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パルヴィス公爵4
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「わしの父は国王であった。強い魔力を国民のために使い、国民からとてもしたわれていた。わしの兄も強い魔力の持ち主であった」
そこでパルヴィス公爵は言葉を切った。視線がさまよう。はるか昔の記憶を思い出しているような仕草だった。
「だがわしにはこれっぽっちも魔力は備わっていなかった。父である国王はおおいに落胆した。魔力の無いわしは、自分が情けなかった。魔力を強く望んだ」
プリシラは胸がずきりと傷んだ。パルヴィス公爵もプリシラと同じだったのだ。魔力が無いという理由で、居場所がなかったのだ。
「わしは魔力を求めた。そして禁忌をおかしてしまったのだ」
「禁忌?」
「ああ。魔法石を体に移植するのだ。この魔法石は人間が魔法で作った物だ。宿主である人間に強い魔力を与えるが、やがて宿主を侵食しはじめるのだ。そして、ついには宿主である人間を喰らい尽くす」
「!。それは、つまり」
「わしはもうすぐ魔法石に侵食されて死ぬ」
「公爵さま!」
「良いのだ、プリシラ。わしが自分で選んだ道だ。わしは自分の責任を取る。だが妻を残していくのだけが心残りだ。最期はサスキアに看取ってもらいたいのだ」
公爵と夫人はとても愛し合っているようだった。プリシラはあきらめる事ができずに、抱いていたタップをベッドに乗せて頼んだ。
「タップ、お願い。公爵さまの魔法石を取り除いて?」
タップはいつになく真剣な表情で公爵の容態を確認してから言った。
『このじじぃの言う通りだ。魔法石との癒合が強すぎる。やがてじじぃは体内にうずまいている魔力が爆発して死ぬ』
「タップ!何とかできないの?!」
『ううん。一か八か無理矢理魔法石をひっぺがした後に治癒魔法をすれば、あるいは』
「それならお願い、タップ。魔法石をはがして」
『・・・。じじぃに許可を取れ。死ぬかもしれないが、それでもやるかと聞け』
プリシラはゴクリとツバを飲み込んでからうなずき、公爵に向かって言った。
「公爵さま。一つだけ、魔法石を取り出す方法があります。それはとても危険がともないます」
「・・・。つまり、失敗すれば死ぬという事だな。・・・、それも良いかもしれぬ。サスキアを呼んでくれ。妻がここに来たらやってくれ」
「それはできません」
「なぜだ?なぜ妻を呼んではいけないのだ」
「公爵さまは、奥さまがこの場にやってくれば、それで満足してしまいます。自分の事を愛する妻が看取ってくれる。それで公爵さまの願いは叶ってしまいます。これから行う事は、公爵さまが心の底から生きると願わなければ成功しません。ですから公爵さま、ここで声に出して誓ってください。必ず生きて、奥さまに会うと」
公爵は驚がくのまなざしでプリシラを見上げた。
『おい、プリシラ。もし、じじぃがこのまま死んじまったら、ばばぁに怨まれるぜ?ばばぁが来てからにしたらどうだ?』
口を挟んだのはタップの方だった。タップは不安そうにプリシラを見上げている。プリシラは覚悟の表情でタップを見た。タップは何か悟ってくれたようで、フウッとため息をついた。
そこでパルヴィス公爵は言葉を切った。視線がさまよう。はるか昔の記憶を思い出しているような仕草だった。
「だがわしにはこれっぽっちも魔力は備わっていなかった。父である国王はおおいに落胆した。魔力の無いわしは、自分が情けなかった。魔力を強く望んだ」
プリシラは胸がずきりと傷んだ。パルヴィス公爵もプリシラと同じだったのだ。魔力が無いという理由で、居場所がなかったのだ。
「わしは魔力を求めた。そして禁忌をおかしてしまったのだ」
「禁忌?」
「ああ。魔法石を体に移植するのだ。この魔法石は人間が魔法で作った物だ。宿主である人間に強い魔力を与えるが、やがて宿主を侵食しはじめるのだ。そして、ついには宿主である人間を喰らい尽くす」
「!。それは、つまり」
「わしはもうすぐ魔法石に侵食されて死ぬ」
「公爵さま!」
「良いのだ、プリシラ。わしが自分で選んだ道だ。わしは自分の責任を取る。だが妻を残していくのだけが心残りだ。最期はサスキアに看取ってもらいたいのだ」
公爵と夫人はとても愛し合っているようだった。プリシラはあきらめる事ができずに、抱いていたタップをベッドに乗せて頼んだ。
「タップ、お願い。公爵さまの魔法石を取り除いて?」
タップはいつになく真剣な表情で公爵の容態を確認してから言った。
『このじじぃの言う通りだ。魔法石との癒合が強すぎる。やがてじじぃは体内にうずまいている魔力が爆発して死ぬ』
「タップ!何とかできないの?!」
『ううん。一か八か無理矢理魔法石をひっぺがした後に治癒魔法をすれば、あるいは』
「それならお願い、タップ。魔法石をはがして」
『・・・。じじぃに許可を取れ。死ぬかもしれないが、それでもやるかと聞け』
プリシラはゴクリとツバを飲み込んでからうなずき、公爵に向かって言った。
「公爵さま。一つだけ、魔法石を取り出す方法があります。それはとても危険がともないます」
「・・・。つまり、失敗すれば死ぬという事だな。・・・、それも良いかもしれぬ。サスキアを呼んでくれ。妻がここに来たらやってくれ」
「それはできません」
「なぜだ?なぜ妻を呼んではいけないのだ」
「公爵さまは、奥さまがこの場にやってくれば、それで満足してしまいます。自分の事を愛する妻が看取ってくれる。それで公爵さまの願いは叶ってしまいます。これから行う事は、公爵さまが心の底から生きると願わなければ成功しません。ですから公爵さま、ここで声に出して誓ってください。必ず生きて、奥さまに会うと」
公爵は驚がくのまなざしでプリシラを見上げた。
『おい、プリシラ。もし、じじぃがこのまま死んじまったら、ばばぁに怨まれるぜ?ばばぁが来てからにしたらどうだ?』
口を挟んだのはタップの方だった。タップは不安そうにプリシラを見上げている。プリシラは覚悟の表情でタップを見た。タップは何か悟ってくれたようで、フウッとため息をついた。
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