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夜の湖
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夕食を終えた圭一は、一番風呂に入るために風呂場へと向かった。
本日は平日ということもあってか、ペンションに泊まる客は圭一しかいなかった。なので、必然的に圭一が一番風呂に入ることができたのだ。
「いやー、今回は運がいいな」
圭一はご機嫌な様子で口笛を吹いている。
このペンションには露天風呂があるらしい。風呂に入りながら見る自然の景色は、まるで山奥にある秘湯に入ったときのような感覚になる、とのことだ。最も、圭一は山奥の秘湯に入ったことがないので、その感覚が正しいものなのかは知ることが出来ない。
圭一はかけ湯を終えると、真っ先に露天風呂へと向かった。この露天風呂も旅の目的の一つだ。扉を開けると、客室の窓から見る景色とはまた違った景色がそこにはあった。客室は三階にあり、風呂は一階にあるので、景色の見える高さが違うのだ。客室から見る景色は、上から見下ろすような気分を味わうことができたのだが、露天風呂ではそれを味わうことができない。その代りに、すぐ近くに自然があるので、直接触れることができる。どちらにもメリットがあり、デメリットもある、ということだ。
風呂をすっかり堪能することができた圭一は、のぼせる前にさっさとあがることにした。この後はまた湖を見に行く予定なので、のぼせて倒れるわけにはいかないのだ。
風呂から出て着替えた後は、少し部屋で睡眠してから湖に行くことにした。長い時間バイクで運転していたからか、体の疲れが溜まっていた。風呂でリラックスしたせいか、少し横になると眠気が襲ってきた。重くなった瞼をゆっくりと閉じながら、圭一は眠りへとついた。
圭一が目を覚ますと、外はすっかり暗くなっていた。時計を見てみると、すでに針は十一時を回っていた。ずいぶんと寝過ごしてしまったようだ。こんな時間になってしまったら、ペンションから出られなくなってしまうのではないか、と圭一は不安になっていた。それを確かめるべくロビーに行ってみると、そこには誰一人存在していなかった。フロントにも、従業員一人いなかった。フロントデスクには緊急連絡先が鎮座しており、もし何かあったらここに連絡してほしいとのことだった。このペンションは小さいので、夜間には人がいなくなってしまうのだろう。やけに不用心だな、と圭一は心の中で思っていた。
とはいえ、これならこっそり出ていけば誰にも見つからなそうだ。正面の入り口から出ていくわけにはいかなかったので、自分の部屋から出ていくことにした。部屋は二階にあるが、幸いそれほど高くないので、近くに生えている木をつたっていけば外に出れそうだ。少し危ない気もしたが、真夜中の湖を見たいという好奇心には適わなかった。圭一は用心しながら木をつたい、外へと出た。案外何とかなるものだな、と安堵し、湖へと向かった。
外に出ると、冷たい風が圭一の頬を撫でた。まだ夏なのに、風はこんなにも冷たい。海風ならぬ、湖風が吹いているからだろうか。
湖への道中は、夕方と夜で雰囲気が一変していた。夕方のときは特に何とも思わなかった草木が、夜になると幽霊でも出てきそうな雰囲気だ。幽霊の類は信じてはいないが、それでも多少の恐怖心はあった。圭一は落ち着け、と自分に言い聞かせながら道を進んだ。
本日は平日ということもあってか、ペンションに泊まる客は圭一しかいなかった。なので、必然的に圭一が一番風呂に入ることができたのだ。
「いやー、今回は運がいいな」
圭一はご機嫌な様子で口笛を吹いている。
このペンションには露天風呂があるらしい。風呂に入りながら見る自然の景色は、まるで山奥にある秘湯に入ったときのような感覚になる、とのことだ。最も、圭一は山奥の秘湯に入ったことがないので、その感覚が正しいものなのかは知ることが出来ない。
圭一はかけ湯を終えると、真っ先に露天風呂へと向かった。この露天風呂も旅の目的の一つだ。扉を開けると、客室の窓から見る景色とはまた違った景色がそこにはあった。客室は三階にあり、風呂は一階にあるので、景色の見える高さが違うのだ。客室から見る景色は、上から見下ろすような気分を味わうことができたのだが、露天風呂ではそれを味わうことができない。その代りに、すぐ近くに自然があるので、直接触れることができる。どちらにもメリットがあり、デメリットもある、ということだ。
風呂をすっかり堪能することができた圭一は、のぼせる前にさっさとあがることにした。この後はまた湖を見に行く予定なので、のぼせて倒れるわけにはいかないのだ。
風呂から出て着替えた後は、少し部屋で睡眠してから湖に行くことにした。長い時間バイクで運転していたからか、体の疲れが溜まっていた。風呂でリラックスしたせいか、少し横になると眠気が襲ってきた。重くなった瞼をゆっくりと閉じながら、圭一は眠りへとついた。
圭一が目を覚ますと、外はすっかり暗くなっていた。時計を見てみると、すでに針は十一時を回っていた。ずいぶんと寝過ごしてしまったようだ。こんな時間になってしまったら、ペンションから出られなくなってしまうのではないか、と圭一は不安になっていた。それを確かめるべくロビーに行ってみると、そこには誰一人存在していなかった。フロントにも、従業員一人いなかった。フロントデスクには緊急連絡先が鎮座しており、もし何かあったらここに連絡してほしいとのことだった。このペンションは小さいので、夜間には人がいなくなってしまうのだろう。やけに不用心だな、と圭一は心の中で思っていた。
とはいえ、これならこっそり出ていけば誰にも見つからなそうだ。正面の入り口から出ていくわけにはいかなかったので、自分の部屋から出ていくことにした。部屋は二階にあるが、幸いそれほど高くないので、近くに生えている木をつたっていけば外に出れそうだ。少し危ない気もしたが、真夜中の湖を見たいという好奇心には適わなかった。圭一は用心しながら木をつたい、外へと出た。案外何とかなるものだな、と安堵し、湖へと向かった。
外に出ると、冷たい風が圭一の頬を撫でた。まだ夏なのに、風はこんなにも冷たい。海風ならぬ、湖風が吹いているからだろうか。
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