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1話 運命
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「戦いの時間よ。」
「もう、大げさだなぁリリアンは。」
くすくすと華奢な肩を揺らすヒジリはきりっと目元を吊り上げ臨戦態勢に入っているリリアンが面白くて仕方なかった。いつもよりも煌びやかな衣装に身を包んだリリアン、そして原作通りの初期衣装を身に纏ったヒジリはデビュタントに向かうためにわざわざ一度ヒジリの家に訪問してから出発した。1つ前を走る馬車には両家の両親が乗っているはずである。今日はヒジリたちのデビュー日だからと2人きりで馬車に乗っていた彼らだったが、リリアンは時間が経つにつれ顔が険しくなっていく。どんな言葉を投げかけようとも気を抜いてはいけないと言い続けられ、ヒジリはほとほとあきらめていた。
「入る瞬間もヒジリは私の後ろに隠れててね!」
「うん、できるだけそうしてみるね。」
「それと私の傍を離れちゃダメよ!」
「うん、わかったよ。」
「特にあの皇子に近づかれそうだと感じたらすぐに逃げて………!!」
「はいはい。リリアン、そんなに心配しなくても僕はリリアンの言う事を絶対に守るからね。」
「んぐぅっ!」
あぁ、これが推しパワー。リリアンの焦りで荒んだ心をこんな笑顔で一吹きしただけで忘れさせてしまうなんて。危ない子だわ、垂れはしていないだろうが鼻下を擦って鼻血が出ていないか確認する。萌え、というのはこういうことを言うのだ。なんだかんだ言いながら、何度もリリアンと名前を呼ばれ微笑まれるだけでリリアンは非常に幸せだ。幸せすぎるのだ、だからどうにかしてでもこの天使をあの悪魔の手から逃れさせなければいけない。それがきっとリリアンの使命なのだから。
そうこうしている内にも止まった馬車。扉が開き、目の前には赤いカーペットが敷かれている。ヒジリが先に降りエスコートをするようにリリアンに手を伸ばすとリリアンはどきどきしながらその手を握った。
これからの運命は私にかかっている。打倒皇子。頼むこっちを見るな皇子。あっちいけ皇子。ヒジリを一瞬でも視界に入れることを許さないぞ皇子。と脳内でめらめらと闘志を燃やし一歩を踏み出した。今まで身に着けた動作でカーペットを歩き、その後ろを両親たちはにこにこと微笑み見守っている。大きな扉の前まで案内されると、リリアンは大きく息を吸った。
「緊張してるの?」
「少しだけよ。」
「僕もね、すごく緊張してるけど、リリアンがいるから安心してるんだ。」
そんなことを言われたら喜んでしまう。なんてヒジリはいい子なんだろうか、こんな優しい子は私が守って見せるんだから。重い扉があく音がする、溢れ出る和やかな音楽とにぎやかな室内、きらきらと輝く照明にたくさんの料理とたくさんの人。別の意味でも緊張している。なんせ、リリアンもヒジリにつきっきりであまりパーティーやお茶会に出席したことがないからだ。身についてはいるが、それが今日はお披露目の日。とうとう来てしまった今日の運命を私は抗う。
「リリアン・グーゲル様とヒジリ・マユズミ様です。」
ドアマンが大きな声を会場中に響かせた。
「もう、大げさだなぁリリアンは。」
くすくすと華奢な肩を揺らすヒジリはきりっと目元を吊り上げ臨戦態勢に入っているリリアンが面白くて仕方なかった。いつもよりも煌びやかな衣装に身を包んだリリアン、そして原作通りの初期衣装を身に纏ったヒジリはデビュタントに向かうためにわざわざ一度ヒジリの家に訪問してから出発した。1つ前を走る馬車には両家の両親が乗っているはずである。今日はヒジリたちのデビュー日だからと2人きりで馬車に乗っていた彼らだったが、リリアンは時間が経つにつれ顔が険しくなっていく。どんな言葉を投げかけようとも気を抜いてはいけないと言い続けられ、ヒジリはほとほとあきらめていた。
「入る瞬間もヒジリは私の後ろに隠れててね!」
「うん、できるだけそうしてみるね。」
「それと私の傍を離れちゃダメよ!」
「うん、わかったよ。」
「特にあの皇子に近づかれそうだと感じたらすぐに逃げて………!!」
「はいはい。リリアン、そんなに心配しなくても僕はリリアンの言う事を絶対に守るからね。」
「んぐぅっ!」
あぁ、これが推しパワー。リリアンの焦りで荒んだ心をこんな笑顔で一吹きしただけで忘れさせてしまうなんて。危ない子だわ、垂れはしていないだろうが鼻下を擦って鼻血が出ていないか確認する。萌え、というのはこういうことを言うのだ。なんだかんだ言いながら、何度もリリアンと名前を呼ばれ微笑まれるだけでリリアンは非常に幸せだ。幸せすぎるのだ、だからどうにかしてでもこの天使をあの悪魔の手から逃れさせなければいけない。それがきっとリリアンの使命なのだから。
そうこうしている内にも止まった馬車。扉が開き、目の前には赤いカーペットが敷かれている。ヒジリが先に降りエスコートをするようにリリアンに手を伸ばすとリリアンはどきどきしながらその手を握った。
これからの運命は私にかかっている。打倒皇子。頼むこっちを見るな皇子。あっちいけ皇子。ヒジリを一瞬でも視界に入れることを許さないぞ皇子。と脳内でめらめらと闘志を燃やし一歩を踏み出した。今まで身に着けた動作でカーペットを歩き、その後ろを両親たちはにこにこと微笑み見守っている。大きな扉の前まで案内されると、リリアンは大きく息を吸った。
「緊張してるの?」
「少しだけよ。」
「僕もね、すごく緊張してるけど、リリアンがいるから安心してるんだ。」
そんなことを言われたら喜んでしまう。なんてヒジリはいい子なんだろうか、こんな優しい子は私が守って見せるんだから。重い扉があく音がする、溢れ出る和やかな音楽とにぎやかな室内、きらきらと輝く照明にたくさんの料理とたくさんの人。別の意味でも緊張している。なんせ、リリアンもヒジリにつきっきりであまりパーティーやお茶会に出席したことがないからだ。身についてはいるが、それが今日はお披露目の日。とうとう来てしまった今日の運命を私は抗う。
「リリアン・グーゲル様とヒジリ・マユズミ様です。」
ドアマンが大きな声を会場中に響かせた。
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