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246、聖地
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「ほんの小手調べでしょう。やはり、あまり歓迎されてはいないようですね」
エリクの言葉にライアンは肩をすくめる。
「みたいだな、エリク先輩。にしてもよ、もうあんなのは勘弁してほしいぜ」
「ほんとだにゃ、耳がどうにかなるかと思ったにゃ!」
大きな猫耳をパタパタと動かしながら、相槌を打つシェリル。
エリクは頭を掻きながら。
「あの程度で済めば問題はないのですが」
リアナがそれを聞いて少し怒ったように言う。
「でも酷いわこんなこと、死者の魂への冒涜よ!」
オリビアも同意する。
「そうね、気分がいいものではないわ」
当然だろう。
中身のない鎧になって迷宮をさまよう。
もしも自分が迷宮の中で命を失ったとしたら、あんな姿になって使役されることを望む者はいないはずだ。
エリクはオリビアの言葉にもっともだと相槌を打ちながらも。
「彼らにとっては死者の魂の方が、生きている人間よりも自らに近い存在なのでしょう」
一方で、エリスは兜に書かれた魔法陣を興味深そうに眺めている。
「じゃあ、この文字も彼らのものなんですか?」
エリスの問いにエリクは頷くと。
「ええそうです。そもそも、この先は彼らの住処に続くものですからね。魔道士の中には、彼らが作った魔具や装飾品を求めて向かう者もいると言いますが、気に入られなければ住処を守る番人に追い返されますから」
「へえ、魔道士用の装備品を買いに行く人もいるのね」
エリスはそれを聞いてリアナと顔を見合わせた。
エイジは首を傾げながら尋ねる。
「それにしても、こんな迷宮の奥に住んでるなんて変ってますね」
「そうですね。ですが迷宮の中には、ルイーナ程の規模ではありませんが、同じように幾つか魔物が入ってこない場所がありますから」
オリビアは迷宮の先を見つめると。
「この先にある場所もその一つ。まだ行ったことはないけれど、私も話には聞いたことはあるわ。住みついているのは、彼らにとっての聖地があるからと言われているけど」
美しい女騎士の言葉に、エイジは思わず繰り返した。
「聖地……」
「いずれにしても、その先に行くには彼らの住処を通り抜けないとならない。気に入られれば通してもらえるでしょう。難しいようなら、一度ルイーナに戻って他のゲートを使うしかないでしょうね。彼らと事を構えることは危険でしょうし」
リアナは興味深そうな顔で尋ねる。
「エリクさんは、一度も行ったことがないんですか?」
「警備隊の仕事ではありませんが、リカルドさんに個人的に警護を頼まれてジーナ隊長と何度か。不思議とリカルドさんは彼らに好かれているようなんですよね」
アンジェはそれを聞いて肩をすくめた。
「リカルドか、ほんと謎が多い男ね」
その言葉に、ゴンドラで出会った少女を思い出して和むエイジたち。
エリクは言う。
「第一、あの人に護衛が必要なのかどうか疑問に思う事さえあります。どんなに強力な魔物が出てきても平然と笑み浮かべているんですよね。まあジーナ隊長の腕を信用しているからなのでしょうが」
オリビアはコホンと咳払いをした。
「それに少しキザだわ。この剣を作ってくれた時も『君には天使の翼が相応しい』なんて表情も変えずに言うんだから。一体何者なのかしら? あれ程の鍛冶職人なら、都にいけば引く手あまたでしょうに」
エイジは笑いながらオリビアに答える。
「それは分かる気がするけどな。実際、オリビアには天使の翼が良く似合ってるだろ?」
「なっ!!」
何の気なしのエイジの一言に、不意を突かれて頬を染めるオリビア。
シェリルは、ジト目でそれを眺めながら呟く。
「恐ろしい男にゃ。剣の腕にもまして女の扱いの方が上手いにゃ!」
一行はそんな話をしながら迷宮の中を進んでいく。
そんな中、エイジは思う。
(とにかく行ってみるしかないか。迷宮の中に住んでいるんだ。もしかしたら、白王の薔薇のことも何か知っているかもしれない)
43階層そして44階層にまで下りるが、通常の魔物は現れても先程のような特殊な敵は姿を見せなかった。
エイジとライアン、そしてオリビアが中心となって戦っていく。
「意外ね。あれから手を出してこないみたいだけど」
オリビアの言葉に、大剣を片手にエイジも頷いた。
「確かにな。まあいいさ、順調に進めるたほうがいいに決まってるからな」
レベルも順調に上がり、エイジは中級クラスのレベル38の剣士である。
(エイジがいてくれると、助かりますね。防衛ラインが下がることがない。中衛以降も落ち着いて仕事が出来るというものです)
エリクは思う。
ライアンとオリビアの活躍もあるだろうが、先程からかなりの強さの魔物相手にも前列を崩されることは無い。
戦闘陣形を崩されないと言うことは、安全に戦う上での基本である。
(それにしても……)
「『嵐の前の静けさ』でなければいいんですがね」
暫くそのまま進み、一行は階段を使って45階層に下りる。
すると通路は一本道になった。
そこには淡く光る苔のようなものが生えている。
「ここから先には魔物は入れません。ですが、私たちもすんなりとは入れてくれそうもありませんね」
エイジは手にした大剣を背中の鞘におさめながら頷いた。
「ええ、そうみたいですね」
通路の先から現れる者達を眺めながら、エイジはエリクの言葉に頷いた。
エリクの言葉にライアンは肩をすくめる。
「みたいだな、エリク先輩。にしてもよ、もうあんなのは勘弁してほしいぜ」
「ほんとだにゃ、耳がどうにかなるかと思ったにゃ!」
大きな猫耳をパタパタと動かしながら、相槌を打つシェリル。
エリクは頭を掻きながら。
「あの程度で済めば問題はないのですが」
リアナがそれを聞いて少し怒ったように言う。
「でも酷いわこんなこと、死者の魂への冒涜よ!」
オリビアも同意する。
「そうね、気分がいいものではないわ」
当然だろう。
中身のない鎧になって迷宮をさまよう。
もしも自分が迷宮の中で命を失ったとしたら、あんな姿になって使役されることを望む者はいないはずだ。
エリクはオリビアの言葉にもっともだと相槌を打ちながらも。
「彼らにとっては死者の魂の方が、生きている人間よりも自らに近い存在なのでしょう」
一方で、エリスは兜に書かれた魔法陣を興味深そうに眺めている。
「じゃあ、この文字も彼らのものなんですか?」
エリスの問いにエリクは頷くと。
「ええそうです。そもそも、この先は彼らの住処に続くものですからね。魔道士の中には、彼らが作った魔具や装飾品を求めて向かう者もいると言いますが、気に入られなければ住処を守る番人に追い返されますから」
「へえ、魔道士用の装備品を買いに行く人もいるのね」
エリスはそれを聞いてリアナと顔を見合わせた。
エイジは首を傾げながら尋ねる。
「それにしても、こんな迷宮の奥に住んでるなんて変ってますね」
「そうですね。ですが迷宮の中には、ルイーナ程の規模ではありませんが、同じように幾つか魔物が入ってこない場所がありますから」
オリビアは迷宮の先を見つめると。
「この先にある場所もその一つ。まだ行ったことはないけれど、私も話には聞いたことはあるわ。住みついているのは、彼らにとっての聖地があるからと言われているけど」
美しい女騎士の言葉に、エイジは思わず繰り返した。
「聖地……」
「いずれにしても、その先に行くには彼らの住処を通り抜けないとならない。気に入られれば通してもらえるでしょう。難しいようなら、一度ルイーナに戻って他のゲートを使うしかないでしょうね。彼らと事を構えることは危険でしょうし」
リアナは興味深そうな顔で尋ねる。
「エリクさんは、一度も行ったことがないんですか?」
「警備隊の仕事ではありませんが、リカルドさんに個人的に警護を頼まれてジーナ隊長と何度か。不思議とリカルドさんは彼らに好かれているようなんですよね」
アンジェはそれを聞いて肩をすくめた。
「リカルドか、ほんと謎が多い男ね」
その言葉に、ゴンドラで出会った少女を思い出して和むエイジたち。
エリクは言う。
「第一、あの人に護衛が必要なのかどうか疑問に思う事さえあります。どんなに強力な魔物が出てきても平然と笑み浮かべているんですよね。まあジーナ隊長の腕を信用しているからなのでしょうが」
オリビアはコホンと咳払いをした。
「それに少しキザだわ。この剣を作ってくれた時も『君には天使の翼が相応しい』なんて表情も変えずに言うんだから。一体何者なのかしら? あれ程の鍛冶職人なら、都にいけば引く手あまたでしょうに」
エイジは笑いながらオリビアに答える。
「それは分かる気がするけどな。実際、オリビアには天使の翼が良く似合ってるだろ?」
「なっ!!」
何の気なしのエイジの一言に、不意を突かれて頬を染めるオリビア。
シェリルは、ジト目でそれを眺めながら呟く。
「恐ろしい男にゃ。剣の腕にもまして女の扱いの方が上手いにゃ!」
一行はそんな話をしながら迷宮の中を進んでいく。
そんな中、エイジは思う。
(とにかく行ってみるしかないか。迷宮の中に住んでいるんだ。もしかしたら、白王の薔薇のことも何か知っているかもしれない)
43階層そして44階層にまで下りるが、通常の魔物は現れても先程のような特殊な敵は姿を見せなかった。
エイジとライアン、そしてオリビアが中心となって戦っていく。
「意外ね。あれから手を出してこないみたいだけど」
オリビアの言葉に、大剣を片手にエイジも頷いた。
「確かにな。まあいいさ、順調に進めるたほうがいいに決まってるからな」
レベルも順調に上がり、エイジは中級クラスのレベル38の剣士である。
(エイジがいてくれると、助かりますね。防衛ラインが下がることがない。中衛以降も落ち着いて仕事が出来るというものです)
エリクは思う。
ライアンとオリビアの活躍もあるだろうが、先程からかなりの強さの魔物相手にも前列を崩されることは無い。
戦闘陣形を崩されないと言うことは、安全に戦う上での基本である。
(それにしても……)
「『嵐の前の静けさ』でなければいいんですがね」
暫くそのまま進み、一行は階段を使って45階層に下りる。
すると通路は一本道になった。
そこには淡く光る苔のようなものが生えている。
「ここから先には魔物は入れません。ですが、私たちもすんなりとは入れてくれそうもありませんね」
エイジは手にした大剣を背中の鞘におさめながら頷いた。
「ええ、そうみたいですね」
通路の先から現れる者達を眺めながら、エイジはエリクの言葉に頷いた。
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