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241、護衛任務
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公爵家でそのような一件があった頃、迷宮の奥に進む決意を伝えたエイジにエリクがある提案をしていた。
「エイジ、一つ提案があるんですが聞いて貰えますか?」
その言葉にエイジは首を傾げると。
「提案ですか? エリクさん」
「ええ、そうです。実は、ちょっとした護衛任務をお願いしたいんです」
唐突な提案に、エイジたちはキョトンとする。
エリスとリアナは思わず尋ねた。
「護衛任務って?」
「一体誰の護衛ですか? エリクさん」
アンジェはすっかり先に進むつもりだったのだろう、『紅』を構えると。
「悪いけど、誰かを護衛しながら迷宮の奥に進んでいる余裕は私たちにはないわ。ね、エイジ?」
ダークエルフの少女の言葉に、エイジも同意する。
「ええ、すみませんエリクさん。俺たちは少しでも早く強くなりたいんです。今は護衛任務なんてとても」
エイジたちの意見に、ライアンは大槍を構えて肩をすくめる。
「おいおい、まだ強くなりたいのかよ? まあ、エイジたちにも事情があるんだろうさ。エリク先輩、警備隊への報告は俺たちだけで十分だろ? エイジたちは行かせてやろうぜ」
気がいい半獣人の槍使い若者の言葉。
ライアンは改めてエイジの前に立つ。
「楽しかったぜ、エイジ。元気でな、暫くルイーナにいるなら警備隊に遊びに来いよ。歓迎するぜ」
「ああ、ライアン。必ず顔を出すよ。こちらこそ助かった」
ライアンなりに気を使ったのだろう。
エイジたちが先に進めるように、と。
シェリルもそれを察したのか、エリス達に話しかける。
「気を付けるにゃ。深層に踏み込めば踏み込むほど、危険になるからにゃ。私たちもまだ40階層より下には行ったことがないにゃ。エリク先輩は別だけどにゃ」
シェリルの言葉にオリビアも頷いた。
「警備隊の仕事は多岐にわたるもの。でも今の私たちなら40階層はもちろんだけど、50階層にだって降りられるかもしれないわね。そうすれば今よりもきっと強く……」
そう言ってオリビアはエイジを見つめた。
何か言いたそうなその瞳。
それを飲み込んでオリビアは、エイジに歩み寄ると右手を差し出した。
「エイジ。もしフェロルク発つことがあるのなら、その前に警備隊に会いに来て頂戴。お別れぐらい言いたいわ」
オリビアは自分たちを都からきた貴族の護衛騎士だと思っているようだ。
とエイジは思う。
僅かな時間だが共に戦った仲間だ、エイジは快く頷いてしっかりと握手をした。
屈託のない笑顔で力強く自分の手を握る少年を見て、美しい女騎士は少しだけ頬を染めた。
それを誤魔化すためにエイジから顔を背けてエリスたちに言う。
「エイジのことをナイトだって言ってたわね。貴方たちはついているわ、エイジ程の騎士はそうはいないもの。大事にすることね」
オリビアは心からそう思った。
目の前の少年は、いずれ近いうちにAランクの領域すら超えるだろう。
いつか、とてつもない剣士になる。
多くの剣士を見てきたオリビアにはそう思えた。
(それに……)
これ程の強さを持ちながら、気取ったところもない。
どこか兄に似た、屈託のないその笑顔。
エリスやリアナはオリビアの言葉に頷いた。
「ええ、オリビア」
「もちろんよ、エイジは大切な私たちのナイトだもの」
オリビアは、アンジェの前に手を差し出した。
「お別れね、良かったらいつでも警備隊に顔を出しなさい。手合わせぐらいしてあげるわ」
アンジェは、ツンとした顔をしながらもその手を握る。
「今度は私が勝つわよ」
アンジェの言葉にオリビアは笑うと。
「貴方が羨ましいわ。私も一緒に迷宮の先に進んでみたい」
強くなりたいと願うオリビアの本音だろう。
エイジたちの事を思い、先に行かせようとする若い隊員の姿。
それをみてエリクはニッコリと笑う。
そして再度エイジに提案した。
「エイジ、貴方たちの足手まといにはなりませんよ。頼みたいのは、これからこの先に訓練に向かう私たちの護衛なのですから」
「エリクさんたちの!?」
エリクは驚くエイジを眺めながら思う。
(本来なら討伐任務が終了したことを直ぐに報告すべきなのですが、王女殿下との同行任務の方が優先順位は高い。ジーナ隊長も許してくれるでしょう)
王女であるエリスの事を考えれば、現状入り口が封鎖されているこのルートでの活動は悪くない選択肢だ。
それに……。
「エイジ、貴方たちに会ってこの三人は大きく成長した。このまま別れるのは勿体ないと思いましてね。どうです? 40階層より下に潜るならこの先のことに詳しい私がいて損はないはず。お互い悪い話ではないと思いますが」
「エイジ、一つ提案があるんですが聞いて貰えますか?」
その言葉にエイジは首を傾げると。
「提案ですか? エリクさん」
「ええ、そうです。実は、ちょっとした護衛任務をお願いしたいんです」
唐突な提案に、エイジたちはキョトンとする。
エリスとリアナは思わず尋ねた。
「護衛任務って?」
「一体誰の護衛ですか? エリクさん」
アンジェはすっかり先に進むつもりだったのだろう、『紅』を構えると。
「悪いけど、誰かを護衛しながら迷宮の奥に進んでいる余裕は私たちにはないわ。ね、エイジ?」
ダークエルフの少女の言葉に、エイジも同意する。
「ええ、すみませんエリクさん。俺たちは少しでも早く強くなりたいんです。今は護衛任務なんてとても」
エイジたちの意見に、ライアンは大槍を構えて肩をすくめる。
「おいおい、まだ強くなりたいのかよ? まあ、エイジたちにも事情があるんだろうさ。エリク先輩、警備隊への報告は俺たちだけで十分だろ? エイジたちは行かせてやろうぜ」
気がいい半獣人の槍使い若者の言葉。
ライアンは改めてエイジの前に立つ。
「楽しかったぜ、エイジ。元気でな、暫くルイーナにいるなら警備隊に遊びに来いよ。歓迎するぜ」
「ああ、ライアン。必ず顔を出すよ。こちらこそ助かった」
ライアンなりに気を使ったのだろう。
エイジたちが先に進めるように、と。
シェリルもそれを察したのか、エリス達に話しかける。
「気を付けるにゃ。深層に踏み込めば踏み込むほど、危険になるからにゃ。私たちもまだ40階層より下には行ったことがないにゃ。エリク先輩は別だけどにゃ」
シェリルの言葉にオリビアも頷いた。
「警備隊の仕事は多岐にわたるもの。でも今の私たちなら40階層はもちろんだけど、50階層にだって降りられるかもしれないわね。そうすれば今よりもきっと強く……」
そう言ってオリビアはエイジを見つめた。
何か言いたそうなその瞳。
それを飲み込んでオリビアは、エイジに歩み寄ると右手を差し出した。
「エイジ。もしフェロルク発つことがあるのなら、その前に警備隊に会いに来て頂戴。お別れぐらい言いたいわ」
オリビアは自分たちを都からきた貴族の護衛騎士だと思っているようだ。
とエイジは思う。
僅かな時間だが共に戦った仲間だ、エイジは快く頷いてしっかりと握手をした。
屈託のない笑顔で力強く自分の手を握る少年を見て、美しい女騎士は少しだけ頬を染めた。
それを誤魔化すためにエイジから顔を背けてエリスたちに言う。
「エイジのことをナイトだって言ってたわね。貴方たちはついているわ、エイジ程の騎士はそうはいないもの。大事にすることね」
オリビアは心からそう思った。
目の前の少年は、いずれ近いうちにAランクの領域すら超えるだろう。
いつか、とてつもない剣士になる。
多くの剣士を見てきたオリビアにはそう思えた。
(それに……)
これ程の強さを持ちながら、気取ったところもない。
どこか兄に似た、屈託のないその笑顔。
エリスやリアナはオリビアの言葉に頷いた。
「ええ、オリビア」
「もちろんよ、エイジは大切な私たちのナイトだもの」
オリビアは、アンジェの前に手を差し出した。
「お別れね、良かったらいつでも警備隊に顔を出しなさい。手合わせぐらいしてあげるわ」
アンジェは、ツンとした顔をしながらもその手を握る。
「今度は私が勝つわよ」
アンジェの言葉にオリビアは笑うと。
「貴方が羨ましいわ。私も一緒に迷宮の先に進んでみたい」
強くなりたいと願うオリビアの本音だろう。
エイジたちの事を思い、先に行かせようとする若い隊員の姿。
それをみてエリクはニッコリと笑う。
そして再度エイジに提案した。
「エイジ、貴方たちの足手まといにはなりませんよ。頼みたいのは、これからこの先に訓練に向かう私たちの護衛なのですから」
「エリクさんたちの!?」
エリクは驚くエイジを眺めながら思う。
(本来なら討伐任務が終了したことを直ぐに報告すべきなのですが、王女殿下との同行任務の方が優先順位は高い。ジーナ隊長も許してくれるでしょう)
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それに……。
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