究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

盛平

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エラルドの思い

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 エラルドは慣れない夕食作りをしていた。刃物を使う事は慣れている。だが味付けがいつもいまいちなのだ。

 小さい頃、台所に立つ母にいつも味見をねだっていた。母は大きなスプーンですくったジャガイモを、フゥフゥと息を吹きかけて冷ましてからエラルドの口に入れてくれた。

 その美味しかった味を、今でも覚えている。

 エラルドはジャガイモを小さく切ると、グツグツいいだしたナベの中に入れた。次はニンジンを切る。

 エラルドは黙々と野菜を切りながら、今日起きた出来事を思い出していた。何ということもない依頼だった。

 ケチな子悪党を捕縛しろという。標的の居場所もはっきりしていて、森の中に潜んでいるという。

 だがこれはエラルドをおびき寄せるための罠だったのだ。数多くの犯罪者を捕らえたエラルドに逆恨みした犯罪者たちが仕組んだ事だった。

 エラルドを襲ったのは若い冒険者だった。相当に腕に自信があるようで、エラルドにかかんに戦いを挑んできた。

 当初エラルドは、相手のあまりの若さに驚いて手心をくわえていた。だが若い冒険者が、仲間の犯罪者をおとりにしてエラルドを倒そうとした戦略を目の当たりにして考えが変わった。

 この男に強力な魔力を持たせておいてはいけない。この男は人を殺す事に何のちゅうちょもないのだ。

 エラルドは普段通り男の両腕を切り落とした。いつものように《ファイヤーソード》が傷口を焼ききって、命だけは助けるつもりだった。しかしエラルドの予想に反して、男の出血は止まらなかった。

 エラルドはその時相当に焦っていた。亡き父との約束を破ってしまうかもしれないと思った。

 お前の剣は人を生かす剣だ。決して命を奪ってはいけない。

 剣の師匠であるエラルドの父は、幼いエラルドにかんでふくめるように言っていた。

 今思えば、父はエラルドの心の弱さを見抜いていたのだろう。エラルドには人を殺す勇気はなかった。きっとあやまって人を殺してしまったら、精神がおかしくなってしまうだろう。

 エラルドには人を殺す覚悟はないのだ。

 目の前の男の出血は止まらず、このまま人を殺してしまうのかと恐怖した時、突然少女があらわれた。

 一体どこからあらわれたのだろうか。黒い髪に黒い瞳の美しい少女だった。あまりにも突然あらわれたので、エラルドは森の妖精ではないかと錯覚してしまった。

「私たちが助けてあげましょうか?マフサ」

 どうやらこの少女は、男と知り合いのようだ。両手から血をドボドボとしたたらせた男は、憎悪の目で少女を見た。

 少女は男の視線を完全に無視してから、エラルドに向き直って微笑んだ。ここは任せろというのだ。

 エラルドは感謝をこめて小さくうなずくと、森を抜けるため足を早めた。
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