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1話 運命
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デビュタントに向けて、準備を進めるという名目でヒジリを着せ替え人形にして数時間が経過した。リリアンは自分がヒジリを人形として扱う事なんてしないと心に決めていたのに、悲しい事に、リリアンは推しを着飾る幸せを噛み締めていた。
「これも…ダメなの?」
「そうね、似合いすぎるからダメ!こんなんじゃダメよ!」
ダメと言葉だけは言っているが、実際のリリアンの表情は喜びが隠せておらずヒジリも首を傾げながら苦笑いをしていた。然し乍ら地味な服でも着こなしてしまうヒジリに意志が固まらないリリアンは何度も何度も頭を悩ませる。一体どんな格好で行かせるのが正解か、目立たないようにかつ品位を保てている程度の豪華さで、この塩梅を図る事への正解が未だ分からない。ヒジリという幼いながら溢れんばかりの美貌を持っている彼には質素なものでも十分花があるが、推しを着飾るなんて幸せな結果を見せびらかす為に少し派手にしたって構わないような……そんな葛藤を繰り返してここ数日。リリアンは毎日の様には子爵家へ訪れてデビュタントの準備を人一倍進めていた。
子爵家の中でもこんなにも熱心に準備をしている者はいない。逆にリリアンがメイドたちと盛り上がり如何に上手く着飾るかを会話するばかりだ。それを仲睦まじそうに見つめてくれるのはヒジリの両親であり、リリアンに全てをお願いしていた。家族公認の衣装係であるリリアンには幸せな未来に導く為にもとても必要で難しい議題だったが、それがこんなにも幸せで良いものか。
くるり、くるりと着替える度にその愛らしさは増している様だ。リリアンがあまりの可愛さに頭痛を訴えるとヒジリはきまって「じゃあこれにしようかな」というものだから思わず反論してしまう。
「まだ、まだよ!!」
「でも…もう決めないと…。」
デビュタントはとうとう明日である。早くしなければいけないのは承知の事実だが中々決められない。やっぱり、と最後にリリアンの視線の中に入るのは、原作でもヒジリがデビュタントで着た衣装。白いカッターシャツに薄茶色の柔らかな色合いであしらわれたスーツ。まるでヒジリを花弁として服はそれを飾る花瓶。シンプルなスーツでもヒジリにはとても似合っている。だから迷っていたのだ、リリアンの求める質素だが華のある衣装、それは原作の衣装が一番だったから。どうにかこうにか出来ないかと葛藤しても、最終的に目に入るのはそれで、リリアンは涙ぐむ。
「これしかないのかしら…。初期衣装…。」
「ふふふ、何かよくわからないけど、ぼくもこれを気に入ってるよ。お父さんもお母さんも一番最初に選んでくれたものだからね。」
そう。ヒジリはリリアンの言う通りに色々と付き合ってくれてはいるが、本来であればこの服を只着たいのだろう。両親が決めてくれたヒジリの為だけのオーダーメイド。そんな愛情こもった服にリリアンの選んだ服が選ばれるわけがないのだ。それでも彼は優しいから、リリアンがこれを着てと押し付ければきっとそれを着てくれるのだろう。それが…原作のヒジリがよくしていた自己犠牲の一部であったから。
かくいうリリアンも初期衣装を着る推しというのはとても嬉しいことではある。目の前にあの服を着たヒジリがいて、笑ってくれるだけでファンは卒倒ものだ。この輝く原石……いや麗しの花をデビュタントで気づいた皇子にはまぁ少しだけ認めてやってもいいとまで思っている。ヒジリは原作でますます美しく、そして可憐に育ちその男性でありながらもどこか哀愁漂う品目秀麗さは皇子がヒジリをそう染めたといっても過言ではないのだ。
ヒジリを幸せにする。それがリリアンの目指すハッピーエンド。だからそんな皇子も元には連れていけないが、この何とも言えない気持ちは何だろうか。デビュタントに出ちゃいけないと分かりつつも回避することができない事実と、色んな衣装を見ても原作のが一番いいと思ってしまう事実。原作の通りに事が運んでいるようで胸騒ぎがするのだ。
「ヒジリのことは私が守るからね。」
「ありがとう。リリアンは本当に心強いね。」
あぁ、笑顔も守りたい。ヒジリは幸せになるために生きてほしいから。
「これも…ダメなの?」
「そうね、似合いすぎるからダメ!こんなんじゃダメよ!」
ダメと言葉だけは言っているが、実際のリリアンの表情は喜びが隠せておらずヒジリも首を傾げながら苦笑いをしていた。然し乍ら地味な服でも着こなしてしまうヒジリに意志が固まらないリリアンは何度も何度も頭を悩ませる。一体どんな格好で行かせるのが正解か、目立たないようにかつ品位を保てている程度の豪華さで、この塩梅を図る事への正解が未だ分からない。ヒジリという幼いながら溢れんばかりの美貌を持っている彼には質素なものでも十分花があるが、推しを着飾るなんて幸せな結果を見せびらかす為に少し派手にしたって構わないような……そんな葛藤を繰り返してここ数日。リリアンは毎日の様には子爵家へ訪れてデビュタントの準備を人一倍進めていた。
子爵家の中でもこんなにも熱心に準備をしている者はいない。逆にリリアンがメイドたちと盛り上がり如何に上手く着飾るかを会話するばかりだ。それを仲睦まじそうに見つめてくれるのはヒジリの両親であり、リリアンに全てをお願いしていた。家族公認の衣装係であるリリアンには幸せな未来に導く為にもとても必要で難しい議題だったが、それがこんなにも幸せで良いものか。
くるり、くるりと着替える度にその愛らしさは増している様だ。リリアンがあまりの可愛さに頭痛を訴えるとヒジリはきまって「じゃあこれにしようかな」というものだから思わず反論してしまう。
「まだ、まだよ!!」
「でも…もう決めないと…。」
デビュタントはとうとう明日である。早くしなければいけないのは承知の事実だが中々決められない。やっぱり、と最後にリリアンの視線の中に入るのは、原作でもヒジリがデビュタントで着た衣装。白いカッターシャツに薄茶色の柔らかな色合いであしらわれたスーツ。まるでヒジリを花弁として服はそれを飾る花瓶。シンプルなスーツでもヒジリにはとても似合っている。だから迷っていたのだ、リリアンの求める質素だが華のある衣装、それは原作の衣装が一番だったから。どうにかこうにか出来ないかと葛藤しても、最終的に目に入るのはそれで、リリアンは涙ぐむ。
「これしかないのかしら…。初期衣装…。」
「ふふふ、何かよくわからないけど、ぼくもこれを気に入ってるよ。お父さんもお母さんも一番最初に選んでくれたものだからね。」
そう。ヒジリはリリアンの言う通りに色々と付き合ってくれてはいるが、本来であればこの服を只着たいのだろう。両親が決めてくれたヒジリの為だけのオーダーメイド。そんな愛情こもった服にリリアンの選んだ服が選ばれるわけがないのだ。それでも彼は優しいから、リリアンがこれを着てと押し付ければきっとそれを着てくれるのだろう。それが…原作のヒジリがよくしていた自己犠牲の一部であったから。
かくいうリリアンも初期衣装を着る推しというのはとても嬉しいことではある。目の前にあの服を着たヒジリがいて、笑ってくれるだけでファンは卒倒ものだ。この輝く原石……いや麗しの花をデビュタントで気づいた皇子にはまぁ少しだけ認めてやってもいいとまで思っている。ヒジリは原作でますます美しく、そして可憐に育ちその男性でありながらもどこか哀愁漂う品目秀麗さは皇子がヒジリをそう染めたといっても過言ではないのだ。
ヒジリを幸せにする。それがリリアンの目指すハッピーエンド。だからそんな皇子も元には連れていけないが、この何とも言えない気持ちは何だろうか。デビュタントに出ちゃいけないと分かりつつも回避することができない事実と、色んな衣装を見ても原作のが一番いいと思ってしまう事実。原作の通りに事が運んでいるようで胸騒ぎがするのだ。
「ヒジリのことは私が守るからね。」
「ありがとう。リリアンは本当に心強いね。」
あぁ、笑顔も守りたい。ヒジリは幸せになるために生きてほしいから。
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