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作戦

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 エスメラルダは空間魔法で一旦城下町の宿屋に帰った。この宿屋の一室は、エスメラルダが一年借り切っているので、エスメラルダの自宅といってもいい場所だ。

 だがエスメラルダの私物は何も無い。エスメラルダの衣類や生活用品は隠しの魔法で保存する事ができるので、物を部屋に置いておく必要が無いのだ。

 エスメラルダは自身の身体が汗くさい事に顔をしかめた。日の当たる場所にずっといた後、慣れない力仕事をしたためだ。

 普段着にしている黒いドレスを脱ぐと、エスメラルダは水魔法でドレスを洗った。次に風魔法で温かい風を起こし、ドレスを乾かした。ドレスをハンガーにかけると、今度は自分の番だ。

 エスメラルダは風呂場に入ると、水魔法で湯を発生させた。ペチコートも下着もすべて脱いでから湯船に浸かる。ホウッとため息が出た。

 身体が温まってくると、身体中の疲労感が抜けて、意識がはっきりしてくる。

 ドウマ国の中に入った時に感じた住人の人数はおよそ三十人ほど。そして粗末な石造りの城にはドウマ国を治める国王がいる。

 ドウマ国の住人一人一人ならばエスメラルダの敵ではないが、全員から魔法攻撃されてはエスメラルダだとて手に余る。

 エスメラルダはドウマ国に潜入して、ある事に気づいた。ドウマ国の周りには強い結界を張っているのだ。おそらく侵入者の魔力を制限する結界。

 ドウマ国に入った時、エスメラルダは変身魔法という比較的魔力量を必要としない魔力だけ使っていたので、変身魔法が解除されずに済んだが、魔力の弱い者が変身魔法を使用してドウマ国内に入れば、瞬時に魔法が解除されてしまうだろう。

 エスメラルダがドウマ国に入るためには、魔力制御を回避する作戦が必要だった。エスメラルダは湯につかりながら目をつむった。

 エスメラルダはその次の日もドウマ国の偵察に行った。空間魔法を使えばすぐにドウマ国に行く事ができる。

 エスメラルダは時間を決めて定期的にドウマ国を調べた。ドウマ国に入れるのは、二週間に一回の物資を運んでいる馬車のみ。

 物資の中には食材や酒などの嗜好品も含まれている。物資は一旦城に保管され、定期的に国民に均等に分配されている。

 ではこの国民たちは一体何のためにいるのか。それは近隣諸国にある町や村への定期的な攻撃だ。

 魔法で襲撃された町人や村人は、仕方なく金品を渡すしかなかった。街では金持ちの屋敷が狙われ、攻撃を止める代わりに金品を要求していた。

 ドウマ国を偵察していて、エスメラルダは怒りが湧いて仕方なかった。魔法使いとは人より優れた存在だ。ならば魔法使いは困っている人間を助けるのが本来の姿だ。

 魔法を使って人々を苦しめ金品を奪うなど言語道断。エスメラルダはドウマ国の住人をすべて拘束し、王都の騎士団に突き出す事に決めた。

 

 
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