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再会

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「お父さぁん!」

 ガイオが途端にキョロキョロし出した。

「エレナの声だ。ちくしょう、何で戻って来てしまったんだ」
 
 ガイオは吐き捨てるように言うが、マージはこうなるだろうなと思っていた。きっとプリシラは箱の中身がガイオの娘である事に気づいて、ガイオとマージを助けに来たのだろう。

 目の前の角から女の子が飛び出して来た。ガイオと同じ銀髪の美しい少女だ。彼女はガイオを見つけると、とびきりの笑顔になって、ガイオに抱きついた。ガイオは娘を強く抱きしめた。

「お父さん!会いたかった」
「エレナ。何で戻って来たんだ」
「プリシラがね、スキーラ子爵を説得して、お父さんの首輪を外してくれるっていってくれたの」
「プリシラ?」
「配達屋の女の人」
「何で配達屋が貴族を説得するんだよ」
「プリシラは公爵令嬢なんだって」
「はぁ?あのボロい服着てた女が?」

 そういえばそうだった。プリシラは以前と変わらずマージ運送会社で寝起きして、マージの質素な手料理を美味しいと食べてくれるが、つい最近パルヴィス公爵家の養女になったのだ。

 公爵令嬢のプリシラならばこの現状を何とかしてくれるかもしれない。バンッと大きな音と共に、通路の角から男が吹っ飛んで来た。その後から小さな人物がかけて来る。

「トビー!」

 マージは嬉しさのあまり、大声で甥の名前を呼んだ。マージに気づいたトビーが駆け寄ってくる。トビーがマージに飛びついてきた。マージは身体全身が痛かったが、トビーを強く抱きしめた。

「おばちゃん!その顔どうしたんだ?!誰にやられた!そいつぶっ殺してやる!」
「トビー、悪い言葉を使うんじゃないよ。私は大丈夫だから」
「だって、おばちゃん顔が腫れてるじゃねぇか!」

 トビーは目に涙を浮かべながら怒っていた。マージの側に、ガイオの娘エレナが近寄って来た。

「マージさん、ごめんなさい。私たちのせいでケガまでさせてしまって」

 エレナはトビーに断って、マージの手を取り、透き通るような声で歌い出した。

 傷ついた者、鳥の翼でおおうように、癒しのみ手で包みたまえ。

 不思議な事に、マージの身体が輝きはじめた。腫れてズキズキと痛かった頬も、身体中の打撲の痛みも、潮が引くように消えてしまった。

「すごい、これがエレナの魔法なの?」

 マージの驚きにエレナははにかんだ笑顔を浮かべた。

 

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