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第二話 因縁
裏切りの疑惑
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階段を駆け下りながら心の中で乙八を罵倒する。
(馬鹿な男や。お前こそほんまもんの阿呆や!)
そして宗次郎自身も、同じように阿呆だと思った。
乙八の放った言葉が頭の中を嵐のように駆け巡る。
――「ちゃっかり、あいつに惚れているんだろ。あんたも」
(ああ、そうかもしれん。だからこんなにも胸が痛い)
「あんたも」と言われてことで、乙八が九鬼丸に本気で惚れてしまっていることが明らかになった。
お美津さんの心中に鉢合わせてからの知り合いだと言うにはおかしすぎる台詞。かといって、旧知であるのなら、求馬にそれを打ち明けていただろう。
乙八との関係を隠していたということは、九鬼丸は乙八がお美津さんを陥れたことを知っていて黙って見ていたという証拠に他ならない――と宗次郎は読んでいた。そこから紐解ける推理はあまりにも嫌な内容だった。だからそうじゃないということを確かめるためにも、乙八をこの手で問い詰めたかったのに……
あいつは、それをさせなかったのだ。
それは宗次郎の想定通りで、しかし絶対そうはなって欲しくなかった結果だ。全てが嫌な方向へと転がり始めている。一番目を逸らしたかった方向へと。
胸の痛みに耐えかねて、無意識に着物の袷を握りしめた。
たとえ、その行為が誰のためでも、何が狙いだったとしても。本気で九鬼丸に惚れていた乙八を、まんまと利用したとなると、それは許しがたい行為だと思えた。
かと言って、乙八の零したように、あいつが……九鬼丸が乙八を裏切るはずがない――と思うのは、もっと悔しい。
どちらに転んでも苦しすぎる結末を振り切るように、くめやの玄関を飛び出した。
たった今、息を引き取ったということは、まだやって間もないということだ。やった男の足取りを読み取るように、乙八の部屋の窓の下で、その下に刻まれた足跡を探す。
「やはりあった」
くめやの裏には、宿に枝が届きそうなクスノキがあって、その木の下に足跡が残っていた。足跡は八幡宮の方角へと続いている。
雨にぬかるんだ道に残された跡はまだ軟らかく、すぐに足型の本人に追いついた。
「九鬼丸!」
まるで追いつかれることを待っていたかのように、石灯籠の向こうから半笑いの九鬼丸が現れた。
「……何がおかしい」
九鬼丸は鼻で嗤った。
「お前が必死の形相だから、可笑しくってよ」
九鬼丸の誘いに乗らぬよう、自分を押し殺しつつ問い返した。
「……あんたが乙八を殺したのか」
ククっと九鬼丸の喉仏が笑いに震える。
「俺が? 誰を?」
「とぼけるのは、もう充分だ。その足元、くめやから走ったせいで泥だらけじゃないか」
尻端折りにした九鬼丸の足元は、泥が跳ね、脛まで汚れていた。
「だからなんだ。俺がやったという確証もねえのに、『お前だろ』と言われて『はいそうです』と答えると思うのかよ。甘ちゃんだな、思った以上に」
「甘ちゃん」だと指摘され、ぐっと喉が詰まったが、それでも表情を崩さないように顎を上げて続ける。
「乙八はあんたに惚れていたんだ、本気で。だから恵光寺を出た後も、あんたが居るこの界隈を離れることができなかった」
「知るか」
「最期まであんたを信じていた。いつかは迎えに来ると」
「あいつと俺はただの陰間と客だ。それ以上でもなきゃ、それ以下でもねえ」
宗次郎は奥歯を噛みしめた。悔し涙が目に膜を張る。
だが、怒りは焦りを生む。宗次郎は自分が余計なことを口走っていることに気付いていなかった。
「はじめから何もかも知っていたくせに、なのに知らないふりをして」
「何もかも? どこからどこまでのことを言っているのか、俺にゃあ、さっぱり見当もつかねえな」
てっきり、求馬に協力して乙八のことを探っていたのだと信じきっていた。すっかり目が曇っていたのは己だ。九鬼丸は最初から、乙八と手を組んでいたのだ。
「求さんに……あの人に顔向けできるのかよ」
途端、人を馬鹿にしたようにへらへらしていた九鬼丸の顔から笑みが消え、無表情になった。
感情を読み取らせないように無表情になったのではなく、正真正銘の無感情がその瞳に宿る。まるで黒い空洞のような光を失った目で見下ろすと、その目と同様に感情の見えない声を発した。
「乙はたまたま、あの娘に惚れられただけだ。それでなぜ俺が求馬に悪いと思わなきゃならない。むしろ求馬が知りたがっていたから、乙に近づいたんだぜ」
詭弁だと瞬時に気付いた。
「乙八の言い分だとそんな昨日や今日の」
宗次郎の反論を九鬼丸の乾いた笑い声がかき消した。
「だから初めに忠告したはずだ。この探索には反対だと。誰も浮かばれねえ上に、余計な死体が増えただけだ。第一、何で関係もないお前や求馬がそこまで首を突っ込む。お前たちが首を突っ込まなきゃ、乙は死なずに済んだかもしれねえのによ」
宗次郎の唇が震えた。相手の言葉に翻弄されてはいけない、心を乱されまいと思うのに、呼吸までもが浅くなっていた。
無表情だった九鬼丸の口元にいやらしい笑みが浮かんだ。
「それとも何か。お前は餌差のふりをして、火盗や奉行の狗だったりするのか」
ギクリとした。
九鬼丸が一歩、宗次郎に近づいた。
「そうだな、お前にだけ本当のことを教えてやる。あの和歌は、俺が乙八に贈ったものだ。ちょっと恋歌を贈ったら、その気になって尽くしてくれた」
九鬼丸が自分の縮れた後れ毛を指に絡め、目を細めた。
「俺はね、本気で惚れた相手には自分の言葉で恋を詠んでやる。他人の歌は贈らねえよ。あいつはその程度の相手だったんだよ」
「お前っ!」
「だがまさか、あの歌を女の草履に遺すとは思いもよらなかったがな。俺にすりゃ、むしろ乙に裏切られた気分だ」
「だから? だから殺したのか。いっそ、自分とは無関係だと切り捨てたのか!」
怒りを抑えきれなくなった宗次郎は、その手を九鬼丸の衿元に伸ばしたが、するりと逃げられた。
「俺は浅井殿の娘とは無関係だ」
「それこそ、調べたらわかることだ!」
「どうやって? 乙は死んだんだろ。乙は勝手に俺に惚れただけ。浅井の娘は愚かにも乙に恋しただけ。旭屋は身勝手な乙に利用され、あいつに惚れていた女を消しただけだ」
「……なんでお前が旭屋のことまで知っている」
「さあね。乙に聞いたんだっけな」
ふざけた答えに宗次郎が詰めると、九鬼丸が三歩後ろに下がった。
「だが、俺は何もしとらん。ああ、そうだ。あの和歌をあの場に置いたことを叱ってやった。もう手を切ると言ってやったかな」
さらに少しずつ遠ざかって行く。
「俺のことを試すような男とは本気になれねえって、旭屋に拾ってもらいなと、捨ててやった。乙が死んだとすりゃ、俺のせいじゃねえ。お前が余計な詮索をしたからだ。あいつは自分で死んだんだよ」
足がその場に縫い付けられてしまったかのようだった。去って行く九鬼丸を追いかけられなかった。確かに証拠は何もないのだ。
それでも、どんなに言い逃れをしようとも、九鬼丸の仕掛けた恋が、三人もの人生を狂わせてしまったことだけは確実だった。
そしてうまく言い逃れをすればするほど、もしや、月光院と安房守を繋いでいた中間者の正体は、九鬼丸だったのではないか――という、疑念が浮かび上がって来るのだった。
(馬鹿な男や。お前こそほんまもんの阿呆や!)
そして宗次郎自身も、同じように阿呆だと思った。
乙八の放った言葉が頭の中を嵐のように駆け巡る。
――「ちゃっかり、あいつに惚れているんだろ。あんたも」
(ああ、そうかもしれん。だからこんなにも胸が痛い)
「あんたも」と言われてことで、乙八が九鬼丸に本気で惚れてしまっていることが明らかになった。
お美津さんの心中に鉢合わせてからの知り合いだと言うにはおかしすぎる台詞。かといって、旧知であるのなら、求馬にそれを打ち明けていただろう。
乙八との関係を隠していたということは、九鬼丸は乙八がお美津さんを陥れたことを知っていて黙って見ていたという証拠に他ならない――と宗次郎は読んでいた。そこから紐解ける推理はあまりにも嫌な内容だった。だからそうじゃないということを確かめるためにも、乙八をこの手で問い詰めたかったのに……
あいつは、それをさせなかったのだ。
それは宗次郎の想定通りで、しかし絶対そうはなって欲しくなかった結果だ。全てが嫌な方向へと転がり始めている。一番目を逸らしたかった方向へと。
胸の痛みに耐えかねて、無意識に着物の袷を握りしめた。
たとえ、その行為が誰のためでも、何が狙いだったとしても。本気で九鬼丸に惚れていた乙八を、まんまと利用したとなると、それは許しがたい行為だと思えた。
かと言って、乙八の零したように、あいつが……九鬼丸が乙八を裏切るはずがない――と思うのは、もっと悔しい。
どちらに転んでも苦しすぎる結末を振り切るように、くめやの玄関を飛び出した。
たった今、息を引き取ったということは、まだやって間もないということだ。やった男の足取りを読み取るように、乙八の部屋の窓の下で、その下に刻まれた足跡を探す。
「やはりあった」
くめやの裏には、宿に枝が届きそうなクスノキがあって、その木の下に足跡が残っていた。足跡は八幡宮の方角へと続いている。
雨にぬかるんだ道に残された跡はまだ軟らかく、すぐに足型の本人に追いついた。
「九鬼丸!」
まるで追いつかれることを待っていたかのように、石灯籠の向こうから半笑いの九鬼丸が現れた。
「……何がおかしい」
九鬼丸は鼻で嗤った。
「お前が必死の形相だから、可笑しくってよ」
九鬼丸の誘いに乗らぬよう、自分を押し殺しつつ問い返した。
「……あんたが乙八を殺したのか」
ククっと九鬼丸の喉仏が笑いに震える。
「俺が? 誰を?」
「とぼけるのは、もう充分だ。その足元、くめやから走ったせいで泥だらけじゃないか」
尻端折りにした九鬼丸の足元は、泥が跳ね、脛まで汚れていた。
「だからなんだ。俺がやったという確証もねえのに、『お前だろ』と言われて『はいそうです』と答えると思うのかよ。甘ちゃんだな、思った以上に」
「甘ちゃん」だと指摘され、ぐっと喉が詰まったが、それでも表情を崩さないように顎を上げて続ける。
「乙八はあんたに惚れていたんだ、本気で。だから恵光寺を出た後も、あんたが居るこの界隈を離れることができなかった」
「知るか」
「最期まであんたを信じていた。いつかは迎えに来ると」
「あいつと俺はただの陰間と客だ。それ以上でもなきゃ、それ以下でもねえ」
宗次郎は奥歯を噛みしめた。悔し涙が目に膜を張る。
だが、怒りは焦りを生む。宗次郎は自分が余計なことを口走っていることに気付いていなかった。
「はじめから何もかも知っていたくせに、なのに知らないふりをして」
「何もかも? どこからどこまでのことを言っているのか、俺にゃあ、さっぱり見当もつかねえな」
てっきり、求馬に協力して乙八のことを探っていたのだと信じきっていた。すっかり目が曇っていたのは己だ。九鬼丸は最初から、乙八と手を組んでいたのだ。
「求さんに……あの人に顔向けできるのかよ」
途端、人を馬鹿にしたようにへらへらしていた九鬼丸の顔から笑みが消え、無表情になった。
感情を読み取らせないように無表情になったのではなく、正真正銘の無感情がその瞳に宿る。まるで黒い空洞のような光を失った目で見下ろすと、その目と同様に感情の見えない声を発した。
「乙はたまたま、あの娘に惚れられただけだ。それでなぜ俺が求馬に悪いと思わなきゃならない。むしろ求馬が知りたがっていたから、乙に近づいたんだぜ」
詭弁だと瞬時に気付いた。
「乙八の言い分だとそんな昨日や今日の」
宗次郎の反論を九鬼丸の乾いた笑い声がかき消した。
「だから初めに忠告したはずだ。この探索には反対だと。誰も浮かばれねえ上に、余計な死体が増えただけだ。第一、何で関係もないお前や求馬がそこまで首を突っ込む。お前たちが首を突っ込まなきゃ、乙は死なずに済んだかもしれねえのによ」
宗次郎の唇が震えた。相手の言葉に翻弄されてはいけない、心を乱されまいと思うのに、呼吸までもが浅くなっていた。
無表情だった九鬼丸の口元にいやらしい笑みが浮かんだ。
「それとも何か。お前は餌差のふりをして、火盗や奉行の狗だったりするのか」
ギクリとした。
九鬼丸が一歩、宗次郎に近づいた。
「そうだな、お前にだけ本当のことを教えてやる。あの和歌は、俺が乙八に贈ったものだ。ちょっと恋歌を贈ったら、その気になって尽くしてくれた」
九鬼丸が自分の縮れた後れ毛を指に絡め、目を細めた。
「俺はね、本気で惚れた相手には自分の言葉で恋を詠んでやる。他人の歌は贈らねえよ。あいつはその程度の相手だったんだよ」
「お前っ!」
「だがまさか、あの歌を女の草履に遺すとは思いもよらなかったがな。俺にすりゃ、むしろ乙に裏切られた気分だ」
「だから? だから殺したのか。いっそ、自分とは無関係だと切り捨てたのか!」
怒りを抑えきれなくなった宗次郎は、その手を九鬼丸の衿元に伸ばしたが、するりと逃げられた。
「俺は浅井殿の娘とは無関係だ」
「それこそ、調べたらわかることだ!」
「どうやって? 乙は死んだんだろ。乙は勝手に俺に惚れただけ。浅井の娘は愚かにも乙に恋しただけ。旭屋は身勝手な乙に利用され、あいつに惚れていた女を消しただけだ」
「……なんでお前が旭屋のことまで知っている」
「さあね。乙に聞いたんだっけな」
ふざけた答えに宗次郎が詰めると、九鬼丸が三歩後ろに下がった。
「だが、俺は何もしとらん。ああ、そうだ。あの和歌をあの場に置いたことを叱ってやった。もう手を切ると言ってやったかな」
さらに少しずつ遠ざかって行く。
「俺のことを試すような男とは本気になれねえって、旭屋に拾ってもらいなと、捨ててやった。乙が死んだとすりゃ、俺のせいじゃねえ。お前が余計な詮索をしたからだ。あいつは自分で死んだんだよ」
足がその場に縫い付けられてしまったかのようだった。去って行く九鬼丸を追いかけられなかった。確かに証拠は何もないのだ。
それでも、どんなに言い逃れをしようとも、九鬼丸の仕掛けた恋が、三人もの人生を狂わせてしまったことだけは確実だった。
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