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戦の神アルス

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「ぎゃああ!」

 レオンは大声をあげて、恐怖のあまり目を強くつむった。これでレオンの短い人生は終わってしまうのだ。せっかくアルスと契約できたのに。アルスの魔法を見れずに死んでしまうのは残念だった。

 母のサンドラとウィリディスはとても悲しむだろう。レオンの脳裏に父の顔が浮かぶ。レオンが観念したその時、足元のアルスが強く輝き出した。

 アルスの小さな身体はグングン大きくなった。

「よう、レオン。これがオレ様の真の姿じゃ!どうじゃ凛々しいであろう」

 レオンは死の恐怖も忘れ、呆けたようにアルスを見上げた。アルスは身体に鎧をまとい、腰に大剣をさした、美しい青年の姿になった。

 アルスは今にも自分たちにこぶしを振り下ろそうとしているゴーレムを見上げて言った。

「もうさまよわなくてもよいぞ?元の土にかえるがよい」

 アルスは右手をゴーレムに向けると、手のひらから輝く光の物体が出現した。どうやら強力な魔法のかたまりのようだ。

 アルスは光のかたまりを、軽くはらう動作をすると、光のかたまりはゴーレムめがけてすごい勢いで飛んでいった。

 光のかたまりがゴーレムに着弾すると、ゴーレムはまるで花火のように消し飛んでしまった。

 ゴーレムの身体を形成していた、土や石が辺りに飛び散る。だが不思議とレオンとアルスには飛んでこなかった。まるで見えない壁が目の前にあるようだった。どうやらアルスが防御魔法でレオンを守ってくれたようだ。

「すごいよアル!」

 アルスはレオンを振り返ると、得意げに答えた。

「そうじゃろう!オレ様は無敵なのじゃ!」

 しばらくはアルスの魔法に驚嘆していたレオンだが、周りの惨状に心を痛めた。ゴーレムが歩きまわった森は、メチャクチャになってしまっていた。

 これでは森に暮らす動物たちが困ってしまうだろう。レオンの顔はくもった。そんなレオンを見てアルスが言った。

「レオン、心配するな。オレ様の力を持ってすれば造作もない事じゃ」

 アルスはおもむろに地面にひざをつくと、右手を地面に当てた。すると地面が輝き出した。

 ゴーレムによってなぎたおされた木々の下から、新たな木々が生えてきて、元の緑豊かな森になった。レオンは嬉しくなってアルスに振り向くと、アルスはすでに小さな子供の姿に戻っていた。レオンはアルスを抱き上げて言った。

「アル!ありがとう!森が元通りになったよ」

 レオンの喜びに対して、アルスはどこかぐったりした様子だった。レオンは心配になり、アルスに言った。

「アル?どうしたの?具合悪いの?」

 アルスはレオンの質問には答えず。レオンの首にしがみついてしまった。いつものアルスらしくない。レオンは青ざめながら家へと走った。
 

 

 
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