5 / 6
1話 運命
1-4
しおりを挟む
辺りが騒めく。ヒジリは少しだけ視線の多さに肩を窄ませたがリリアンの後ろ姿を見るとほっと肩を撫で下ろした。堂々と背を向けて歩く彼女の背中を見ていると自然と肩の力が抜けていく。何を怖がる必要がある、この服も所作もこの日の為にと選び頑張ってきたではないか、ヒジリは柔らかい笑みを思わず浮かべてしまう。それは酷く愛らしく、ヒジリが持つ魅力を充分に発揮した。一目見ればとくとくと心臓が高鳴り、惚れさせてしまう。
リリアンは、後ろでヒジリがそんな顔をしているとは知らず、皇子は何処にいるのかと周りを見回していた。既に目をつけられている事も知らないで、あまりにも注目を浴びてしまったのだ。
「リリアン嬢!」
そんな彼女を一番最初に呼びかけたのはお茶会で何度か会話をしたことのある子爵令嬢、ルルーだった。リリアンの知識の中では名前だけ出てくる存在の脇役も脇役だが、ルルーは頬を赤らめてちらちらとリリアンの後ろに視線を見やる。
「お久しぶりでございます!後ろの男性はリリアン嬢のご友人ですか?」
「ああ、なるほど…。」
思わずそんな言葉が漏れたのは、ルルーがヒジリに興味を持っているようだったからだ。確か原作のヒジリは誰にも話しかけらない壁の花と化していたわけだが、今考えてみれば皇子に目を付けられるほどの愛らしさを持つヒジリを人が遠巻きにするわけがないのだ。きっと好奇な目でヒジリを見ていた筈。美しいものほど近寄りがたいと思ってしまうのは人の本能というもの、皇子にさえ興味を持たれなければヒジリはたくさんの人から話しかけられ本来のデビュタントの本質である貴族同士での交流ができたのだろう。
「彼はマユズミ家の1人息子、ヒジリ様ですルルー嬢。わたしは小さい頃から一緒にいたので幼馴染の様な関係なんです。今日も初めての社交界にヒジリは緊張していて…もしよろしければ話友達にでもなってくださいませんか?」
「ええもちろんですわ!」
鼻息荒く顔を近付けてくるルルーの勢いに少し気押されながら、リリアンは笑みを浮かべていた。ヒジリの周りには次第に人が増え、特に令嬢たちがヒジリに「可愛らしい方」と近寄り流石この世界のヒロインだと感銘も受けた。それにしても困り顔で辿々しく会話をする姿は彼の努力が垣間見える。元のヒジリはかなりの口下手だ、お喋りも家族と数名の親しい使用人としかした事がなくリリアンが介入した事でそれらは少し改善されていた様だった。令嬢たちの勢いに負けそうではあるが、これも社交界、しかもヒジリの美貌なら仕方ない慣れていくしかないとリリアンは心を鬼にした。
大きな問題は皇子だからである。未だリリアンは皇子を見つけられずにいた。作中では誰よりも目を惹く見た目をしていたと書かれていた癖に、一体何処に………。
「少し顔がおんなみてーなだけじゃないか。」
「チヤホヤされてちょーしとか乗ってるんじゃない?」
耳に入ってきたそんな会話に思わず拳を握った。
ヒジリに手出ししようものならわたしが…!と息巻いていたがリリアンは思わず顔が緩む。それが次推しの双子。ラシエルとクラリルだったからだ。
原作でも皇子に気に入られてるからってちょっかいをかける事が多い彼らだが、皇子の執着に気付くとヒジリに次第に寄り添う様になりヒジリの心の拠り所になる。ただそんな2人も呆気なくレオンというヤンデレ皇子に殺される。それでもヒジリを不器用にも大切に思い身を挺して庇う姿は非常に良い三角関係だったのだ。
デビュタントにも参加していたのか、それは知らなかったとじっと見ていれば視線が合う。あれはどっちがラシエルでどっちがクラリルだろうか。どちらも見目がそっくりだから遠目では判別が付かない。幼少期は本当にそっくりだったと書かれていた過去の回想を思い出して、それが未来ではラシエルが皇室騎士に、クラリルが次期当主になるのだと思うと成長後の麗しい彼らの成長に思わずにやる。
確か、ラシエルは短髪で健康的に焼けた肌と滴る汗が似合うオラオラ系イケメンに成長し、クラリルは長髪で何処か神秘的な清楚さを感じさせる清楚イケメンに成長する。もしかしてこのデビュタントで接点が出来れば推し活……いやいや、ヒジリの幸せに繋がれるのではないだろうか。
淡い期待を胸にずかずかと彼らに近付くとラシエルとクラリルはまさか話しかけられると思っていなかったのかぎょっとしている。
「それではお2人がわたしの大切な幼馴染を助けてはくださいませんか?初めての社交の場で囲まれて困っている様なんですの。」
リリアンは、後ろでヒジリがそんな顔をしているとは知らず、皇子は何処にいるのかと周りを見回していた。既に目をつけられている事も知らないで、あまりにも注目を浴びてしまったのだ。
「リリアン嬢!」
そんな彼女を一番最初に呼びかけたのはお茶会で何度か会話をしたことのある子爵令嬢、ルルーだった。リリアンの知識の中では名前だけ出てくる存在の脇役も脇役だが、ルルーは頬を赤らめてちらちらとリリアンの後ろに視線を見やる。
「お久しぶりでございます!後ろの男性はリリアン嬢のご友人ですか?」
「ああ、なるほど…。」
思わずそんな言葉が漏れたのは、ルルーがヒジリに興味を持っているようだったからだ。確か原作のヒジリは誰にも話しかけらない壁の花と化していたわけだが、今考えてみれば皇子に目を付けられるほどの愛らしさを持つヒジリを人が遠巻きにするわけがないのだ。きっと好奇な目でヒジリを見ていた筈。美しいものほど近寄りがたいと思ってしまうのは人の本能というもの、皇子にさえ興味を持たれなければヒジリはたくさんの人から話しかけられ本来のデビュタントの本質である貴族同士での交流ができたのだろう。
「彼はマユズミ家の1人息子、ヒジリ様ですルルー嬢。わたしは小さい頃から一緒にいたので幼馴染の様な関係なんです。今日も初めての社交界にヒジリは緊張していて…もしよろしければ話友達にでもなってくださいませんか?」
「ええもちろんですわ!」
鼻息荒く顔を近付けてくるルルーの勢いに少し気押されながら、リリアンは笑みを浮かべていた。ヒジリの周りには次第に人が増え、特に令嬢たちがヒジリに「可愛らしい方」と近寄り流石この世界のヒロインだと感銘も受けた。それにしても困り顔で辿々しく会話をする姿は彼の努力が垣間見える。元のヒジリはかなりの口下手だ、お喋りも家族と数名の親しい使用人としかした事がなくリリアンが介入した事でそれらは少し改善されていた様だった。令嬢たちの勢いに負けそうではあるが、これも社交界、しかもヒジリの美貌なら仕方ない慣れていくしかないとリリアンは心を鬼にした。
大きな問題は皇子だからである。未だリリアンは皇子を見つけられずにいた。作中では誰よりも目を惹く見た目をしていたと書かれていた癖に、一体何処に………。
「少し顔がおんなみてーなだけじゃないか。」
「チヤホヤされてちょーしとか乗ってるんじゃない?」
耳に入ってきたそんな会話に思わず拳を握った。
ヒジリに手出ししようものならわたしが…!と息巻いていたがリリアンは思わず顔が緩む。それが次推しの双子。ラシエルとクラリルだったからだ。
原作でも皇子に気に入られてるからってちょっかいをかける事が多い彼らだが、皇子の執着に気付くとヒジリに次第に寄り添う様になりヒジリの心の拠り所になる。ただそんな2人も呆気なくレオンというヤンデレ皇子に殺される。それでもヒジリを不器用にも大切に思い身を挺して庇う姿は非常に良い三角関係だったのだ。
デビュタントにも参加していたのか、それは知らなかったとじっと見ていれば視線が合う。あれはどっちがラシエルでどっちがクラリルだろうか。どちらも見目がそっくりだから遠目では判別が付かない。幼少期は本当にそっくりだったと書かれていた過去の回想を思い出して、それが未来ではラシエルが皇室騎士に、クラリルが次期当主になるのだと思うと成長後の麗しい彼らの成長に思わずにやる。
確か、ラシエルは短髪で健康的に焼けた肌と滴る汗が似合うオラオラ系イケメンに成長し、クラリルは長髪で何処か神秘的な清楚さを感じさせる清楚イケメンに成長する。もしかしてこのデビュタントで接点が出来れば推し活……いやいや、ヒジリの幸せに繋がれるのではないだろうか。
淡い期待を胸にずかずかと彼らに近付くとラシエルとクラリルはまさか話しかけられると思っていなかったのかぎょっとしている。
「それではお2人がわたしの大切な幼馴染を助けてはくださいませんか?初めての社交の場で囲まれて困っている様なんですの。」
20
あなたにおすすめの小説
ツイてない僕が魔王に拾われて、なぜか溺愛されています
うんとこどっこいしょ
BL
とにかく運が悪い青年アルト。
ある日、魔法使いだと勘違いされて勇者パーティーに連れていかれ、気づけば魔王城へ。
しかし戦いはあっさり勇者側の敗北。
逃げ遅れたアルトは、最恐の魔王セルディアと対面してしまう。
殺される──と思った瞬間、魔王はなぜかアルトを気に入り、
「暇つぶしに飼うことにした」
と宣言。
首輪までつけられ、魔王城で暮らすことに!?
魔獣の世話、城の仕事、そしてなぜか魔王にやたら甘やかされる日々。
不幸体質の青年と、魔王セルディアとの奇妙な同居生活が始まる──!
周りが幼馴染をヤンデレという(どこが?)
ヨミ
BL
幼馴染 隙杉 天利 (すきすぎ あまり)はヤンデレだが主人公 花畑 水華(はなばた すいか)は全く気づかない所か溺愛されていることにも気付かずに
ただ友達だとしか思われていないと思い込んで悩んでいる超天然鈍感男子
天利に恋愛として好きになって欲しいと頑張るが全然効いていないと思っている。
可愛い(綺麗?)系男子でモテるが天利が男女問わず牽制してるためモテない所か自分が普通以下の顔だと思っている
天利は時折アピールする水華に対して好きすぎて理性の糸が切れそうになるが、なんとか保ち普段から好きすぎで悶え苦しんでいる。
水華はアピールしてるつもりでも普段の天然の部分でそれ以上のことをしているので何しても天然故の行動だと思われてる。
イケメンで物凄くモテるが水華に初めては全て捧げると内心勝手に誓っているが水華としかやりたいと思わないので、どんなに迫られようと見向きもしない、少し女嫌いで女子や興味、どうでもいい人物に対してはすごく冷たい、水華命の水華LOVEで水華のお願いなら何でも叶えようとする
好きになって貰えるよう努力すると同時に好き好きアピールしているが気づかれず何年も続けている内に気づくとヤンデレとかしていた
自分でもヤンデレだと気づいているが治すつもりは微塵も無い
そんな2人の両片思い、もう付き合ってんじゃないのと思うような、じれ焦れイチャラブな恋物語
魔王様の執着から逃れたいっ!
クズねこ
BL
「孤独をわかってくれるのは君だけなんだ、死ぬまで一緒にいようね」
魔王様に執着されて俺の普通の生活は終わりを迎えた。いつからこの魔王城にいるかわからない。ずっと外に出させてもらってないんだよね
俺がいれば魔王様は安心して楽しく生活が送れる。俺さえ我慢すれば大丈夫なんだ‥‥‥でも、自由になりたい
魔王様に縛られず、また自由な生活がしたい。
他の人と話すだけでその人は罰を与えられ、生活も制限される。そんな生活は苦しい。心が壊れそう
だから、心が壊れてしまう前に逃げ出さなくてはいけないの
でも、最近思うんだよね。魔王様のことあんまり考えてなかったって。
あの頃は、魔王様から逃げ出すことしか考えてなかった。
ずっと、執着されて辛かったのは本当だけど、もう少し魔王様のこと考えられたんじゃないかな?
はじめは、魔王様の愛を受け入れられず苦しんでいたユキ。自由を求めてある人の家にお世話になります。
魔王様と離れて自由を手に入れたユキは魔王様のことを思い返し、もう少し魔王様の気持ちをわかってあげればよかったかな? と言う気持ちが湧いてきます。
次に魔王様に会った時、ユキは魔王様の愛を受け入れるのでしょうか?
それとも受け入れずに他の人のところへ行ってしまうのでしょうか?
三角関係が繰り広げる執着BLストーリーをぜひ、お楽しみください。
誰と一緒になって欲しい など思ってくださりましたら、感想で待ってますっ
『面白い』『好きっ』と、思われましたら、♡やお気に入り登録をしていただけると嬉しいですっ
第一章 魔王様の執着から逃れたいっ 連載中❗️
第二章 自由を求めてお世話になりますっ
第三章 魔王様に見つかりますっ
第四章 ハッピーエンドを目指しますっ
週一更新! 日曜日に更新しますっ!
隠れヤンデレは自制しながら、鈍感幼なじみを溺愛する
知世
BL
大輝は悩んでいた。
完璧な幼なじみ―聖にとって、自分の存在は負担なんじゃないか。
自分に優しい…むしろ甘い聖は、俺のせいで、色んなことを我慢しているのでは?
自分は聖の邪魔なのでは?
ネガティブな思考に陥った大輝は、ある日、決断する。
幼なじみ離れをしよう、と。
一方で、聖もまた、悩んでいた。
彼は狂おしいまでの愛情を抑え込み、大輝の隣にいる。
自制しがたい恋情を、暴走してしまいそうな心身を、理性でひたすら耐えていた。
心から愛する人を、大切にしたい、慈しみたい、その一心で。
大輝が望むなら、ずっと親友でいるよ。頼りになって、甘えられる、そんな幼なじみのままでいい。
だから、せめて、隣にいたい。一生。死ぬまで共にいよう、大輝。
それが叶わないなら、俺は…。俺は、大輝の望む、幼なじみで親友の聖、ではいられなくなるかもしれない。
小説未満、小ネタ以上、な短編です(スランプの時、思い付いたので書きました)
受けと攻め、交互に視点が変わります。
受けは現在、攻めは過去から現在の話です。
拙い文章ですが、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
宜しくお願い致します。
従者は知らない間に外堀を埋められていた
SEKISUI
BL
新作ゲーム胸にルンルン気分で家に帰る途中事故にあってそのゲームの中転生してしまったOL
転生先は悪役令息の従者でした
でも内容は宣伝で流れたプロモーション程度しか知りません
だから知らんけど精神で人生歩みます
泣き虫だったはずの幼なじみが再会したら僕を守るために完璧超人になっていた話。
ネギマ
BL
気弱で泣き虫な高校生、日比野千明は、昔からいじめられっ子体質だった。
高校生になればマシになるかと期待したが状況は変わらず、クラスメイトから雑用を押し付けられる毎日を送っていた。
そんなある日、いつものように雑用を押し付けられそうになっている千明を助けたのは、学校中が恐れる“完璧超人”の男子生徒、山吹史郎だった。
文武両道、眉目秀麗、近寄りがたい雰囲気を纏う一匹狼の生徒だったが、実は二人は、幼い頃に離れ離れになった幼なじみだった――。
【完結】みにくい勇者の子
バナナ男さん
BL
ある田舎町で農夫をしている平凡なおっさんである< ムギ >は、嫁なし!金なし!の寂しい生活を送っていた。 そんなある日、【 光の勇者様 】と呼ばれる英雄が、村の領主様に突然就任する事が決まり、村人達は総出で歓迎の準備をする事に。 初めて会うはずの光の勇者様。 しかし、何故かムギと目が合った瞬間、突然の暴挙に……? 光の勇者様 ✕ 農夫おっさんのムギです。 攻めはヤンデレ、暴走ロケット、意味不明。 受けは不憫受け(?)だと思いますので、ご注意下さい。ノリよくサクッと終わりますm(__)m 頭空っぽにして読んで頂けると嬉しいです。
ヤリチン伯爵令息は年下わんこに囚われ首輪をつけられる
桃瀬さら
BL
「僕のモノになってください」
首輪を持った少年はレオンに首輪をつけた。
レオンは人に誇れるような人生を送ってはこなかった。だからといって、誰かに狙われるようないわれもない。
ストーカーに悩まされていたレある日、ローブを着た不審な人物に出会う。
逃げるローブの人物を追いかけていると、レオンは気絶させられ誘拐されてしまう。
マルセルと名乗った少年はレオンを閉じ込め、痛めつけるでもなくただ日々を過ごすだけ。
そんな毎日にいつしかレオンは安らぎを覚え、純粋なマルセルに毒されていく。
近づいては離れる猫のようなマルセル×囚われるレオン
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる