不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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27.んー…

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「???」


 え? え? 今の間に何があったんっすか!? え? 俺がいないだけでこうなるんっすか!?


 フレイ君はじっと上向きにボスを見つめ、ボスもそんなフレイ君の頬に手を当て見つめている。


「…………!」


 ……いや、違うっすね! あれボスの指、フレイ君の頬っぺたに食い込んでるっすし、見つめ合ってるんじゃなくて強制的にフレイ君上向かされてボスに見下ろされてるんっすね! 今の間になんでそんな険悪な雰囲気になってるんっすか!?


「ボスー!! フレイ君に何してるんっすか!?」


「チュ、チュキさん」


「……」


 慌ててフレイ君を救出すれば、フレイ君の両頬にはくっきりと指の跡がついていた。


 どこまで強く掴んだんっすか!! フレイ君涙目っすよ!?


「フレイ君、どうしたんっすか? なんでこんなことに……」


「わ、わからないんです。ぼ、僕ラックさんと、な、仲良くなりたくて、それで話しかけたら…………っ。った、ただ話しかけただけなのにっ。ただ話そうとしただけなのになんでこんな……っ」


「っフレイ君」


 話すフレイ君の様相はだんだんと感情昂り、それを堪えるかのように声は涙声になっていってしまう。ついには頬を赤く、瞳を潤わせポロポロと涙を流してしまった。その姿のなんと悲痛なことか。


「~~ボス!!」


 怒りを湛えながら唸るようボスを睨みつけた。ボスはフレイ君を見て、驚いたように目を丸くしていた。


「なんだそいつ」


「ボスが酷い態度とるからっすよ!」


 泣かせてる本人が何言ってるんっすか!


 俺はフレイ君の強く握られた拳を手にとり、力を抜くように揉み解した。そうすればフレイ君の手から徐々に力が抜けていき開けていく。フレイ君自身も泣き止み始めた。


 そして、やはりフレイ君は偉い。


「……あの、グスン……ラックさん。僕、何かしましたか?」


 フレイ君は涙を拭うとボスへと向き直り尋ねた。ただ話そうとしただけで頬を掴まれ、こんなにくっきり跡がつくほど力を入れられてさぞ、痛く、怖かったことだろう。なのにフレイ君は諦めず、なんと健気でいぢらしいことか。


 俺、感動っす!


 俺の中でフレイ君の株ば激上がり中だ。ボスは、そんなフレイ君の真っ直ぐとした目と周囲から向けられるジト目に苛立たしそうに顔を歪めると……


「……名前で呼ぶな」


 ボソッとそう言った。


「「?」」


 そして、言い聞かせるよう口を開く。


「いいか、フレイ。お前もここで暮らすんなら俺の名前をツキより先に呼ぶな」


「は?」


「?」


 俺っすか?


「これはここに住む全員に徹底してることだ」


「「???」」


 フレイ君と揃って首を傾げた。ボスは一体何を言っているのだろうか。


 コソコソ……


「……あーあ、また出たよボスの変なこだわり」


「ツキに名前を呼んでもらえないからって別に俺らにまでボス呼び強制させなくてもいいのにな。まだ小っちゃいちびっ子達にも呼び名定着さてんだぜ? そこまでしなくてもなぁ」


「本当だぜ。俺達がボスって呼んでもラックって呼んでもツキのあの呼び方は変わんねぇよ。というか使わないからこそ、もうツキの中ではボスがボスって名前になっていってるんだと思うんだけどどう思う?」


「「「「「それだ!」」」」」


「うっせぇ!!」


 コソコソと話していた仲間達が一斉にジーを指差し、ボスが怒鳴る。


 ……そういえばレト兄もイーラさんも、もともとボスのことラックって呼んでたっすけどいつの間にかボス呼びになってたっすよね。ええ? それ俺のせいっすか?


 考えてみれば他にもレト兄達のようにボスの呼び名を変えた人達がちらほらといる。ボスの「徹底」との言葉と周りからの「強制」との言葉に周囲を睨みつけているボスをポケ~っと見上げた。


「俺がボスって呼ぶからみんなラック呼びはダメなんっすか? なんでっすか?」


「……お前に呼んでほしいからだ」


 名前をっすか?


 じっとボスを見上げていればボスもムスッのした表情でじっと俺を見下ろしてくる。


「ツキ、いい加減俺の名前を呼べ」


「…………」


 呼んでほしいからと周りに名前呼びを禁止する理由がいまいちわからない。だが、今のボスはとても名前を呼んでほしそうだ。


 ……んー……でも……。


「……」


「……おい。なんで口閉じんだ」


 ……だってっす……。


 呼べと言われるがそっぽを向いた。


「っツ――」


「……なにそれ。つまり、ツキさんに名前を呼ばれずやきもきしてるのに、周囲が簡単に自分の名前を呼ぶのが気に食わないから名前で呼ぶなってこと?」


「「「「「ぶっ! フレイちゃんその通り!」」」」」


「ええ?」


 なんっすかそのめちゃくちゃな感情論。


 黙っていたところで顔を伏せていたフレイ君が言った。それにモー達は吹き出し周りも頻りに頷いている。


 俺の名前呼びにどれだけの価値があるんっすかね?


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