90 / 254
連載
245、鎧の剣士
しおりを挟む
「舐めるなよ!」
ライアンの体がブレるように動くと、鎧の剣士の一撃をかわす。
と同時に大槍を振り下ろした。
ギィイイイイイイン!!
剣士は盾でそれを鮮やかに受け流す。
そして、ライアンの一撃の反動を利用して再び距離をとった。
ライアンが感心した様に声を上げる。
「やるじゃねえか。生きてるときは腕のいい冒険者だったんだろうが、こうなっちまうとな」
生きている時とは、一体どういう事だろうか?
再び襲い掛かってくる剣士に、今度はエイジが対峙する。
ロングソードが振り下ろされるとエイジの大剣が、それを受け流す。
「上手いわ! エイジ」
アンジェが思わず賞賛の声を上げる。
相手の剣を受け流したのと同時に踏み込むと、今度は下から斬り上げるようにして剣を持つ右手の甲冑を切り落とす。
その勢いで体勢を崩す甲冑の剣士。
「リアナ! 今です」
エリクがリアナに指示を出す。
何かを詠唱をしているリアナの体は、淡い光に包まれている。
「エイジ、ライアン! 離れていて」
リアナは進み出ると杖を剣士に向けた。
白い輝きがリアナの杖から放たれ、それが鎧の剣士を包んでいく。
黒い影のようなものが鎧から立ち上ると、杖を持つリアナの手に力が入る。
何者かの怒りや憎しみのような感情が込められた叫びが、辺りに響く。
怨嗟が満ちたその声。
シェリルとライアンが思わず耳を塞いだ。
「うにゃあ! 何にゃこの声! 耳がおかしくなるにゃ!!」
「くそ! 全くだぜ」
獣人族とその血を引いている分、聴覚が発達しているのが仇となる。
杖を両手で握ると祈るように詠唱を続ける、リアナ。
全身が清浄な光に包まれていく。
その姿は慈悲深い女神のようである。
そして──
「迷える魂よ、聖なる光の導きにて天へと還れ! ターンアンデット!!」
リアナのその言葉に白い輝きが増すと、黒い影が浄化されるが如く光の中に溶けていく。
周囲に響き渡っていた叫びが消え、静けさが戻る。
天使のような可憐な顔に少しだけ疲労が浮かんだ。
エイジはリアナに歩み寄ると。
「凄いな、リアナ。今のが……」
「ええ、ターンアンデッド。アンデッドを浄化する魔法よ、中級クラスになって覚えたの」
エリクもその言葉に頷いた。
(やりますね、流石はアルトス伯のご令嬢だけはある)
領主であるアルトス伯爵は、高位の治療魔道士としても名が知られていた。
かつてはレオンリートやミレアと共に迷宮の深層に潜ったほどであるから、当然であろうか。
エイジの足元には主を失った鎧が、もはや動くことも無く転がっている。
「リビングアーマーね。迷宮で果てた冒険者の魂がこの鎧に宿ったのだろうけど」
オリビアのその言葉に、エリクは頷いた。
そして言う。
「問題は、それが自然に宿ったものかどうかですね」
「さっきのエリク先輩の話を聞いた限りは、その可能性は低いと思うわ」
オリビアはしゃがむと鎧を調べ始める。
全身鎧の兜を手に取ると、美しい女騎士はパーティメンバーにそれを見せる。
ライアンはそれを見ると首を傾げた。
「何だこれ?」
「魔方陣みたいね。特殊な文字で書かれていて読めないけど」
エリスが覗き込んでそう言った。
オリビアはその言葉に同意する。
「当然でしょうね。普通の魔道士が使う文字ではないもの」
エリクは頷くと通路の先の闇を見つめる。
「ほんの小手調べでしょう。やはり、あまり歓迎されてはいないようですね」
ライアンの体がブレるように動くと、鎧の剣士の一撃をかわす。
と同時に大槍を振り下ろした。
ギィイイイイイイン!!
剣士は盾でそれを鮮やかに受け流す。
そして、ライアンの一撃の反動を利用して再び距離をとった。
ライアンが感心した様に声を上げる。
「やるじゃねえか。生きてるときは腕のいい冒険者だったんだろうが、こうなっちまうとな」
生きている時とは、一体どういう事だろうか?
再び襲い掛かってくる剣士に、今度はエイジが対峙する。
ロングソードが振り下ろされるとエイジの大剣が、それを受け流す。
「上手いわ! エイジ」
アンジェが思わず賞賛の声を上げる。
相手の剣を受け流したのと同時に踏み込むと、今度は下から斬り上げるようにして剣を持つ右手の甲冑を切り落とす。
その勢いで体勢を崩す甲冑の剣士。
「リアナ! 今です」
エリクがリアナに指示を出す。
何かを詠唱をしているリアナの体は、淡い光に包まれている。
「エイジ、ライアン! 離れていて」
リアナは進み出ると杖を剣士に向けた。
白い輝きがリアナの杖から放たれ、それが鎧の剣士を包んでいく。
黒い影のようなものが鎧から立ち上ると、杖を持つリアナの手に力が入る。
何者かの怒りや憎しみのような感情が込められた叫びが、辺りに響く。
怨嗟が満ちたその声。
シェリルとライアンが思わず耳を塞いだ。
「うにゃあ! 何にゃこの声! 耳がおかしくなるにゃ!!」
「くそ! 全くだぜ」
獣人族とその血を引いている分、聴覚が発達しているのが仇となる。
杖を両手で握ると祈るように詠唱を続ける、リアナ。
全身が清浄な光に包まれていく。
その姿は慈悲深い女神のようである。
そして──
「迷える魂よ、聖なる光の導きにて天へと還れ! ターンアンデット!!」
リアナのその言葉に白い輝きが増すと、黒い影が浄化されるが如く光の中に溶けていく。
周囲に響き渡っていた叫びが消え、静けさが戻る。
天使のような可憐な顔に少しだけ疲労が浮かんだ。
エイジはリアナに歩み寄ると。
「凄いな、リアナ。今のが……」
「ええ、ターンアンデッド。アンデッドを浄化する魔法よ、中級クラスになって覚えたの」
エリクもその言葉に頷いた。
(やりますね、流石はアルトス伯のご令嬢だけはある)
領主であるアルトス伯爵は、高位の治療魔道士としても名が知られていた。
かつてはレオンリートやミレアと共に迷宮の深層に潜ったほどであるから、当然であろうか。
エイジの足元には主を失った鎧が、もはや動くことも無く転がっている。
「リビングアーマーね。迷宮で果てた冒険者の魂がこの鎧に宿ったのだろうけど」
オリビアのその言葉に、エリクは頷いた。
そして言う。
「問題は、それが自然に宿ったものかどうかですね」
「さっきのエリク先輩の話を聞いた限りは、その可能性は低いと思うわ」
オリビアはしゃがむと鎧を調べ始める。
全身鎧の兜を手に取ると、美しい女騎士はパーティメンバーにそれを見せる。
ライアンはそれを見ると首を傾げた。
「何だこれ?」
「魔方陣みたいね。特殊な文字で書かれていて読めないけど」
エリスが覗き込んでそう言った。
オリビアはその言葉に同意する。
「当然でしょうね。普通の魔道士が使う文字ではないもの」
エリクは頷くと通路の先の闇を見つめる。
「ほんの小手調べでしょう。やはり、あまり歓迎されてはいないようですね」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5,799
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。