Winter perdu(ウインターペルデュ)

しまかぜ

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第2章 欠けていたモノ

2-5 欠けていたモノ

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そうか。
思い出した。
思い出したくなかったものを、思い出した。
いや、忘れていたことだと、自分に思い込ませていた。
過去の呪縛に囚われていた。
 

話を終えると冬は言った。
「いい人、なんだね」
予想外な反応だった。
責められると思っていた。
お前が何も言わないでおけばと。
少なくとも俺はそう思っていた。
友情が壊れた日、俺が男の子の後さえつけていなければ。
あの現場に居なければ、なにか変わったのかもしれない。
でも、それでは気づかなかった。
友達という言葉が、いかに薄っぺらいか。
ある意味良かったのだろうか。
そんなわけないだろう。
そのせいで、彼女は死んだんだ。
俺が好きだったあの子は。
5年前の、冬に。
原田 冬華は、死んだんだ。
それが帰ってくることはもうない。
もう顔も覚えていない。思い出したくもない。
彼女に会いたくなってしまった。それはもう出来ない。

今年の年越しは、別の場所でやろうか。両親は言った。
高校受験が上手くいった。
行きたくはなかったが、親が将来を考えて行かせてくれた。
両親は俺を心配した。
中学でもそうだった。
俺は誰とも話さなかった。
その時の冬は、年越しは覚えていないが、
また、こうしているうちに、時間だけが進んでいくんだろうと思っていた。
こうして、何もせずまま、俺は死んでいくんだろうと。
惨めだ。でもそれがお似合いだ。
彼女に会えたらなんて言おう。
いや、俺が行くのは地獄か。
こんなことを毎年考えていた。
高校に入っても同じだった。
結局環境が変わっても、自分が変わらなければ何も変わらない。
見かねた両親は言った。
せっかくだし、じいじの所へ行っておいでと。
鬱陶しかったのか、それともそこに何かあるのか。
環境が変わっても自分が変わらなければ意味は無い。
知っていたはずだ。
目を背けてきたんだ。
島に来た当初も、その気持ちだった。
でも、
島の仲間と出会って、冬と出会って、何かが変わった。
仲間もいいものだと思った。
仲間なんて言っていいのだろうか。
まだ分からない。
完全に信用している訳でもない。
でも彼らは、奴らとは違う。
長年一人でいたからわかる。
彼らは本気で友達をしている。
これが本当の友達というものなのだろうか。
対価を顧みず、喧嘩はするが、それでもそいつらのことを忘れられない。
仲直りをして、さらに仲良くなって……。

羨ましかった。
そうか。
俺が求めていたのはこういうものだったのか。
気づいた。
なら俺は、仲間を助けるんだ。
今しかない。
変わるなら、今しかない。
そう何度も自分に言い聞かせた。
そして、
「冬。頑張ろうぜ!」
「うんっ!」
なぜだろう、
忘れていた、
昔の感情が
欠けていたモノが
少しだけ蘇った気がした。

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