逢引きしていることを確認していた。そして昨日は午後から夕刻まで色茶屋に入り浸っている。だから、本来なら今日、乙八とは会わないはずなのだ。
(それでもあいつは来る)
――筑土明神奥、乙八、巳
そう書いた紙を今朝、若旦那に渡すよう旭屋の小僧に遣いをやらせた。
そろそろ昼四ツ(巳の刻)の鐘が聞こえる。その鐘が鳴りやまないうちに、茶色い番傘が視界に入った。
(ほら来た)
からころと下駄の音をさせ、嬉しそうに傘までさして、足場の悪い石畳を着物の裾をからげて駆けて来る。
そしてがっかりするのだ。待っていたのが乙八じゃないから……
旭屋の息子は、不機嫌と不信感を露わに、宗次郎に向かって言った。
「誰、あんた」
「俺? 乙八の良い人だよ」
自分で言っておいて虫唾が走った。
「はあ? 何言ってやがる」
宗次郎の嘘にまんまと引っかかった旭屋の息子は、まるで食ってかかりそうな勢いで近寄ってきた。
宗次郎はさらに、薄く紅を引いたような己の赤い下唇に、人差し指を添えて、きゅっと口角を上げた。
「最近、あいつがつれなくってさ。そろそろ目障りなあんたに消えてもらおうかなって」
雲雀から教わった下手な演技の、ただそれだけの仕種に翻弄され、表情を変える男が少々憐れだと思う。だがお美津を、こいつらは同じように騙したのだ。それを思うと、地獄に落ちやがれ、と願わずにいられない。
怒りで顔を真っ赤にした男が、傘を投げ捨て宗次郎の胸倉をつかんだ。
「こ、んの、てめえ……俺を騙して呼び出しやがったな」
お上品そうに見えたものの、所詮、江戸っ子だ。気が荒い。怒りを耐え切れない様子でギリリと奥歯を鳴らし、宗次郎を睨みつける。
――「いいですか。宗次郎さんは、そのお顔を上手に使わない手はないんですよ」
雲雀に言われた。敵に上手く喋らせるためにも、表情や仕種を工夫するのだと助言されたのだ。
――「宗次郎さん自身がご自分の顔を好きとか嫌いとか、そんなことどうでも良いのです。自分のお顔や体が相手にどう映っているのか、ご自分がよくお判りでしょう。それも武器とするのです」
さらに煽るように宗次郎は目を細め、ゆっくりと口角を引いた。
「だったら何? お美津さんの次は俺を殺すかい」
冷静を装って見上げると、怒りに歪んだ顔から血の気が引いて行くのがありありとわかった。
「残念だけどさ、次はあんたの番。邪魔者は俺じゃなくて、あんた。乙八が好きなのは、この俺だ。だいたいあんた、あの文の字が乙八の手じゃないことにも気付けなかったじゃないか」
追い打ちをかけるように挑発すると、思い切り押されて、石灯籠に押し付けられた。
「っざけんな! 乙八は俺のもんだ。てめえみてえなガキにあいつを囲えるかってんだ」
首を捩じ上げるように、着物の衿を締め上げて来る。
「おめえも、あの女同様、消えちまいな」
八幡宮の奥の杜に入って来る人などわずかだ。ましてやこんな雨の日に、縁結びの噂にあやかってお参りに来る娘もいやしない。都合の良いことに、辺りはぼんやりと靄がかかったように、うっすら白く煙ってきた。だから気が大きくなっているのだろう。殺す勢いで力を加えて来た。
なまっちろく見える割には力が強い。首根っこを押さえられ血の道が狭くなったのか、唇に痺れを感じ始めた。
「へっ、こう見えても船宿の後継ぎだぜ。舟の扱いぐれえは雇いの船頭らにも負けてねえ。おめえの首をへし折るくれえの腕っぷしはあるんだよ」
もう一方の手が、宗次郎の首に回る。それでも宗次郎は抵抗しなかった。声を振り絞って引導を渡すひと言を告げた。
「そう、だから自分で屋形船を操って、お美津さんを拾ったんだね。日本橋で」
「な、なんで、それを」
「ぐっ」
怒りの中、わずかに差した怯えのせいで、首を締めつける力がさらに強くなる。宗次郎が耐え切れず顔を歪ませた時だった。
「おい! そこまでだ!」
背後からの怒号と足音に、旭屋の息子が慌てて振り返る。
「遅いよ……」
ケホッと一つ咳込んで、宗次郎は文句を言うと衿を正した。
木陰に隠れていた岡っ引きとその手下が現れ、あっという間もなく、旭屋の息子は押さえられた。
遅れて祠の陰から嶋田が姿を見せた。
「ああ、すまねえ。お美津さんの殺しを吐くかどうかなってぇ、待っていたんでさ」
「そんなの、奉行所で拷問でも何でもすりゃいいじゃないか」
悪びれもしない嶋田に宗次郎が文句を返すと、旭屋の息子が吠えた。
「なんでぃ! 茶番かよ! てめえら、この俺をおちょくりやがったな!」
暴れるのを、岡っ引きが十手で羽交い締めにする。
「喚くな! 後は番所で洗いざらい喋ればよい」
喚くなと言われてもなお、悪態を吠え続ける若旦那は、嶋田の手で縄をかけられ連行されて行った。
「さて……」
喧騒が去ると、宗次郎は嶋田らとは別に、八幡前町の中を抜け、〈くめや〉へと向かった。
この喧騒を、あいつが黙って見ているはずがない。だから急がねばと、着物の裾をからげて走る。
今はそいつの気配を察することはできない。だが、あいつなら気配を消すことくらい造作ないことだ。
北町奉行の同心嶋田には、旭屋の息子の証言を取って、それから乙八をしょっ引いた方が確実だ――と話しておいたが、それはあくまでも色恋、艶事の拗れからお美津を消したのだという、乙八首謀者前提での話だ。
宗次郎の頭の中では、別の筋書きができていた。
雨に半分濡れた〈くめや〉の暖簾をくぐる。
息を切らせながら問う。
「乙八、いますか」
乙八があいつと繋がっているという確証などない。ただ単に宗次郎の勘だった。たった一言発した言葉から持ってしまった疑念にすぎない。それでも確信していた。
「乙八! 乙八や!」
店の亭主が階下から大声で呼ぶ。
「早く降りてきな、お客さんだよ!」
しかし、何度呼んでも乙八は来なかった。
「おかしいねえ。賭場に行った様子もなかったんだけどねえ」
首を傾げる亭主だったが、宗次郎は嫌な予感を拭えず、その場で草履を脱ぎ捨てる。
「あ、ちょいと兄さん、困るよ、勝手に」
追いかけて来る亭主と共に、乙八の部屋の襖を開けた。隣の部屋からは、何事かと、別の若衆髷の少年が、襖を開けて首を出している。
「乙八!」
叫んだのは亭主の方だった。
(遅かった!)
仰向きで口から血の色の泡を流して横たわる乙八を跨ぎ、開いてあった窓の外を見るが、そこには何もいない。
「ごふっ」
背後で乙八の咳が聞こえた。生きているのだ。
亭主が乙八の体を起こす。
「乙八! おまいさん、誰にやられたんだい」
宗次郎がその首の後に、三角の針が刺さっているのを見つけた。慎重に抜き取る。
「毒針だ。吹き矢……忍びの者か……」
乙八が弱々しく咳ながら何かを言おうとしている。
「おい、やったのは九鬼丸か」
乙八に聞こえるように耳の側で言った。だが、乙八はわずかに首を横に振った。
そして震える唇で言葉を絞り出した。
「く、くき、じゃ、ない、あい……つが、お、おれを、うら、ぎ、る、もん、か……く、き、じゃ」
訳を分かっていない亭主がおろおろと、空いた方の手を乙八の頭と首元を無意味に行ったり来たりさせながら問い返す。
「いったい、あんたは何言ってんだい!?」
乙八の、濁ってほとんど見えなくなってしまっているだろう目から、涙が零れだした。
「お、れが……わ……かっ……ん、だ……」
言葉は途切れ途切れで、ほぼ聞き取れない。直後、一層激しく咳込んだと思うと、白目を剥いてぐったりとした。
「乙八っ! しっかりおし! 乙八!」
亭主が衿元を掴んで揺さぶる。
「乙八!乙八!」
宗次郎は、陰間茶屋の亭主に抱きかかえられる乙八を残したまま部屋を出た。
8
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】『紅蓮の算盤〜天明飢饉、米問屋女房の戦い〜』
月影 朔
歴史・時代
江戸、天明三年。未曽有の大飢饉が、大坂を地獄に変えた――。
飢え死にする民を嘲笑うかのように、権力と結託した悪徳商人は、米を買い占め私腹を肥やす。
大坂の米問屋「稲穂屋」の女房、お凛は、天才的な算術の才と、決して諦めない胆力を持つ女だった。
愛する夫と店を守るため、算盤を武器に立ち向かうが、悪徳商人の罠と権力の横暴により、稲穂屋は全てを失う。米蔵は空、夫は獄へ、裏切りにも遭い、お凛は絶望の淵へ。
だが、彼女は、立ち上がる!
人々の絆と夫からの希望を胸に、お凛は紅蓮の炎を宿した算盤を手に、たった一人で巨大な悪へ挑むことを決意する。
奪われた命綱を、踏みにじられた正義を、算盤で奪い返せ!
これは、絶望から奇跡を起こした、一人の女房の壮絶な歴史活劇!知略と勇気で巨悪を討つ、圧巻の大逆転ドラマ!
――今、紅蓮の算盤が、不正を断罪する鉄槌となる!
『五感の調べ〜女按摩師異聞帖〜』
月影 朔
歴史・時代
江戸。盲目の女按摩師・市には、音、匂い、感触、全てが真実を語りかける。
失われた視覚と引き換えに得た、驚異の五感。
その力が、江戸の闇に起きた難事件の扉をこじ開ける。
裏社会に潜む謎の敵、視覚を欺く巧妙な罠。
市は「聴く」「嗅ぐ」「触れる」独自の捜査で、事件の核心に迫る。
癒やしの薬膳、そして人情の機微も鮮やかに、『この五感が、江戸を変える』
――新感覚時代ミステリー開幕!
花嫁
一ノ瀬亮太郎
歴史・時代
征之進は小さい頃から市松人形が欲しかった。しかし大身旗本の嫡男が女の子のように人形遊びをするなど許されるはずもない。他人からも自分からもそんな気持を隠すように征之進は武芸に励み、今では道場の師範代を務めるまでになっていた。そんな征之進に結婚話が持ち込まれる。
無用庵隠居清左衛門
蔵屋
歴史・時代
前老中田沼意次から引き継いで老中となった松平定信は、厳しい倹約令として|寛政の改革《かんせいのかいかく》を実施した。
第8代将軍徳川吉宗によって実施された|享保の改革《きょうほうのかいかく》、|天保の改革《てんぽうのかいかく》と合わせて幕政改革の三大改革という。
松平定信は厳しい倹約令を実施したのだった。江戸幕府は町人たちを中心とした貨幣経済の発達に伴い|逼迫《ひっぱく》した幕府の財政で苦しんでいた。
幕府の財政再建を目的とした改革を実施する事は江戸幕府にとって緊急の課題であった。
この時期、各地方の諸藩に於いても藩政改革が行われていたのであった。
そんな中、徳川家直参旗本であった緒方清左衛門は、己の出世の事しか考えない同僚に嫌気がさしていた。
清左衛門は無欲の徳川家直参旗本であった。
俸禄も入らず、出世欲もなく、ただひたすら、女房の千歳と娘の弥生と、三人仲睦まじく暮らす平穏な日々であればよかったのである。
清左衛門は『あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって千歳と弥生の幸せだけを願い、最後は無欲で死にたい』と思っていたのだ。
ある日、清左衛門に理不尽な言いがかりが同僚立花右近からあったのだ。
清左衛門は右近の言いがかりを相手にせず、
無視したのであった。
そして、松平定信に対して、隠居願いを提出したのであった。
「おぬし、本当にそれで良いのだな」
「拙者、一向に構いません」
「分かった。好きにするがよい」
こうして、清左衛門は隠居生活に入ったのである。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末
松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰
第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。
本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。
2025年11月28書籍刊行。
なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。
酒と肴と剣と闇
江戸情緒を添えて
江戸は本所にある居酒屋『草間』。
美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。
自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。
多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。
その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。
店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。
【完結】『江戸めぐり ご馳走道中 ~お香と文吉の東海道味巡り~』
月影 朔
歴史・時代
読めばお腹が減る!食と人情の東海道味巡り、開幕!
自由を求め家を飛び出した、食い道楽で腕っぷし自慢の元武家娘・お香。
料理の知識は確かだが、とある事件で自信を失った気弱な元料理人・文吉。
正反対の二人が偶然出会い、共に旅を始めたのは、天下の街道・東海道!
行く先々の宿場町で二人が出会うのは、その土地ならではの絶品ご当地料理や豊かな食材、そして様々な悩みを抱えた人々。
料理を巡る親子喧嘩、失われた秘伝の味、食材に隠された秘密、旅人たちの些細な揉め事まで――
お香の持ち前の豪快な行動力と、文吉の豊富な食の知識、そして二人の「料理」の力が、人々の閉ざされた心を開き、事件を解決へと導いていきます。時にはお香の隠された剣の腕が炸裂することも…!?
読めば目の前に湯気立つ料理が見えるよう!
香りまで伝わるような鮮やかな料理描写、笑いと涙あふれる人情ドラマ、そして個性豊かなお香と文吉のやり取りに、ページをめくる手が止まらない!
旅の目的は美味しいものを食べること? それとも過去を乗り越えること?
二人の絆はどのように深まっていくのか。そして、それぞれが抱える過去の謎も、旅と共に少しずつ明らかになっていきます。
笑って泣けて、お腹が空く――新たな食時代劇ロードムービー、ここに開幕!
さあ、お香と文吉と一緒に、舌と腹で東海道五十三次を旅しましょう!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる