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眠れない夜
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俺はこの世界に来て、初めて温かなベッドに横になった。これまでの疲れからすぐに眠りがおとずれると思っていた。
だが俺の予想に反して、ベッドに入った途端に目がしっかり覚めてしまった。
この世界に来てからというもの、俺は必死だった。大好きな恐竜に出会えた喜びと、今後の不安がごちゃまぜになっていた。
人間のいる街で食事してベッドで眠る。俺はこの世界に来て痛感した。俺はどこまでいってもヒト族なのだ。
俺は偶然優しいトップたちトリケラトプスの家族と知り合って安全に暮らしていた。
しかしずっと共に暮らしていけるわけではないだろう。俺は人間だから、ずっと洞窟で暮らしていれば体調をくずすかもしれない。
歳をとればトップたちに迷惑をかけるかもしれない。
俺の気持ちとしては、ずっと恐竜たちと暮らしていきたい。だがそうはいかない事態も起きるかもしれない。
俺はヒト族の中でも生活基盤を作っていかなければならないのだ。
俺があれこれと考えていると、スカーの寝息が聞こえない事に気づいた。トップの寝息はスピースピーと幸せな音をたてている。俺は小声でスカーに声をかけた。
「スカー、起きているか?」
『・・・。ああ、』
「なぁ、少し話してもいいか?」
『ああ、』
「スカーは、トップの攻撃を受けた時、どうして防御魔法を使わなかったんだ?」
俺はずっと疑問に思っていたのだ。スカーは巨大なティラノサウルスで、炎攻撃魔法も強力だ。不意をつかれたとはいえ、トップに攻撃されたと気づいたならば、防御魔法でトップの攻撃を防げたのではないだろうか。
俺はトップの前に、たくさんの草食恐竜たちがスカーに挑んだ試合を見た。
草食恐竜たちはスカーの事を恐れながらも、攻撃魔法や防御魔法を駆使して戦っていた。
スカーはしばらく経ってから小さな声で答えた。
『俺は自分を戦士だと自負している。防御魔法なんざ逃げだ。俺は攻撃しかしない』
「・・・。死ぬ気だった?」
俺は思っていた事を思わず口に出した。スカーはトップに攻撃された時、死を望んでいたのではないだろうか。
『・・・。俺はジュウキャクリュウの縄張りの中で、一番強いと自惚れていた。俺はいばり散らして暮らしていた。他のジュウキャクリュウの連中は、俺に口答えしなかった。俺が強かったからだ。だが俺は勘違いしていた。俺よりも、ヒト族の方がずっと頭が良かったんだ。俺はヒト族の作った罠に捕まった。それからはずっと戦いの日々だった。弱っちいケンリュウやヨロイリュウをけちらしてなにが面白い。俺は生きている意味がわからなかった。そこにトップの小僧があらわれたんだ』
スカーは嬉しそうな声になった。
『トップは小さなツノリュウのくせに、俺に一歩も引かなかった。トップの目は、戦士の目をしていた。最初は単純な攻撃だったが、俺と戦っているうちにドンドン成長していく。俺は嬉しくて仕方なかった。トップのツノが腹に刺さった時に気づいた。致命傷だ。たが俺はこれでいいと思った。ヒト族に働かされ続けて惨めに死ぬよりも、俺の見込んだ戦士によって迎える死のほうがはるかに尊厳に満ちていた。だが、俺は死ななくて良かったと思っている。俺の自己満足で、トップの心に傷を負わせてしまうところだった』
スカーはさらに小さな声で、ありがとうと言った。
だが俺の予想に反して、ベッドに入った途端に目がしっかり覚めてしまった。
この世界に来てからというもの、俺は必死だった。大好きな恐竜に出会えた喜びと、今後の不安がごちゃまぜになっていた。
人間のいる街で食事してベッドで眠る。俺はこの世界に来て痛感した。俺はどこまでいってもヒト族なのだ。
俺は偶然優しいトップたちトリケラトプスの家族と知り合って安全に暮らしていた。
しかしずっと共に暮らしていけるわけではないだろう。俺は人間だから、ずっと洞窟で暮らしていれば体調をくずすかもしれない。
歳をとればトップたちに迷惑をかけるかもしれない。
俺の気持ちとしては、ずっと恐竜たちと暮らしていきたい。だがそうはいかない事態も起きるかもしれない。
俺はヒト族の中でも生活基盤を作っていかなければならないのだ。
俺があれこれと考えていると、スカーの寝息が聞こえない事に気づいた。トップの寝息はスピースピーと幸せな音をたてている。俺は小声でスカーに声をかけた。
「スカー、起きているか?」
『・・・。ああ、』
「なぁ、少し話してもいいか?」
『ああ、』
「スカーは、トップの攻撃を受けた時、どうして防御魔法を使わなかったんだ?」
俺はずっと疑問に思っていたのだ。スカーは巨大なティラノサウルスで、炎攻撃魔法も強力だ。不意をつかれたとはいえ、トップに攻撃されたと気づいたならば、防御魔法でトップの攻撃を防げたのではないだろうか。
俺はトップの前に、たくさんの草食恐竜たちがスカーに挑んだ試合を見た。
草食恐竜たちはスカーの事を恐れながらも、攻撃魔法や防御魔法を駆使して戦っていた。
スカーはしばらく経ってから小さな声で答えた。
『俺は自分を戦士だと自負している。防御魔法なんざ逃げだ。俺は攻撃しかしない』
「・・・。死ぬ気だった?」
俺は思っていた事を思わず口に出した。スカーはトップに攻撃された時、死を望んでいたのではないだろうか。
『・・・。俺はジュウキャクリュウの縄張りの中で、一番強いと自惚れていた。俺はいばり散らして暮らしていた。他のジュウキャクリュウの連中は、俺に口答えしなかった。俺が強かったからだ。だが俺は勘違いしていた。俺よりも、ヒト族の方がずっと頭が良かったんだ。俺はヒト族の作った罠に捕まった。それからはずっと戦いの日々だった。弱っちいケンリュウやヨロイリュウをけちらしてなにが面白い。俺は生きている意味がわからなかった。そこにトップの小僧があらわれたんだ』
スカーは嬉しそうな声になった。
『トップは小さなツノリュウのくせに、俺に一歩も引かなかった。トップの目は、戦士の目をしていた。最初は単純な攻撃だったが、俺と戦っているうちにドンドン成長していく。俺は嬉しくて仕方なかった。トップのツノが腹に刺さった時に気づいた。致命傷だ。たが俺はこれでいいと思った。ヒト族に働かされ続けて惨めに死ぬよりも、俺の見込んだ戦士によって迎える死のほうがはるかに尊厳に満ちていた。だが、俺は死ななくて良かったと思っている。俺の自己満足で、トップの心に傷を負わせてしまうところだった』
スカーはさらに小さな声で、ありがとうと言った。
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