35 / 46
第三話 復讐の形
相賀家の闇 二
しおりを挟む
全ての目が宗次郎に注がれる。矢のように突き刺さる視線に、心臓がずきずきと脈打つ。
ずっと奥に仕舞いこんでいた事実。杢右衛門にも言えず、忘れたふりをしてやり過ごしてきた。今の今まで……
まさか、この様な形で、あの時の地獄が人目にさらされるとは、つい昨日までは思いもしなかった。
「な、なにを言うか」
杢右衛門が取り繕うように言ったが、宗次郎には届かなかった。
今、宗次郎の目の前には暗闇が広がり、ありもしない血の海が見えていた。
――父の身体から滲み出る血……目の前の男の頭から吹き出す血飛沫……己の顔を濡らした血反吐は誰の物なのか……
あの日、鉄味を帯びた生臭い臭いは鼻から喉を犯し、声を奪った。そしてあの事件の直後、宗次郎はひと月以上、口をきかなかった。
しかし、今こそ声を出す時なのだと、喉の奥で停滞していた真実を絞り出した。
「わ、私のはなしを……私が話せなかったあの時の……」
「そう……」
身を乗り出した杢右衛門が吐き出そうとした言葉を呑み込み、宗次郎の声に耳を傾けるため、体を戻した。
「あ、あの日……伯父貴が訪ねて来た時から父は不機嫌で、私は一人、奥の台所で隠れるように飯を……独り、飯を食っておりました」
あの日の重苦しい空気が蘇る。
暗くひんやりとした台所。季節は冬に向かう前の霜月。「雪が降る前にここを出ろ」という声。重々しい二人の会話。嘲るような客人の甲高い笑い声。
ひっそりと、声を殺すように煮干しをかじっては飲み込み、麦飯を咀嚼しては、ごくりと飲み込むその音が外に聞こえやしないかと気をかける。なぜか、自分がここにいることを客人に知られてはまずいと、本能が教えていた。
「……そのうち、二人が外に出て、多分斬り合いになったのだと……。けど私は、耳を塞いで……父が戻るのをじっと待っておりました」
いつしか二人のやり取りに諍いが生じていた。大人同士の怒鳴り合いは、それまで父と二人きりで静かに暮らしていた宗次郎には、ひどく恐ろしく感じ、だから耳を手で覆い、うずくまっていたのだ。外に出たのはわかった。外から聞こえてきた声が、気合の声であったことから、二人はとうとう斬り合いになったのだということも察した。
身震いが止まらない程怖かったが、最強だと信じていた父が負けるとは思ってもいなかった。
「しかし、戻ってきたのは父ではなく、伯父貴でした。私は伯父貴に……」
ドスドスと板の間を踏み鳴らし大股で近づく男の威圧感を思い出し、奥歯を噛みしめる。
あれは獣。異様に赤く血走った目に捕らえられた己は、まるで小動物のように怯えていた。
「伯父貴は……私に覆いかぶさり、私の……体を開き、私の首筋を」
「もうよい!」
遮った杢右衛門の声が聞こえないのか、虚ろな眼差しのまま続ける。
「舐めながら、手ぇは着物を剥いで、腹を……撫でながら言うたんです。『親父はもう死んだ。お前は俺が連れて帰る』と。その、父を斬った血だらけの指で俺の」
「宗次郎! やめなさい!」
「気持ち悪うて、我慢できへんなって、ほいで、気ぃついたら、俺は火箸であいつを刺しとった。そうしたら若い男が喚きながら入ってきて、目の前まで刀が迫ってきたとこまでは憶えとるんやが……いつの間にか、俺は父上の下敷きになっとって、父上が……」
(父上が最期に言うたんや。『生きろ』と。『死ぬな、逃げて生き延びろ』と)
耳元で絶え絶えに聞こえた父の声。だから生きてきた。父に救われた命を消さないように、必死で……
まるで童子のように震える宗次郎を、求馬が掻き抱いた。
「それは辛かったのう」と。
その様子を見守りつつ、村垣が当時を思い返す。
「つまりなんだ、あの時、正蔵を刺したのは宗次郎で、宗次郎を庇って周作殿は、あの若者に」
「その若者こそが、通温殿の隠密であったという相賀辰蔵。つまり正蔵の息子」
「九鬼丸でございまするか」
村垣が思い出した過去に、杢右衛門が結論を出し、求馬が九鬼丸の素性を理解した。
求馬の腕の中で、宗次郎は茫然としたままポツリと漏らした。
「……俺は九鬼丸の親父様の仇なんやなあ」
杢右衛門が宗次郎の手を引き、自分の方へと向き直らせた。
「違うぞ、宗次郎! あれは正蔵、自ら招いた災いじゃ。お主が殺さずとも、周作殿が殺しておった。それにあの状況だ。瀕死の周作殿に勝ち目はなく、正蔵の息子に殺されたのも、致し方ないことだったのじゃ」
それでも、九鬼丸にそのような言い訳が通用するだろうか。二人目の義父の目を見ながら思う。
ふと思いついたように村垣が言った。
「まさか、九鬼丸とやらは、宗次郎が父親の仇だと知って、近付いたのであろうか」
村垣の思い付きを、求馬が否定した。
「だったら、即、殺していたでしょう。あいつはそういう所で躊躇するような男ではありませぬ。それにその時の若者が辰蔵であったとするならば、互いが仇。たとえ士分でなかろうが、敵討ちを申し込むでありましょう」
しかし、九鬼丸が知っていようが知らなかろうが、宗次郎にとってはどうでも良かった。
己は真実を知ってしまったのだから。己は九鬼丸の父の仇で、九鬼丸は自分の父の仇なのだと。そして血の繋がりが無いとはいえ、自分と九鬼丸は従兄弟だったのだ。
それなのに、呑気に九鬼丸に対し、思いを寄せていたとは……
(笑てまう)
◇
雑司ヶ谷の御鷹屋敷に、乗り物と呼ばれる豪奢な駕籠が到着した。それと一緒に、尾張家から三人の供侍が迎えに来た。
求馬から「これからどうするのか」と、尋ねられたが、宗次郎は何も考えられず、「一晩だけ泊まる」としか答えられなかった。
未だ顔色が悪く意気消沈している宗次郎に、求馬の手が伸びた。その人差し指が宗次郎の額を弾く。
「いたっ」
驚いて、求馬の顔を見上げた。
「九鬼丸のしていたことを、この俺ですら見抜けなかったのじゃ。たかが数回会っただけのお前に何が見抜けるというのじゃ。戯けたことで悩むな」
呑気な求馬に怒りさえ感じ、つい問い返した。
「求馬様は、俺のしたことを何とも思わないのですか」
求馬からまっすぐな視線が返ってきた。
「お前の過去のことか? 子供をあそこまで追い込んだ九鬼丸の親父に胸糞が悪くなっただけじゃ」
「でも俺は!」
弾かれるように言い返したものの、その後の声はどんどん萎んでいった。
「お、おれは、町人餌差のふりをした、紀伊徳川家の隠密にございます……昔、人を殺したこの手で、いまなお殺生人として生きる、血塗られた生き方しかできない鬼にございます。求馬様に身分を偽り近づいた不届き者にございまする」
泣き出しそうな情けない声で訴える。
それでも求馬は笑っていた。
「それがどうした。過去のことは災難にすぎぬ。宮井殿の言う通り、どう転んでもあの結末にしかならなかったのだ。それに俺にとってお主は〈相賀十吉〉でも〈殺生人の宗次郎〉でもない。ただの宗次郎じゃ。俺の友の宗次郎なんだよ」
宗次郎の目が潤む。どこまでも甘く、どこまでも純真な求馬の態度が、宗次郎の胸を締め付ける。
「そんな過去になど捕らわれず、お主はもっと自由に生きて良いと思うぞ」
『自由』という言葉に、宗次郎は唖然とした。武士という身分と自由という生き方は対極にある。
「我らに自由など」
「確かに我らは生き方を選べぬ。だがな、心まで縛られてどうするか。生業を全うすることと、心の芯の持ちようは別物だと、俺は思うておる」
去り際にもう一度、求馬が振り向いた。
「だから次に会う時も、『求さん』と呼んでくれ」
ずっと奥に仕舞いこんでいた事実。杢右衛門にも言えず、忘れたふりをしてやり過ごしてきた。今の今まで……
まさか、この様な形で、あの時の地獄が人目にさらされるとは、つい昨日までは思いもしなかった。
「な、なにを言うか」
杢右衛門が取り繕うように言ったが、宗次郎には届かなかった。
今、宗次郎の目の前には暗闇が広がり、ありもしない血の海が見えていた。
――父の身体から滲み出る血……目の前の男の頭から吹き出す血飛沫……己の顔を濡らした血反吐は誰の物なのか……
あの日、鉄味を帯びた生臭い臭いは鼻から喉を犯し、声を奪った。そしてあの事件の直後、宗次郎はひと月以上、口をきかなかった。
しかし、今こそ声を出す時なのだと、喉の奥で停滞していた真実を絞り出した。
「わ、私のはなしを……私が話せなかったあの時の……」
「そう……」
身を乗り出した杢右衛門が吐き出そうとした言葉を呑み込み、宗次郎の声に耳を傾けるため、体を戻した。
「あ、あの日……伯父貴が訪ねて来た時から父は不機嫌で、私は一人、奥の台所で隠れるように飯を……独り、飯を食っておりました」
あの日の重苦しい空気が蘇る。
暗くひんやりとした台所。季節は冬に向かう前の霜月。「雪が降る前にここを出ろ」という声。重々しい二人の会話。嘲るような客人の甲高い笑い声。
ひっそりと、声を殺すように煮干しをかじっては飲み込み、麦飯を咀嚼しては、ごくりと飲み込むその音が外に聞こえやしないかと気をかける。なぜか、自分がここにいることを客人に知られてはまずいと、本能が教えていた。
「……そのうち、二人が外に出て、多分斬り合いになったのだと……。けど私は、耳を塞いで……父が戻るのをじっと待っておりました」
いつしか二人のやり取りに諍いが生じていた。大人同士の怒鳴り合いは、それまで父と二人きりで静かに暮らしていた宗次郎には、ひどく恐ろしく感じ、だから耳を手で覆い、うずくまっていたのだ。外に出たのはわかった。外から聞こえてきた声が、気合の声であったことから、二人はとうとう斬り合いになったのだということも察した。
身震いが止まらない程怖かったが、最強だと信じていた父が負けるとは思ってもいなかった。
「しかし、戻ってきたのは父ではなく、伯父貴でした。私は伯父貴に……」
ドスドスと板の間を踏み鳴らし大股で近づく男の威圧感を思い出し、奥歯を噛みしめる。
あれは獣。異様に赤く血走った目に捕らえられた己は、まるで小動物のように怯えていた。
「伯父貴は……私に覆いかぶさり、私の……体を開き、私の首筋を」
「もうよい!」
遮った杢右衛門の声が聞こえないのか、虚ろな眼差しのまま続ける。
「舐めながら、手ぇは着物を剥いで、腹を……撫でながら言うたんです。『親父はもう死んだ。お前は俺が連れて帰る』と。その、父を斬った血だらけの指で俺の」
「宗次郎! やめなさい!」
「気持ち悪うて、我慢できへんなって、ほいで、気ぃついたら、俺は火箸であいつを刺しとった。そうしたら若い男が喚きながら入ってきて、目の前まで刀が迫ってきたとこまでは憶えとるんやが……いつの間にか、俺は父上の下敷きになっとって、父上が……」
(父上が最期に言うたんや。『生きろ』と。『死ぬな、逃げて生き延びろ』と)
耳元で絶え絶えに聞こえた父の声。だから生きてきた。父に救われた命を消さないように、必死で……
まるで童子のように震える宗次郎を、求馬が掻き抱いた。
「それは辛かったのう」と。
その様子を見守りつつ、村垣が当時を思い返す。
「つまりなんだ、あの時、正蔵を刺したのは宗次郎で、宗次郎を庇って周作殿は、あの若者に」
「その若者こそが、通温殿の隠密であったという相賀辰蔵。つまり正蔵の息子」
「九鬼丸でございまするか」
村垣が思い出した過去に、杢右衛門が結論を出し、求馬が九鬼丸の素性を理解した。
求馬の腕の中で、宗次郎は茫然としたままポツリと漏らした。
「……俺は九鬼丸の親父様の仇なんやなあ」
杢右衛門が宗次郎の手を引き、自分の方へと向き直らせた。
「違うぞ、宗次郎! あれは正蔵、自ら招いた災いじゃ。お主が殺さずとも、周作殿が殺しておった。それにあの状況だ。瀕死の周作殿に勝ち目はなく、正蔵の息子に殺されたのも、致し方ないことだったのじゃ」
それでも、九鬼丸にそのような言い訳が通用するだろうか。二人目の義父の目を見ながら思う。
ふと思いついたように村垣が言った。
「まさか、九鬼丸とやらは、宗次郎が父親の仇だと知って、近付いたのであろうか」
村垣の思い付きを、求馬が否定した。
「だったら、即、殺していたでしょう。あいつはそういう所で躊躇するような男ではありませぬ。それにその時の若者が辰蔵であったとするならば、互いが仇。たとえ士分でなかろうが、敵討ちを申し込むでありましょう」
しかし、九鬼丸が知っていようが知らなかろうが、宗次郎にとってはどうでも良かった。
己は真実を知ってしまったのだから。己は九鬼丸の父の仇で、九鬼丸は自分の父の仇なのだと。そして血の繋がりが無いとはいえ、自分と九鬼丸は従兄弟だったのだ。
それなのに、呑気に九鬼丸に対し、思いを寄せていたとは……
(笑てまう)
◇
雑司ヶ谷の御鷹屋敷に、乗り物と呼ばれる豪奢な駕籠が到着した。それと一緒に、尾張家から三人の供侍が迎えに来た。
求馬から「これからどうするのか」と、尋ねられたが、宗次郎は何も考えられず、「一晩だけ泊まる」としか答えられなかった。
未だ顔色が悪く意気消沈している宗次郎に、求馬の手が伸びた。その人差し指が宗次郎の額を弾く。
「いたっ」
驚いて、求馬の顔を見上げた。
「九鬼丸のしていたことを、この俺ですら見抜けなかったのじゃ。たかが数回会っただけのお前に何が見抜けるというのじゃ。戯けたことで悩むな」
呑気な求馬に怒りさえ感じ、つい問い返した。
「求馬様は、俺のしたことを何とも思わないのですか」
求馬からまっすぐな視線が返ってきた。
「お前の過去のことか? 子供をあそこまで追い込んだ九鬼丸の親父に胸糞が悪くなっただけじゃ」
「でも俺は!」
弾かれるように言い返したものの、その後の声はどんどん萎んでいった。
「お、おれは、町人餌差のふりをした、紀伊徳川家の隠密にございます……昔、人を殺したこの手で、いまなお殺生人として生きる、血塗られた生き方しかできない鬼にございます。求馬様に身分を偽り近づいた不届き者にございまする」
泣き出しそうな情けない声で訴える。
それでも求馬は笑っていた。
「それがどうした。過去のことは災難にすぎぬ。宮井殿の言う通り、どう転んでもあの結末にしかならなかったのだ。それに俺にとってお主は〈相賀十吉〉でも〈殺生人の宗次郎〉でもない。ただの宗次郎じゃ。俺の友の宗次郎なんだよ」
宗次郎の目が潤む。どこまでも甘く、どこまでも純真な求馬の態度が、宗次郎の胸を締め付ける。
「そんな過去になど捕らわれず、お主はもっと自由に生きて良いと思うぞ」
『自由』という言葉に、宗次郎は唖然とした。武士という身分と自由という生き方は対極にある。
「我らに自由など」
「確かに我らは生き方を選べぬ。だがな、心まで縛られてどうするか。生業を全うすることと、心の芯の持ちようは別物だと、俺は思うておる」
去り際にもう一度、求馬が振り向いた。
「だから次に会う時も、『求さん』と呼んでくれ」
9
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
『五感の調べ〜女按摩師異聞帖〜』
月影 朔
歴史・時代
江戸。盲目の女按摩師・市には、音、匂い、感触、全てが真実を語りかける。
失われた視覚と引き換えに得た、驚異の五感。
その力が、江戸の闇に起きた難事件の扉をこじ開ける。
裏社会に潜む謎の敵、視覚を欺く巧妙な罠。
市は「聴く」「嗅ぐ」「触れる」独自の捜査で、事件の核心に迫る。
癒やしの薬膳、そして人情の機微も鮮やかに、『この五感が、江戸を変える』
――新感覚時代ミステリー開幕!
【完結】『紅蓮の算盤〜天明飢饉、米問屋女房の戦い〜』
月影 朔
歴史・時代
江戸、天明三年。未曽有の大飢饉が、大坂を地獄に変えた――。
飢え死にする民を嘲笑うかのように、権力と結託した悪徳商人は、米を買い占め私腹を肥やす。
大坂の米問屋「稲穂屋」の女房、お凛は、天才的な算術の才と、決して諦めない胆力を持つ女だった。
愛する夫と店を守るため、算盤を武器に立ち向かうが、悪徳商人の罠と権力の横暴により、稲穂屋は全てを失う。米蔵は空、夫は獄へ、裏切りにも遭い、お凛は絶望の淵へ。
だが、彼女は、立ち上がる!
人々の絆と夫からの希望を胸に、お凛は紅蓮の炎を宿した算盤を手に、たった一人で巨大な悪へ挑むことを決意する。
奪われた命綱を、踏みにじられた正義を、算盤で奪い返せ!
これは、絶望から奇跡を起こした、一人の女房の壮絶な歴史活劇!知略と勇気で巨悪を討つ、圧巻の大逆転ドラマ!
――今、紅蓮の算盤が、不正を断罪する鉄槌となる!
花嫁
一ノ瀬亮太郎
歴史・時代
征之進は小さい頃から市松人形が欲しかった。しかし大身旗本の嫡男が女の子のように人形遊びをするなど許されるはずもない。他人からも自分からもそんな気持を隠すように征之進は武芸に励み、今では道場の師範代を務めるまでになっていた。そんな征之進に結婚話が持ち込まれる。
無用庵隠居清左衛門
蔵屋
歴史・時代
前老中田沼意次から引き継いで老中となった松平定信は、厳しい倹約令として|寛政の改革《かんせいのかいかく》を実施した。
第8代将軍徳川吉宗によって実施された|享保の改革《きょうほうのかいかく》、|天保の改革《てんぽうのかいかく》と合わせて幕政改革の三大改革という。
松平定信は厳しい倹約令を実施したのだった。江戸幕府は町人たちを中心とした貨幣経済の発達に伴い|逼迫《ひっぱく》した幕府の財政で苦しんでいた。
幕府の財政再建を目的とした改革を実施する事は江戸幕府にとって緊急の課題であった。
この時期、各地方の諸藩に於いても藩政改革が行われていたのであった。
そんな中、徳川家直参旗本であった緒方清左衛門は、己の出世の事しか考えない同僚に嫌気がさしていた。
清左衛門は無欲の徳川家直参旗本であった。
俸禄も入らず、出世欲もなく、ただひたすら、女房の千歳と娘の弥生と、三人仲睦まじく暮らす平穏な日々であればよかったのである。
清左衛門は『あらゆる欲を捨て去り、何もこだわらぬ無の境地になって千歳と弥生の幸せだけを願い、最後は無欲で死にたい』と思っていたのだ。
ある日、清左衛門に理不尽な言いがかりが同僚立花右近からあったのだ。
清左衛門は右近の言いがかりを相手にせず、
無視したのであった。
そして、松平定信に対して、隠居願いを提出したのであった。
「おぬし、本当にそれで良いのだな」
「拙者、一向に構いません」
「分かった。好きにするがよい」
こうして、清左衛門は隠居生活に入ったのである。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
【完結】『江戸めぐり ご馳走道中 ~お香と文吉の東海道味巡り~』
月影 朔
歴史・時代
読めばお腹が減る!食と人情の東海道味巡り、開幕!
自由を求め家を飛び出した、食い道楽で腕っぷし自慢の元武家娘・お香。
料理の知識は確かだが、とある事件で自信を失った気弱な元料理人・文吉。
正反対の二人が偶然出会い、共に旅を始めたのは、天下の街道・東海道!
行く先々の宿場町で二人が出会うのは、その土地ならではの絶品ご当地料理や豊かな食材、そして様々な悩みを抱えた人々。
料理を巡る親子喧嘩、失われた秘伝の味、食材に隠された秘密、旅人たちの些細な揉め事まで――
お香の持ち前の豪快な行動力と、文吉の豊富な食の知識、そして二人の「料理」の力が、人々の閉ざされた心を開き、事件を解決へと導いていきます。時にはお香の隠された剣の腕が炸裂することも…!?
読めば目の前に湯気立つ料理が見えるよう!
香りまで伝わるような鮮やかな料理描写、笑いと涙あふれる人情ドラマ、そして個性豊かなお香と文吉のやり取りに、ページをめくる手が止まらない!
旅の目的は美味しいものを食べること? それとも過去を乗り越えること?
二人の絆はどのように深まっていくのか。そして、それぞれが抱える過去の謎も、旅と共に少しずつ明らかになっていきます。
笑って泣けて、お腹が空く――新たな食時代劇ロードムービー、ここに開幕!
さあ、お香と文吉と一緒に、舌と腹で東海道五十三次を旅しましょう!
【完結】ふたつ星、輝いて 〜あやし兄弟と町娘の江戸捕物抄〜
上杉
歴史・時代
■歴史小説大賞奨励賞受賞しました!■
おりんは江戸のとある武家屋敷で下女として働く14歳の少女。ある日、突然屋敷で母の急死を告げられ、自分が花街へ売られることを知った彼女はその場から逃げだした。
母は殺されたのかもしれない――そんな絶望のどん底にいたおりんに声をかけたのは、奉行所で同心として働く有島惣次郎だった。
今も刺客の手が迫る彼女を守るため、彼の屋敷で住み込みで働くことが決まる。そこで彼の兄――有島清之進とともに生活を始めるのだが、病弱という噂とはかけ離れた腕っぷしのよさに、おりんは驚きを隠せない。
そうしてともに生活しながら少しづつ心を開いていった――その矢先のことだった。
母の命を奪った犯人が発覚すると同時に、何故か兄清之進に凶刃が迫り――。
とある秘密を抱えた兄弟と町娘おりんの紡ぐ江戸捕物抄です!お楽しみください!
※フィクションです。
※周辺の歴史事件などは、史実を踏んでいます。
皆さまご評価頂きありがとうございました。大変嬉しいです!
今後も精進してまいります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる