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目指せ!王都
宿に到着
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揺れる馬車は尻が痛いし酔う。
一緒に乗っていた旅の薬師だというばーさんから酔い止めの薬草を買った。口の中で唾液で溶かして、噛むと言う丸薬は鑑定してみると特に成分的に問題なさそうではあるのだが、丸く小さい飴玉サイズの茶色い塊は怪しさしかない。
思い切って口に入れてみると甘苦い…?からの強烈なミント臭と清涼感とちょっとした辛味。
思わずンヒィ!と変な声が出た。薬師のばーさんに笑われた。
効果はまあ、多少マシになったかなって感じだった。
昼休憩に高速道路のサービスエリアのような休憩所に寄る。と言ってもサービスエリアの様に施設が充実している訳ではなく、屋根とベンチと馬のための水飲み場などが設置されている場所だ。
人間の休憩と言うよりは馬のための休憩所と言った風情。ベンチにふらふら座ると、ショルダーバッグに手を入れるフリをしてアイテムボックスからケークサレをひとつ取り出してもそもそ食べる。
しまった。コップとか用意して無かったから水とか飲めない。喉が渇けば簡単に水が飲めた日本人だから、その辺が甘い。
喉の渇きはばーさんから買った酔い止めの薬で誤魔化した。口に含むとスッゴイ唾液出る。
宿場村で泊まるからそこで水筒でも買おう。
乗り合い馬車に乗って一日目。
夕方前に宿場村に到着した。辺境と王都を結ぶ街道沿いにできた宿場村はなかなかの広さを誇っていた。見た感じ、農業と宿屋を営んでいるのが半々と言ったところだ。
御者のおっちゃんおすすめの安全性が高くそこそこのお値段の宿に入ると、恰幅のいい女将さんが出迎えた。
「いらっしゃい。一泊相部屋なら大銀貨一枚、鍵付きの一人部屋なら大銀貨二枚だよ。食事を付けると小銀貨二枚を頂いてるね」
「ンー、じゃあ、一人部屋で夕食貰う」
「タライにお湯はいるかい?」
「洗浄使えるから大丈夫」
「そうかい。夕食は五の鐘が鳴った後からだよ。部屋は階段を上がって右手の三番目の部屋さ」
五の鐘とは大体十八時頃のことを指す。この国では午前六時頃から三時間刻みで鐘を鳴らすことが習慣で、鐘の音に合わせて生活する。
ちなみに物価などは大きく違うためなんとも言えないが、大銀貨一枚千五百円程度、小銀貨五百円程度ほど価値…だと思う。(自信なし)
大銀貨二枚と小銀貨二枚を支払う。鍵を貰ってマジックバッグに入れると五の鐘までは時間があるため、水筒を買いに行くことにする。
おばさんに水筒などを売っている店はないかと聞くと、近くの雑貨屋紹介された。
あったらクッションも買おう。
雑貨屋には色々なものが売っていた。コンビニというよりは、駄菓子やお酒、生活雑貨なんかを売ってる田舎の商店って感じだ。
水筒を探していることを店番の少女に伝えると、不機嫌そうに皮袋を持ってくる。おお、コレが小説なんかで見るやつ…!
鑑定すると、子牛の胃袋を使っているらしい。小銀貨二枚を支払い雑貨屋を後にする。クッションは無かった…。
宿に帰るともうすぐ夕食だというので、そのまま食堂で待つことにした。
サービスだというオレンジジュースに似た柑橘類にジュースを出してもらう。この辺でよく作られる果物を絞ったものらしい。
「しかし、こんな小さい子が一人で王都まで行くなんて…大丈夫なのかい?」
「王都までの道は比較的安全だって聞いたから…それに病気で父さんも母さんも…親戚に王都に呼んでもらえただけありがたいよ」
そうかいと言いながら女将は食堂の奥に引っ込み、旦那さんが作ったうさぎのシチューと黒パンが出された。
シチューと言っても、日本人に馴染み深い白くもったりしたものではなく、肉と野菜を煮込んでマッシュしたじゃがいもの上にぶっかけたものだ。
彩りなのか酢漬けのにんじんと焼いたブロッコリーっぽいものが添えてある。うーん、雑。
女将は「うちの旦那は料理上手だよ」と自慢していたが、良いところのお嬢さんで辺境伯邸で食事をし、日本人の味覚を持つ私が、まあ食べられると判定したから、確かに料理上手かもしれない。
たぶん、美味いか不味いかの大きな要因は塩だろうな。
この世界では海水から採れる天然塩や岩塩はちょっとした贅沢品だ。庶民は何を使っているかというと、実塩というものを使っている。
塩の実と呼ばれる実は果汁を絞って水気を飛ばすと塩が作れた。春から秋にかけて実がなるため、果実自体はあまり大きくはないが生きていけるだけの塩分は確保できる。
絞った後に残る絞りカスは、食料と一緒に混ぜることで漬け物にできる無駄なく使える便利な実だ。
でも、生きていける分の塩しか取れないなら、料理は基本薄味だよね…。ポテチ食べたい。
食事が終わると部屋に向かう。鍵を開けて部屋に入れば、寝藁が敷かれたベッドとサイドテーブルのみがある、やや埃っぽい部屋だった。
足元には草が編まれたマットが敷かれている。土を落とすためのものかな?
「ルーム」
一言言うだけで、ドアが現れる。
ドアを開けば見慣れた玄関。入った途端にレベルアップを知らせる声が聞こえた。
「あ"ー」
レベルアップを確認したい。確認したいが、疲れてそれどころじゃ無い。
「ただいまー」
「お帰りなさい」
なんか乳鉢だの植物の粉末だのを広げたお嬢様が出迎えた。
「お嬢様ご飯は?」
「………そういえば、食べてないわね」
ノラの記憶がお嬢様は集中すると、寝食を忘れると言っている。
困ったお人だ。
お湯を作りながらケークサレをアイテムから取り出し、レンジで温める。
お湯ができたらお椀に入れたコーンスープの素を溶き、インスタントのほうじ茶を二人分淹れた。
道具を片付け終わったところで、温めたケークサレとコーンスープを持っていく。
「ケーキ?」
「ケークサレ。塩のケーキ」
「へえ」
フォークを使って上品にお嬢様が食べ始める。意外と口に合ったのか、フォークを進める手が早い。
食事しているところを見られるのは嫌だろうと、お茶を飲みつつルームのステータスをチェックする。
スキル:ルーム レベル3
北野亜美による願いが具現化したスキル。魔力消費なく発動できる。亜空間に北野亜美の自室を再現している。スキル保有者のみ、開閉ができる。
この中では外界の影響は受けず、スキル保持者による許可がなければ入室すらできない。許可さえ有れば、ルームに生物を入れたまま移動が可能。
ルームに生物が入室して居るだけで経験値が貯まり、レベルアップする。またスキル保有者自身のレベルアップも、ルームの成長に繋がる。
ルームポイント 1975
パッシブ 換気
清掃←New
アクティブ ゴミ処理
清掃とな?鑑定さんよろしくお願いします。
清掃:このスキルを取得することで、【ルーム】全ての空間が一定時間経つと綺麗に掃除された状態になる。
「ヤダ、何このスキル…こんなん全主婦の夢じゃん…」
【ルーム】さん、いっぱいしゅき…!
一緒に乗っていた旅の薬師だというばーさんから酔い止めの薬草を買った。口の中で唾液で溶かして、噛むと言う丸薬は鑑定してみると特に成分的に問題なさそうではあるのだが、丸く小さい飴玉サイズの茶色い塊は怪しさしかない。
思い切って口に入れてみると甘苦い…?からの強烈なミント臭と清涼感とちょっとした辛味。
思わずンヒィ!と変な声が出た。薬師のばーさんに笑われた。
効果はまあ、多少マシになったかなって感じだった。
昼休憩に高速道路のサービスエリアのような休憩所に寄る。と言ってもサービスエリアの様に施設が充実している訳ではなく、屋根とベンチと馬のための水飲み場などが設置されている場所だ。
人間の休憩と言うよりは馬のための休憩所と言った風情。ベンチにふらふら座ると、ショルダーバッグに手を入れるフリをしてアイテムボックスからケークサレをひとつ取り出してもそもそ食べる。
しまった。コップとか用意して無かったから水とか飲めない。喉が渇けば簡単に水が飲めた日本人だから、その辺が甘い。
喉の渇きはばーさんから買った酔い止めの薬で誤魔化した。口に含むとスッゴイ唾液出る。
宿場村で泊まるからそこで水筒でも買おう。
乗り合い馬車に乗って一日目。
夕方前に宿場村に到着した。辺境と王都を結ぶ街道沿いにできた宿場村はなかなかの広さを誇っていた。見た感じ、農業と宿屋を営んでいるのが半々と言ったところだ。
御者のおっちゃんおすすめの安全性が高くそこそこのお値段の宿に入ると、恰幅のいい女将さんが出迎えた。
「いらっしゃい。一泊相部屋なら大銀貨一枚、鍵付きの一人部屋なら大銀貨二枚だよ。食事を付けると小銀貨二枚を頂いてるね」
「ンー、じゃあ、一人部屋で夕食貰う」
「タライにお湯はいるかい?」
「洗浄使えるから大丈夫」
「そうかい。夕食は五の鐘が鳴った後からだよ。部屋は階段を上がって右手の三番目の部屋さ」
五の鐘とは大体十八時頃のことを指す。この国では午前六時頃から三時間刻みで鐘を鳴らすことが習慣で、鐘の音に合わせて生活する。
ちなみに物価などは大きく違うためなんとも言えないが、大銀貨一枚千五百円程度、小銀貨五百円程度ほど価値…だと思う。(自信なし)
大銀貨二枚と小銀貨二枚を支払う。鍵を貰ってマジックバッグに入れると五の鐘までは時間があるため、水筒を買いに行くことにする。
おばさんに水筒などを売っている店はないかと聞くと、近くの雑貨屋紹介された。
あったらクッションも買おう。
雑貨屋には色々なものが売っていた。コンビニというよりは、駄菓子やお酒、生活雑貨なんかを売ってる田舎の商店って感じだ。
水筒を探していることを店番の少女に伝えると、不機嫌そうに皮袋を持ってくる。おお、コレが小説なんかで見るやつ…!
鑑定すると、子牛の胃袋を使っているらしい。小銀貨二枚を支払い雑貨屋を後にする。クッションは無かった…。
宿に帰るともうすぐ夕食だというので、そのまま食堂で待つことにした。
サービスだというオレンジジュースに似た柑橘類にジュースを出してもらう。この辺でよく作られる果物を絞ったものらしい。
「しかし、こんな小さい子が一人で王都まで行くなんて…大丈夫なのかい?」
「王都までの道は比較的安全だって聞いたから…それに病気で父さんも母さんも…親戚に王都に呼んでもらえただけありがたいよ」
そうかいと言いながら女将は食堂の奥に引っ込み、旦那さんが作ったうさぎのシチューと黒パンが出された。
シチューと言っても、日本人に馴染み深い白くもったりしたものではなく、肉と野菜を煮込んでマッシュしたじゃがいもの上にぶっかけたものだ。
彩りなのか酢漬けのにんじんと焼いたブロッコリーっぽいものが添えてある。うーん、雑。
女将は「うちの旦那は料理上手だよ」と自慢していたが、良いところのお嬢さんで辺境伯邸で食事をし、日本人の味覚を持つ私が、まあ食べられると判定したから、確かに料理上手かもしれない。
たぶん、美味いか不味いかの大きな要因は塩だろうな。
この世界では海水から採れる天然塩や岩塩はちょっとした贅沢品だ。庶民は何を使っているかというと、実塩というものを使っている。
塩の実と呼ばれる実は果汁を絞って水気を飛ばすと塩が作れた。春から秋にかけて実がなるため、果実自体はあまり大きくはないが生きていけるだけの塩分は確保できる。
絞った後に残る絞りカスは、食料と一緒に混ぜることで漬け物にできる無駄なく使える便利な実だ。
でも、生きていける分の塩しか取れないなら、料理は基本薄味だよね…。ポテチ食べたい。
食事が終わると部屋に向かう。鍵を開けて部屋に入れば、寝藁が敷かれたベッドとサイドテーブルのみがある、やや埃っぽい部屋だった。
足元には草が編まれたマットが敷かれている。土を落とすためのものかな?
「ルーム」
一言言うだけで、ドアが現れる。
ドアを開けば見慣れた玄関。入った途端にレベルアップを知らせる声が聞こえた。
「あ"ー」
レベルアップを確認したい。確認したいが、疲れてそれどころじゃ無い。
「ただいまー」
「お帰りなさい」
なんか乳鉢だの植物の粉末だのを広げたお嬢様が出迎えた。
「お嬢様ご飯は?」
「………そういえば、食べてないわね」
ノラの記憶がお嬢様は集中すると、寝食を忘れると言っている。
困ったお人だ。
お湯を作りながらケークサレをアイテムから取り出し、レンジで温める。
お湯ができたらお椀に入れたコーンスープの素を溶き、インスタントのほうじ茶を二人分淹れた。
道具を片付け終わったところで、温めたケークサレとコーンスープを持っていく。
「ケーキ?」
「ケークサレ。塩のケーキ」
「へえ」
フォークを使って上品にお嬢様が食べ始める。意外と口に合ったのか、フォークを進める手が早い。
食事しているところを見られるのは嫌だろうと、お茶を飲みつつルームのステータスをチェックする。
スキル:ルーム レベル3
北野亜美による願いが具現化したスキル。魔力消費なく発動できる。亜空間に北野亜美の自室を再現している。スキル保有者のみ、開閉ができる。
この中では外界の影響は受けず、スキル保持者による許可がなければ入室すらできない。許可さえ有れば、ルームに生物を入れたまま移動が可能。
ルームに生物が入室して居るだけで経験値が貯まり、レベルアップする。またスキル保有者自身のレベルアップも、ルームの成長に繋がる。
ルームポイント 1975
パッシブ 換気
清掃←New
アクティブ ゴミ処理
清掃とな?鑑定さんよろしくお願いします。
清掃:このスキルを取得することで、【ルーム】全ての空間が一定時間経つと綺麗に掃除された状態になる。
「ヤダ、何このスキル…こんなん全主婦の夢じゃん…」
【ルーム】さん、いっぱいしゅき…!
応援ありがとうございます!
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