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特別な客
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ふと目を覚ますと、窓から光が差し込んどる。
――朝か。
気だるいまま上半身を起こし、目をこすった。
なんも聞こえへん。
森に音が吸われる、ってこういうことなんやろか。
とりとめのないことを考えながら、ゆっくり掛け布団をめくった。
朝の冷気を断ち切るように、素早く寝具を畳んでいく。
布団の温もりが恋しい。せやけどそれ以上に世界が恋しい。俺は早く動きださんとあかん気がした。
―――
トイレを出たところで、使用人とばったり会うた。
「おはようございます」
恭しゅう頭を下げられて、思わず面食らう。
あいさつを返すと、向こうはぎこちない笑顔も作らへん。
朝食の用意ができている、と言われた瞬間、
思わず唾を飲み込んだ。
頬を指で掻いてごまかすと、使用人は無表情のまま
「こちらへ」と先導していく。
食卓に着いても、会話なんかあれへんかった。
料理は申し分ない。
食器の触れ合う音と、俺の咀嚼音。
こんな緊張した朝食は生まれて初めてやった。
入口に立つ使用人は、前を向いたまま、
ほんまに一ミリも動かへん。
――金持ちにはなりたないな。
それが食後の正直な感想やった。
―――
外に出ると、そこには老人が数人で談笑しとるとこやった。
こちらに気付くと全員が、にっこりと笑うてくれた。
気を良くした俺は「おはようございます」と声を掛けた。
彼らは見た目以上に素早く、こちらに近付いてきた。軽い会釈を想像してた俺は、思わず上体を反らしてもうた。
「おお……」「これが"あの"……」
「ありがたいのお」
口々に声を上げる高齢者。しかしどこか違和感があんねん。俺はハッキリ自分が"異邦人"であることを自覚した。
そのかたわら、ヒソヒソと俺の方を見ながらしゃべる老人たちの姿もあった。
「今日は村長が大事な話があると言っとったのお」
村人の一人がそういうと、踵を返した。
なんとなく疎外感を感じとる俺としては、正直なところ、ここでお別れしたかった。
それを見越したかのように、背中をポンと叩かれる。
「あんたは大事な主賓じゃ。儂らと行きましょう」
大柄な爺さんは、そう言いながらゆっくりと俺を追い抜いていった。
主賓て……どういうことやねん。
首を傾げながら、奇妙な集団の最後尾となり、その目的地に向かっていった。
たまに1人の老人がじっと、俺の方を観察しているような気がした。
――朝か。
気だるいまま上半身を起こし、目をこすった。
なんも聞こえへん。
森に音が吸われる、ってこういうことなんやろか。
とりとめのないことを考えながら、ゆっくり掛け布団をめくった。
朝の冷気を断ち切るように、素早く寝具を畳んでいく。
布団の温もりが恋しい。せやけどそれ以上に世界が恋しい。俺は早く動きださんとあかん気がした。
―――
トイレを出たところで、使用人とばったり会うた。
「おはようございます」
恭しゅう頭を下げられて、思わず面食らう。
あいさつを返すと、向こうはぎこちない笑顔も作らへん。
朝食の用意ができている、と言われた瞬間、
思わず唾を飲み込んだ。
頬を指で掻いてごまかすと、使用人は無表情のまま
「こちらへ」と先導していく。
食卓に着いても、会話なんかあれへんかった。
料理は申し分ない。
食器の触れ合う音と、俺の咀嚼音。
こんな緊張した朝食は生まれて初めてやった。
入口に立つ使用人は、前を向いたまま、
ほんまに一ミリも動かへん。
――金持ちにはなりたないな。
それが食後の正直な感想やった。
―――
外に出ると、そこには老人が数人で談笑しとるとこやった。
こちらに気付くと全員が、にっこりと笑うてくれた。
気を良くした俺は「おはようございます」と声を掛けた。
彼らは見た目以上に素早く、こちらに近付いてきた。軽い会釈を想像してた俺は、思わず上体を反らしてもうた。
「おお……」「これが"あの"……」
「ありがたいのお」
口々に声を上げる高齢者。しかしどこか違和感があんねん。俺はハッキリ自分が"異邦人"であることを自覚した。
そのかたわら、ヒソヒソと俺の方を見ながらしゃべる老人たちの姿もあった。
「今日は村長が大事な話があると言っとったのお」
村人の一人がそういうと、踵を返した。
なんとなく疎外感を感じとる俺としては、正直なところ、ここでお別れしたかった。
それを見越したかのように、背中をポンと叩かれる。
「あんたは大事な主賓じゃ。儂らと行きましょう」
大柄な爺さんは、そう言いながらゆっくりと俺を追い抜いていった。
主賓て……どういうことやねん。
首を傾げながら、奇妙な集団の最後尾となり、その目的地に向かっていった。
たまに1人の老人がじっと、俺の方を観察しているような気がした。
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