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第三話 復讐の形
半平太の始末
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宗次郎は上総屋の放った刺客を放置したまま、雑司ヶ谷の御鷹部屋御用屋敷に向かった。
「ほうか……」
宗次郎の報告に、杢右衛門は硬い表情で相槌だけをため息のように落とした。
「半平太が漏らしたんは『頭』。父上、これは餌差頭に違いないと思いませぬか」
「餌差頭」という言葉だけ小声で言った。
「ついでに、さっき撃退した刺客らは上総屋が雇っちゃある用心棒に違いないと思われまするが、兄上を襲ったのは、上総屋の指図ではなさそうです。けど唯一、依頼主を知っとったはずの男は、吹き矢で消されてしまいました」
「吹き矢か……」
「はい。お美津さんを陥れた乙八――奴を消したんも、吹き矢でしたから、多分」
「うむ。九鬼丸という男が絡んでおると見て、間違いなかろうよ」
そうなると、尾張徳川家――安房守こと松平通温がこの鳥屋の不正に大きく関わっているという証拠にもなりかねない。
「面倒じゃな。どうしたものか」
「しかし父上、幕臣ともあろうもんが、将軍家と勢力争いをした大名と手ぇ組んで不正をするっちゅうなこと」
忠心を二人の父から叩き込まれて育った宗次郎には、考えも及ばないことだった。
「鷹匠同心に餌差……直参とはいえ、特に餌差など、贅沢な身分ではないからな」
それでも鷹狩りが無くなって役を失っていた鷹役人たちは、御鷹狩再開をした上様のおかげで、役が与えられたのだ。小普請で無役だった半平太しかり。
それなのになぜ不正などしてまで、金を欲しがるのか。食うことに困窮したことのない宗次郎には理解できない。半平太の不正は、まるで自身を裏切られたように感じられ、胸に気鬱が広がる。
「『頭』については、村垣に任せることにしよう。その代わり、宗次郎は半平太を押さえよ。このまま諦めるとは思えぬ。ましてや上役に命じられたとあれば、手を引くことはできぬであろう。しかし……」
杢右衛門が一旦言葉を切り、目を瞑る。再び目を開けた杢右衛門から告げられたのは、辛い下達だった。
「御上の達しに反する狩りや商いは、〈御鷹之鳥の儀礼〉に背く由々しき行為。しかもそれで私腹を肥やすことは、決して許されることではござらぬ。二度、同じことを確認すれば、捕らえ、奉行に引き渡すもやむを得ぬ」
捕らえた先には、厳しい沙汰が待ち受けている。
事実、千駄木にある戸田組の鷹匠が、勝手な鷹狩や鳥の献上を理由に腹を斬らされている。将軍にとって御鷹狩はあくまでも軍事であり、主従の形そのものなのだ。それを理解せず、私服のためにその役を利用する者が許されることはなかった。
もちろん、半平太をそのような目に遭わせたくはないと思っている。
だが、杢右衛門はさらに厳しいことを口にした。
「もし、半平太の所業の陰に、九鬼丸とやらが関わっていたならば、すんなりと事が運ぶとは思えぬ。万が一の時は、討ち取ることも辞さないつもりで追うのじゃ」
「そんな!」
半平太を討ち取る――杢右衛門の口から出た衝撃的な言葉に、宗次郎はすがるような目を向けた。
杢右衛門の平然とした態度は、むしろ宗次郎の動揺を抑え込むかのような静かな気迫をまとっていた。
「なぜに、御鷹役人に対して、殿が厳しく取り締まるか分からぬか、宗次郎よ」
直参である幕臣らの規律。何が許され、何をすれば罪になるのか。生まれついての藩士でなかった宗次郎には、その基準がわからない。ただ御鷹役人に関して言うならば、〈鳥〉を使って私腹を肥やすこと、さらに御鷹狩の地を荒らすこと。この二点は決して許されない――これは〈御鷹之鳥の儀礼〉に反することだから。そう、理解していた。
「……儀礼に反することは上様を裏切る行為だから、でございまするか」
だが、杢右衛門は大きく首を横に振った。
宗次郎の答は間違っているということだ。
「確かに裏切りは謀反に通ずる。だから取り締まる。これは当たり前のことじゃ。だがな、御鷹役人に関して申すなら、御目見え以下の役人でさえ、御鷹狩の際には行列に加わることもあるのじゃ。他家の大名と、それも将軍争いをした家の家臣と手を組み不正を成すような者を、上様の側に置けるとお思いか、宗次郎」
「あっ」
「今は太平の世であるがな、世が世ならば、譜代であろうが大名は敵にもなり得るのだと心得よ」
もはや、反論どころか疑問を持つ余地もなかった。宗次郎は畳に頭を擦りつける。
「はっ」
「まさかとは思うが、その九鬼丸とやらの狙いが、上様の御命かもしれぬということも、念頭に置いておかねばならぬ。だがしかし、上様の御立場も尾張殿の御立場も護らねばならぬということを理解して動くとすれば」
杢右衛門は宗次郎に何をせよという、二度目の催促を口に出さなかった。
だが、宗次郎の迷いは消えた。すぐさま立ち上がると、杢右衛門の家を出た。
とにかく半平太を止めなくては――その一心であった。
◇
春の終わりまで寝起きしていた懐かしい部屋の玄関を開ける。
人気のない冷めた空気が漂っていたが、敢えて奥に向かって声を上げた。
「半平太さん!」
薄暗くなった家の奥はほぼ闇で、しんとした無音だけが横たわっている。手持ちの行灯に火を灯し、梯子を上る。
小さな灯りが散らばった藁を映す。静けさに覆われているが、宗次郎には人間に聞こえるはずもない雀たちの呼吸がちゃんと聴こえていた。きちんと餌差の仕事はこなしていたようで、巣箱には何羽もの雀が眠っていた。
それを見て、少しだけ安堵する。
半平太は決して鳥刺しをさぼっていたわけではなかった。
(どこに居るん……半平太さん……)
散らばった藁を爪先で蹴散らすと、静かに寝ていた雀たちが、巣箱の中で少しだけ暴れた。
梯子を下り、奥の仕事部屋から台所の端まで探ってみたが、仕事道具は消えていた。あのままカワセミを求めて遠出したのかもしれない。
むしろそうであれば良いとさえ思う。江戸を出て、多摩か武蔵野の山にでも足を延ばしてくれりゃ、見逃すこともできるのに。そうして戻ってきたところを、また引き留めればよい。安易なことを期待するが、そんな風にうまく事が進まないこともわかっていた。
どこで鳥を調達しようが、それがどれほどありふれた小鳥であろうが、もう半平太の行為は赦されないものだと決定されてしまった。
それにすでに金も貰って焦っているはずの半平太は、きっと手近な水場に行くだろう。
どうしてこんなことになってしまったのか。なんで半平太が巻き込まれる羽目になったのか。
納得のいかない想いが胸の中を渦巻く。
これが通温の望んだ復讐であり謀反の形なのだとしたら、あまりにも惨いじゃないか。
(傷つくのは、将軍やのうて下々やなんて……)
いや、家臣というのはそのために居るのだ。そのわかり切ったことが、こんなにも残酷な形で見せられると、上様を恨みそうになる。
主のいない家の板の間に、あの日の相賀家での惨状が映しだされた。
死んだ父と伯父。血濡れた刀を握ったまま佇む若い九鬼丸と、返り血を浴びて茫然と仰向けになった幼い自分。
むせ返るような生臭い血の臭い。
そして宗次郎を庇って「生き延びよ」と命じた育ての父。さらにその先には、逃げ帰った九鬼丸に「生きよ」と命じた通温がいた。
その深い思惑は何だったのか、通温の心も父の心もわからない。
もしや父は、自分を刺した若者が、いずれ紀州徳川を脅かすことを予見して、この俺を……自分が仕込んだ忍び見習いを、殿のために生かしたのではなかろうか。もしや通温は、いずれ紀州徳川家と争うことになった時のために、相賀家の血筋をわざと残したのではあるまいか。
――自分と九鬼丸が生きさらばえた先にある地獄を、よもや、彼らは予見していたのではなかろうか。
煮詰まった思案の先に生まれた爛れた空想に吐き気さえもよおし、宗次郎は手近にあった湯呑を投げつけた。
暗闇に陶器の割れる音が響いた。
「くそったれ!」
自虐的な思い付きは、決して卑屈な想いが描いた妄想だとは思えなかった。これこそが、この残酷な不幸の元凶なのだと確信に近い思いを抱く。
「俺なんぞ産まれなきゃ良かったんや……あの時、死んでりゃ良かった」
ぽつりと漏らした言葉は、本音ではない。誰かに「そうではないぞ」と慰めて欲しい言葉なのだ。
そして、それを言ってくれるのは……
咄嗟に浮かんだ九鬼丸の姿を払うように頭を振った。
(せめて、半平太さんだけでもこの地獄から抜け出させねえと)
宗次郎は夜通し半平太の帰りを待ったが、結局、部屋の主が戻って来ることはなかった。
「ほうか……」
宗次郎の報告に、杢右衛門は硬い表情で相槌だけをため息のように落とした。
「半平太が漏らしたんは『頭』。父上、これは餌差頭に違いないと思いませぬか」
「餌差頭」という言葉だけ小声で言った。
「ついでに、さっき撃退した刺客らは上総屋が雇っちゃある用心棒に違いないと思われまするが、兄上を襲ったのは、上総屋の指図ではなさそうです。けど唯一、依頼主を知っとったはずの男は、吹き矢で消されてしまいました」
「吹き矢か……」
「はい。お美津さんを陥れた乙八――奴を消したんも、吹き矢でしたから、多分」
「うむ。九鬼丸という男が絡んでおると見て、間違いなかろうよ」
そうなると、尾張徳川家――安房守こと松平通温がこの鳥屋の不正に大きく関わっているという証拠にもなりかねない。
「面倒じゃな。どうしたものか」
「しかし父上、幕臣ともあろうもんが、将軍家と勢力争いをした大名と手ぇ組んで不正をするっちゅうなこと」
忠心を二人の父から叩き込まれて育った宗次郎には、考えも及ばないことだった。
「鷹匠同心に餌差……直参とはいえ、特に餌差など、贅沢な身分ではないからな」
それでも鷹狩りが無くなって役を失っていた鷹役人たちは、御鷹狩再開をした上様のおかげで、役が与えられたのだ。小普請で無役だった半平太しかり。
それなのになぜ不正などしてまで、金を欲しがるのか。食うことに困窮したことのない宗次郎には理解できない。半平太の不正は、まるで自身を裏切られたように感じられ、胸に気鬱が広がる。
「『頭』については、村垣に任せることにしよう。その代わり、宗次郎は半平太を押さえよ。このまま諦めるとは思えぬ。ましてや上役に命じられたとあれば、手を引くことはできぬであろう。しかし……」
杢右衛門が一旦言葉を切り、目を瞑る。再び目を開けた杢右衛門から告げられたのは、辛い下達だった。
「御上の達しに反する狩りや商いは、〈御鷹之鳥の儀礼〉に背く由々しき行為。しかもそれで私腹を肥やすことは、決して許されることではござらぬ。二度、同じことを確認すれば、捕らえ、奉行に引き渡すもやむを得ぬ」
捕らえた先には、厳しい沙汰が待ち受けている。
事実、千駄木にある戸田組の鷹匠が、勝手な鷹狩や鳥の献上を理由に腹を斬らされている。将軍にとって御鷹狩はあくまでも軍事であり、主従の形そのものなのだ。それを理解せず、私服のためにその役を利用する者が許されることはなかった。
もちろん、半平太をそのような目に遭わせたくはないと思っている。
だが、杢右衛門はさらに厳しいことを口にした。
「もし、半平太の所業の陰に、九鬼丸とやらが関わっていたならば、すんなりと事が運ぶとは思えぬ。万が一の時は、討ち取ることも辞さないつもりで追うのじゃ」
「そんな!」
半平太を討ち取る――杢右衛門の口から出た衝撃的な言葉に、宗次郎はすがるような目を向けた。
杢右衛門の平然とした態度は、むしろ宗次郎の動揺を抑え込むかのような静かな気迫をまとっていた。
「なぜに、御鷹役人に対して、殿が厳しく取り締まるか分からぬか、宗次郎よ」
直参である幕臣らの規律。何が許され、何をすれば罪になるのか。生まれついての藩士でなかった宗次郎には、その基準がわからない。ただ御鷹役人に関して言うならば、〈鳥〉を使って私腹を肥やすこと、さらに御鷹狩の地を荒らすこと。この二点は決して許されない――これは〈御鷹之鳥の儀礼〉に反することだから。そう、理解していた。
「……儀礼に反することは上様を裏切る行為だから、でございまするか」
だが、杢右衛門は大きく首を横に振った。
宗次郎の答は間違っているということだ。
「確かに裏切りは謀反に通ずる。だから取り締まる。これは当たり前のことじゃ。だがな、御鷹役人に関して申すなら、御目見え以下の役人でさえ、御鷹狩の際には行列に加わることもあるのじゃ。他家の大名と、それも将軍争いをした家の家臣と手を組み不正を成すような者を、上様の側に置けるとお思いか、宗次郎」
「あっ」
「今は太平の世であるがな、世が世ならば、譜代であろうが大名は敵にもなり得るのだと心得よ」
もはや、反論どころか疑問を持つ余地もなかった。宗次郎は畳に頭を擦りつける。
「はっ」
「まさかとは思うが、その九鬼丸とやらの狙いが、上様の御命かもしれぬということも、念頭に置いておかねばならぬ。だがしかし、上様の御立場も尾張殿の御立場も護らねばならぬということを理解して動くとすれば」
杢右衛門は宗次郎に何をせよという、二度目の催促を口に出さなかった。
だが、宗次郎の迷いは消えた。すぐさま立ち上がると、杢右衛門の家を出た。
とにかく半平太を止めなくては――その一心であった。
◇
春の終わりまで寝起きしていた懐かしい部屋の玄関を開ける。
人気のない冷めた空気が漂っていたが、敢えて奥に向かって声を上げた。
「半平太さん!」
薄暗くなった家の奥はほぼ闇で、しんとした無音だけが横たわっている。手持ちの行灯に火を灯し、梯子を上る。
小さな灯りが散らばった藁を映す。静けさに覆われているが、宗次郎には人間に聞こえるはずもない雀たちの呼吸がちゃんと聴こえていた。きちんと餌差の仕事はこなしていたようで、巣箱には何羽もの雀が眠っていた。
それを見て、少しだけ安堵する。
半平太は決して鳥刺しをさぼっていたわけではなかった。
(どこに居るん……半平太さん……)
散らばった藁を爪先で蹴散らすと、静かに寝ていた雀たちが、巣箱の中で少しだけ暴れた。
梯子を下り、奥の仕事部屋から台所の端まで探ってみたが、仕事道具は消えていた。あのままカワセミを求めて遠出したのかもしれない。
むしろそうであれば良いとさえ思う。江戸を出て、多摩か武蔵野の山にでも足を延ばしてくれりゃ、見逃すこともできるのに。そうして戻ってきたところを、また引き留めればよい。安易なことを期待するが、そんな風にうまく事が進まないこともわかっていた。
どこで鳥を調達しようが、それがどれほどありふれた小鳥であろうが、もう半平太の行為は赦されないものだと決定されてしまった。
それにすでに金も貰って焦っているはずの半平太は、きっと手近な水場に行くだろう。
どうしてこんなことになってしまったのか。なんで半平太が巻き込まれる羽目になったのか。
納得のいかない想いが胸の中を渦巻く。
これが通温の望んだ復讐であり謀反の形なのだとしたら、あまりにも惨いじゃないか。
(傷つくのは、将軍やのうて下々やなんて……)
いや、家臣というのはそのために居るのだ。そのわかり切ったことが、こんなにも残酷な形で見せられると、上様を恨みそうになる。
主のいない家の板の間に、あの日の相賀家での惨状が映しだされた。
死んだ父と伯父。血濡れた刀を握ったまま佇む若い九鬼丸と、返り血を浴びて茫然と仰向けになった幼い自分。
むせ返るような生臭い血の臭い。
そして宗次郎を庇って「生き延びよ」と命じた育ての父。さらにその先には、逃げ帰った九鬼丸に「生きよ」と命じた通温がいた。
その深い思惑は何だったのか、通温の心も父の心もわからない。
もしや父は、自分を刺した若者が、いずれ紀州徳川を脅かすことを予見して、この俺を……自分が仕込んだ忍び見習いを、殿のために生かしたのではなかろうか。もしや通温は、いずれ紀州徳川家と争うことになった時のために、相賀家の血筋をわざと残したのではあるまいか。
――自分と九鬼丸が生きさらばえた先にある地獄を、よもや、彼らは予見していたのではなかろうか。
煮詰まった思案の先に生まれた爛れた空想に吐き気さえもよおし、宗次郎は手近にあった湯呑を投げつけた。
暗闇に陶器の割れる音が響いた。
「くそったれ!」
自虐的な思い付きは、決して卑屈な想いが描いた妄想だとは思えなかった。これこそが、この残酷な不幸の元凶なのだと確信に近い思いを抱く。
「俺なんぞ産まれなきゃ良かったんや……あの時、死んでりゃ良かった」
ぽつりと漏らした言葉は、本音ではない。誰かに「そうではないぞ」と慰めて欲しい言葉なのだ。
そして、それを言ってくれるのは……
咄嗟に浮かんだ九鬼丸の姿を払うように頭を振った。
(せめて、半平太さんだけでもこの地獄から抜け出させねえと)
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