Winter perdu(ウインターペルデュ)

しまかぜ

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第1章 出会い

1-2 冬との出会い

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「寒っ」
船の中は暖房が効いていたせいか、外に出ると寒かった。
周りを見渡す…。
「さて」
おじいちゃんの家を目指す。
小さい島だけど、立地が悪いと言うべきか何と言うか、
複雑な道のりだった。
地図がなければたどり着けないほどに。
「いらっしゃい、真琴」
「こんにちは、おじいちゃん」
祖父の家には初めて来る。
諸々の理由があって、会うのは久しぶりだ。
「おばあちゃんは、今日も元気?」
「ああ、いつも元気じゃよ」
俺はおばあちゃんに会ったことがない。
物心が着く前に、事故で死んでしまったそうだ。
部屋に案内されると、一旦荷物を整理して、夜ご飯を食べた。その日は休んだ。

翌日…
「せっかくだし、島を散歩してくるがいいよ。」
「うん。」
家にいてもやることがないので外に出てみることにした。
(そもそも、俺はなんで来たんだっけか?)
(そもそも、目的なんてあったのか?)
高校に無事に入学したはいいものの、馴染めず、気分転換にここに来たんだっけか。
馴染めないのは慣れてることだ。
昔からそうだ。
でもやっぱ、
「少し寂しいかもな…。」
なんて、そんなことは無いはずだ。今更。
俺は感情を捨てたのだから…。

考えてる間に森に着いた。
「入ってみるべきだろうか。」
少し危険な感じはしたが、入ってみることにした。
仮に迷っても、怪我をしたとしても、誰も心配などしないだろう。
しばらく進むと、広いところに出た。
「なんだ?ここは」
そこに広がっていたのは、
「花畑?」
こんな季節にも、花は咲くのだろうか
何故か俺は見とれていた。
言葉では表せないような美しさだ。
「ポエムでも考えてみようか」
「冬の森の中に…お花があって…」
止めた。センスがまるで無い。
「ぷっ」
「!?」
どこからが笑い声が聞こえた。
よく見ると、人がいた。小柄で、白い長い髪の女の子だった。
「聞いてたんですか…」
「ごめんなさい、夢中だったので…。」
「いいですよ、でも、センスがないので」
「そうですか?面白かったですよ?」
悪気は無いのだろうが、笑われると少し悲しくなる。
「あなたはここで何をしているんですか?」
尋ねてみる。
「……。」
答えたくないのだろうか、返事はない。
しばらく沈黙が続く。
「あなた、名前は?」
尋ねられた。
「華氷 真琴です。」
「いい名前だね。あたしは雪原 冬。よろしくね。」
「おねがいします。」
「真琴君は、どうしてここに来たの?」
……。
言うべきだろうか?初対面のしかも女の子に
感情を探してる?頭がおかしい。
いや、ポエムの時点で結構おかしいか。
不思議にこの子には話していい気がした。なぜだか分からない。直感ってやつだ。
「感情を、探してるんです。」
「へ?」
当たり前だ。
「やっぱおもしろいね!真琴くんって」
それはどういう意味だろう。頭がおかしいという意味だろうか?
「そりゃ、どうも。」
「感情って嬉しいとか、楽しいとかも感じないの?」
案外興味があるようだ。本当に不思議な子だ。でも何故だろうか、嫌な気はしない。
「感情といっても、多少の喜怒哀楽はありますよ、
ただ、友達と遊ぶ喜びとか、笑顔で話すとか、そういうことは、忘れました。」
捨てたという方が正しいだろうか。
「大変だねぇ」
グイグイ来る。本当に初対面なのかというレベルで。
「なら、あたしが見つけてあげる。」
「はい?」
困惑した。何を言っているんだこの子は?
「あたしが、真琴くんのなくした感情を探してあげる!」
意味がわからない
「なんで?初対面でしょ?」
「なんでだろうね。不思議な感じ。」
本当にだ。
「それにね、あたしも探しているの」
「感情ですか?」
「ううん。桜。」
意味がわからなかった。
桜を探す? 春になったら咲くのではないのか?
詮索すべきか…。いや、聞かないでおこう。
なにか理由があるのかもしれない。
「だから、ね?一緒に探そーよ!」
普段なら、断っていただろう。
でも、この島に来た目的は気分転換。
つまり、せめて今だけは、この冬休みだけは、忘れてもいいのだろうか?
「うん。でも、俺年明けて少ししたら帰るぞ。」
「そっか、よそから来たんだったね。だったら、帰るまでに探そー!!」
いつのまにか、彼女のペースにハマっていた。
本当に不思議な子だ。

こうして、俺と冬はそれぞれ失ったもの?というべきか、とりあえず、見つけたいものを探すことにした。

ん? そういや俺、彼女によそから来たこと言ったっけか?

まあいいか、目的もなく来たんだ。目的が出たことを喜ぶべきか。
その時の俺の顔は、ほんの少しだけ、笑っていたのかもしれない。

この日から、俺と冬との、冒険が始まった。
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