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352、銀のスライム

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「ふぅん、一応礼儀は知っているようね。私はララリシア、ローゼディア第十七研究施設の管理者よ」

「ララリシア……ローゼディアって超古代文明の」

 エイジが思わずそう呟くと、ララリシアが一瞬動揺した様な表情になる。

「し、質問は無しよ! どこの誰とも知らない相手にこれ以上は話せないわ」

 ラエサルは、エイジとララリシアの会話を聞きながら肩をすくめると。

「お前自身それ以上のことはよく分からないんだろう? いい加減に出てこい、ララリシア」

「嫌よ、こいつら初めて見る顔だもの! また私のことをいじり回す調査団とかいう連中なんでしょ? ラエサルだけなら歓迎してあげるけど、変な奴等は連れてこないでっていつも言ってるじゃない!」

 全てのモニターに映し出された少女の顔が、ラエサルを睨んでいる。
 キーラがラエサルに囁いた。

「貴方が最近顔を見せないからご機嫌斜めなのよ。せっかく来たと思ったら、エイジたちを連れているから」

 その言葉にラエサルはため息をつくと。

「ララリシア、調査団の仕事とは関係がない。こいつらはお前に何もしはしないから安心しろ、俺が保証する」

「ほ……本当に?」

「ああ、安心して出てこい。せっかく来たんだ、お前をこいつらに紹介したい」

 ラエサルの優しい口調にララリシアは一瞬嬉しそうな顔をしたが、直ぐに咳払いしてすまし顔に戻る。
 そして、答える。

「そ、そう。ラエサルが私に会いたいって言うなら出て行ってあげてもいいわ。待ってなさい!」

(なんだろう……少し前までの誰かさんを思い出すような、ツンデレ感があるよな)

 エイジは思わずエリスを見つめる。
 と、その時──
 エリスが、エイジの腕にギュッとしがみついた。

「あれを見て! エイジ!!」

 部屋の前方の天井がまるで液体に変わったかのように微かに揺れている。
 まるでそれは銀色の湖面のようだ。
 そこから大きな波紋が一つ生まれると、その波紋の中央から大きな雫が部屋の床に向かって落ちていく。
 それは金属で出来たスライムのように、床の上でプルンとひと固まりになった。
 アンジェとオリビアが思わず剣を構える。

「ちょ!」

「何よあれ!?」

 キーラが二人をたしなめる。

「アンジェ、オリビア、いいから剣をしまいなさい」

 その銀色のスライムは、まるで辺りを観察するかのように可愛らしくぷにょぷにょと動くと次第に形を変えていく。
 まるで立ち上がっていくかのようなその姿に、エリスとリアナはエイジの腕にしがみついた。

「エイジ……」

「ねえ、これってまるで」

 エイジは頷いた。

「ああ、人間の形になっていく」

 初めは銀色の只の人形のように。
 それが次第に細部まで明確に変化していく。
 肌は銀色から、人の息吹を感じさせる肌の色へ、そして鮮やかな青い髪まで。

「ふぅ……これでいいでしょ? ラエサル」

 少女は上目遣いにラエサルを見つめると、エイジたちが自分を凝視していることに気が付いてサッとラエサルの後ろに隠れる。

「ほ、本当に何もしない? もう色々調べられたりするのは嫌だわ……何度聞かれても私、眠る前のことは何も覚えてないんだもの」

「安心しろララリシア。そんなに怯えるな」

 まるで娘のように甘えた態度をとるララリシアを見て、アンジェはムッとした顔でラエサルに尋ねた。

「ねえ、ラエサル、一体その子何なの? 普通の人間には見えないし……それに何でラエサルにそんなにベタベタしてるの?」

 アンジェから敵意のようなものを感じ取ったのか、ララリシアが睨み返す。
 そして、小さく舌を出して言った。

「べぇ~だ! ラエサルはずっと一人で眠ってた私を起こしてくれたんだから、今は私の新しいマスターよ!」 
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