癒しこそが至高です!

( ・ω・)

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3 「クレス」

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朝8時 雨。
ぽつぽつと屋根に雨が落ちる音をBGMに朝食をとっていた。

「んーと、つまり?
 お前は元々は『ニホン』ってとこに住んでいて、
 人間だったけど色々あって死んで、ウサギに転生し、
 それを俺が召喚した、ってことで良いのか?」

そんなことを言いながら、俺をこの世界に読んだ張本人、
クレスが、朝食のウィンナーをかじりながらそんなことを言ってきた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

昨日、俺は異世界に召喚された。

『グラーシア大陸』とか言う大陸の東の国、
『フェイゼル王国』の首都である、『ヴァンリート』という街の
『魔導書店』を営んでいる、クレスとか言う男に召喚された。

クレスの話によると、魔導書グリモワール
『異世界の癒される生き物』
を召喚しようとしたらしい。

何でも魔導書グリモワールは、
迷宮ダンジョンでしか手に入らないとても貴重な材料を使う上に、
作れる者が『フェイゼル王国』では指で数えられる程しか居ないから、
数が少ない。
そのため、クレスは国から作るように命令されたんだそうだ。

確かに、魔導書グリモワールは、
大量にあればとても便利だろう。
脳に負担が掛かるし、実は魔法や言語なんかを習得できる確率はかなり低いらしい。
だが、大量にあれば、文字や魔法などができる人間が確実に増えるだろう。

しかし、
作る方からすれば、肉体的にも精神的にもつらい作業なのだという。
(企業秘密なので、詳しくは教えてもらえなかったが。)
その上ノルマが厳しかったため、疲れが溜まっていたのだ。

ーーーどんなブラック作業なんだ……………?

その結果、疲れが溜まっていたとはいえ
このバカクレスは一回だけしか発動できない上に、
この店に一冊しかない
時空すらも越えて自身の望む者を呼ぶことのできる
召喚魔法コモンマジック〉の魔導書グリモワール
使ったらしい。

自分のストレスを癒してくれる、『異世界の癒される生き物』を呼び出すためだけに。

ーーーこのとき俺は言ってやった。



『バカだろ。』

冷めた瞳を向け、精神会話テレパシーでそう言い放つ

「うるさい!
 疲れたら誰だって癒しを求めたくなるもんだ!」

『じゃあペットショップとか無いのかよ。
 わざわざ貴重な物を使わんでも………………』

うぐ、と唸るクレス。

「あるっちゃあるけど……………
 俺が求めてる癒しが無いって言うか、こう、何か、違うんだよ!」

『めんどくせえ!
 こっちの世界に、ウサギとかいなかったのか?』

今度は
うげ、と顔をしかめ、

「いるけど、ほとんどが脚が筋肉でムッキムキの上に暴力的なのばっかだよ!」

『マジか。』


さすが異世界。

ウサギも立派なモンスターらしい。
地味にショックを受けつつも、
かっこ良さそうだし、見てみたいなと思う幸一であった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


とまあ、昨日は互いに、
自分のことや、この世界について色々と話していたのだが。
クレスにモフモフ撫で撫でされまくったため、今日は凄く疲れていた。

ーーーアイツ撫でてる時は良い顔していたな。

今、そのクレスはというと、
疲れていた顔は明るい笑みを浮かべ、
髭も剃り、髪も整えていた。
昨日、会ったばかりの時は40代ぐらいかと思ったが、
今は30代程に見える。
(本当は20代らしいが。)

クレスの性格は明るく、ムードメーカー、といった感じだ。
ちなみに割りと下品な方で、
昨日は女の好みの話をしてきて、

「女はさあ、やっぱ、胸とか尻だな。」

と、堂々と言った。やっぱバカだろ。

ーーーしかし、ウサギに転生した理由がまだわからん。

そう、一番の問題は今の自分の体だ。

4足歩行で歩きながらそんなことを考える。
もそり、と昨日買ってもらったペット用のエサを頬張る。
うん、うまい。おいしい。

そう、これがおかしい。
ペット用のエサをおいしいと感じてしまっている。
4足歩行が普通になってしまっている。

ーーーウサギだ。
  くそ、この体になってまだ1日しか経っていないのに。

もうすっかり馴染んでしまっていた。



朝食を済ませ、
うーん、と一人と一匹は伸びをする。

雨が少し強くなっており、ぽつぽつ、からざざざざざ、と、なっていた。

「よし、じゃあ行こうか。」

突然のその言葉に、
幸一はきょとん、とした顔になる。

「王城だよ。王城。」

その言葉に一瞬固まる。

『王城て、お前、魔導書グリモワールのノルマ、
 まだ達成できてないんじゃなかったのか?』

その言葉にこれまたきょとん、とした顔で、


「うん。だから、つくれませーんって断るんじゃん。」


『え。』


「もらった材料とか結構使っちゃったけど。(小声)
 

 さー行くぞ!」

『おいこら、今何て言った!』






この男。名をクレス。
国が相手でも怖いもの無しの男だった。
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