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良きライバル

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 鶴橋。千日前は、この地区で大阪一美味しいお好み焼き屋を営んでいた。御堂筋が、
「この店は、俺にも敵わないくらい、旨いお好み焼きが食えるんやで。」
と、堺筋たちを連れて、千日前の店に足を運んだ。話を聞いていた千日前は、
「御堂筋んとこのも、旨いやないか。」
と、御堂筋に敵わないような顔で話した。
「良いライバルなんやな。」
中央が、微笑ましく答えた。

 その頃、ワニ軍団は、既に新しい動きをみせていた。
「ジェファー王子。作戦は、どうなっているんだ?」
ナイル王は、ジェファー王子に作戦を急がせた。
「ご心配なく。既に、クレーマー王が、街へ向かっております。」
「しかし、既に二回も失敗しているでないか!」
ナイル王は、作戦の失敗が続いたことに、苛立ちを覚えていた。
「今度の作戦が失敗した場合は、ただでは済まされないぞ。」
ナイル王の言葉に、ジェファー王子は大きな危機感を覚えた。

 しかし、作戦は既に動いていた。クレーマー王は、様々な売店に入り、理解不能なクレームをつけて、店員の怒りを煽った。そして、怒りのエネルギーは、少しずつ膨らんでいた。
 作戦の刃は、千日前のお好み焼き屋へも向けられた。クレーマー王は、千日前の店に入り、
「豚玉。ソース多めに。」
と注文した。千日前が、言われた通りのメニューを出すと、
「何だ?ソースはいらないと言ったはずだぞ!」
と、クレーマー王は、早速怒りを煽るようなクレームをつけた。しかし、千日前は、
「申し訳ありません。すぐに、作り直します。」
と、ソース無しで作り直した。その様子は、来ていた御堂筋たちも見ていた。そして、クレーマー王に再び提供すると、
「違う!海老玉を注文したはずだぞ!」
と、また注文していないメニューを言った。
「あんた、頭おかしいんちゃうか!?」
怒ったのは御堂筋の方だった。しかし、
「申し訳ありません。作り直します。差し支えなければ、そちらの豚玉もお召し上がりください。」
と、千日前は、結果二つのお好み焼きを提供する約束をした。
「お代は、お安い豚玉のみの額で構いませんので。」
「待て!千日前、いくらなんでもお人好しやで!」
と、御堂筋が遮ると、
「俺は、お客様が、満足してもらうために作っとるんや。初めてのお客様やし。」
と、千日前は、怒ることなく話した。しかし、予想を裏切る結果になったクレーマー王は、手段がなくなり困っていた。

 そして、千日前を怒らせるため、魔人の姿になって、最後の手段を使った。
「不味かったから、この店を爆破させてもらう!」
「ワニ軍団!みんな、いくぞ!」
御堂筋たちは、店内の客を避難させ、ナニワレンジャーに変身した。
 千日前の誘導で、店内の客は、無事に避難した。そして、様子を見ていた天王寺長官は、千日前の前に現れた。
「君も、力を貸してくれ。君には、誰にも負けない優しい心を持っている。その心を武器に、戦うんだ!」
長官は、そう言って変身ブレスレットを渡した。
「分かりました。浪速チェンジ!」
千日前は、ブレスレットの力でセンニチマエレンジャーに変身した。

ナニワレンジャーは、クレームで集めた怒りのエネルギーで苦戦していた。その時、
「センニチマエアロー!」
センニチマエレンジャーが、弓矢でクレーマー王に応戦した。そして、遂に五人のナニワレンジャーが、ワニ軍団の前に姿をみせた。
「赤のライン!ミドウスジレンジャー!」
「緑のライン!チュウオウレンジャー!」
「青のライン!ヨツバシレンジャー!」
「黄色のライン!サカイスジレンジャー!」
「桃色のライン!センニチマエレンジャー!」
「笑顔を守る、浪速魂!大阪戦隊ナニワレンジャー!」
「おのれ、戦闘兵、かかれ!」
クレーマー王は、戦闘兵にナニワレンジャーと闘わせた。しかし、ナニワレンジャーは、個人武器で戦闘兵を倒していった。
「みんな、五人揃えば、武器が合体できる!止めを刺すんだ!」
長官から、ナニワレンジャーに指示が入った。
「天王寺さん、分かった。合体!浪速バズーカ!」
それぞれの個人武器は、合体してバズーカ砲の武器となった。そして、クレーマー王は、大砲の威力で、一気に粉々になった。

 そこへ、カリブ王女が姿を現した。そして、倒れたクレーマー王に、巨大化するフラッシュを浴びせた。ナニワレンジャーは、メカに乗り込んだ。
「浪速合体!ナニワキング!」
そして、巨大ロボ・ナニワキングとなって戦いを挑んだ。
「必殺!ナニワクラッシュ!」
クレーマー王は、抵抗する余地もなく、ナニワキングの必殺剣に破れた。

 それから、五人は梅田のお好み焼き屋に移動して、御堂筋のお好み焼きを食べていた。
「今日は、千日前のお人好しが、決め手やったな!」
御堂筋が冗談交じりで言うと、
「は?誰がお人好しじゃ!?」
と、千日前は、怒って御堂筋に拳を挙げた。
「え?誰にでも優しくじゃあらへんのか?」
「お前は、お客様でなくて戦友や!」
御堂筋は、またいつものように、仲間に追いかけ回されていた。
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