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34.いつもの倍以上っす…
しおりを挟む「……流石ですね」
「うぅ……ごめんっす……」
シクシクシクシクシク……
街に来て数時間。スリに合うこと三回に(フレイ君が取り返してくれた)、当たって飲み物や食べ物をぶち撒けられること四回、馬の暴走に巻き込まれること一回。並んでるところをどこかからか現れた団体に押し出され、転がされ、またいざ別の所に並ぼうとした時には空いてたはずの列は目の前で行列となり、目の前で売り切れたりと、他にも大なり小なり様々な不幸が俺達に襲いかかる。街に来た時はわくわくとした様子だったフレイ君も、今は疲れた表情だ。
うぅ~ごめんなさいっす、油断したっすやっぱダメだったっす……。
いつもはここまで酷くない。せいぜい両手で足りるくらいのトラブルの数のはずが、俺もフレイ君ももうボロボロだ。いけると信じたが甘かったか……。
うぅ……でもこれ、いっつもボスが守ってくれてたってことっすよね?
何事もそつなくスマートにこなすのがボスだ。きっと俺が気づかないところで守ってくれていたのだろう。だからこそ俺も快適に街を楽しめていた。二回目だが、俺もフレイ君もボロボロなのだ。普段の街に来た時の倍以上の不幸が起こっている。もう現状への悲しさからとボスへのありがたさを再確認して涙が止まらない。ちなみにフレイ君は俺専用防具である腕輪はしていない。ボスが新しいのをまだくれていないからだ。
「はは……このくらい大丈夫ですよ。僕が街に来たいってお願いしたんですから気にしないで下さい」
「あい……」
フレイ君の優しさに救われながらシクシクと、さっきなんとか買うことができた串焼きオモチチを食べる。
うぅ……美味いっす……。
白くて丸いオモチチはモチモチとした弾力と仄かな甘さがあって美味しいが、ボスのことを思い出してしまった。……チラリとフレイ君を見る。フレイ君もだいぶ疲れているはず。それはフレイ君の顔色を見ても一目瞭然のこと。もしかしたらこのまま帰ろうと言ってくれるかもしれない。いや、言わなくてもそろそろ帰ろうと言おう。――そう決心したところで……
「それじゃ次行きましょうか。どこ行きますか? どこかいいところありますか?」
「え? まだ帰らないんすか?」
「はい! まだ遊びましょう?」
「……」
出端を挫かれるとはこのこと。これだけのハプニングに見舞われ、疲れた顔をしていながらもまだ帰ろうとはせず、他の場所にと思えるフレイ君の元気さに驚くと同時に感心した。なのでつい次の候補場所を言ってしまったが……
「えと、じゃあ教会とか行ってみるっすか? 綺麗っすし、女神様の像が飾――」
「絶対嫌。食べ物系周りましょう?」
「は、はいっす」
強気に否定された。
「――んー♪ 美味しい!」
それからまたぶらぶらと街を練り歩き、フレイ君はさっき買った赤いぷつぷつとした野々いちごを小さな袋から一粒とり出しパクりと頬張る。
「これ家でたまに出たりしますけど、こういうところで買って食べたりするとまた別の美味しさがありますよね。ツキさんは買わないでよかったんですか?」
「はいっモグす。このオモチチモグ、なかなかの曲者っすからモグモグ」
オモチチをモグモグ一生懸命食べながら一歩遅れてフレイ君のあとをついて行く。フレイ君の話、おおいに共感できる。俺も食べたかったがこのオモチチ、モチモチしてて美味しいがモチモチ具合がすご過ぎてなかなか食べられず、飲み込めないのだ。ンーって噛んで引っ張った時の伸びもすごい。
これ絶対小さな子どもとかお年寄りが食べちゃいけないやつっす。美味しいんっすけど危ないっすよこれ……。
一生懸命口を動かし、なんとか口の中に入っている分を飲み込みホッとする。顎が痛い。だが、手に持っている串にはあと三個もオモチチが刺さっている。
「…………」
じーっとオモチチを見ながら食べ終わるのにあとどれくらい時間が掛かるだろうかと考えた。
……こんなことなら三個だけ刺さってる串にすればよかったっす。なんで六個のやつ選んじゃったんっすかね?
自分でも不思議に思う。だが、同じようにオモチチを買ったフレイ君はとっくに食べ終わっているため、もしかしてこれは俺が食べるのが下手なだけなのかもしれない。
「……そういえばフレイ君。なんで髪と目の色変わってるんっすか?」
オモチチを見つめながら首を掲げていると、ふと視界に映ったフレイ君の髪にそう尋ねた。
別に現実逃避しようとしてるわけじゃないっすよ? ちょっと休憩っす。
「……え? 今ですか?」
信じられないという目で見てくるフレイ君。
俺もそう思う。だが、聞くタイミングを逃しちゃってたのとなんか馴染んできてしまっていたのだ。
「……これは魔法で変えてるんです」
「魔法っすか? 何の魔法なんっすか?」
「え? あー………………」
「?」
目だけを上に向け、横に向け、それから目を瞑ったフレイ君は、「あ」っとすぐに何かを思い出したかのような声を上げて目を開けた。そしてまた上に目を向けて「よし」と一つ頷く。
「これは変色魔法ですね」
「変色魔法? なんすかそれ?」
「色を変えることができる魔法です」
「なるほど」
読んで字の如くの魔法だ。初めて聞いた。魔法に関してはボスが「下手なこと教えたらお前魔力暴発させるだろ?」と言って教えてくれないため、あまり使えないし知らないのだ。でも、なんとなくの知識と攻撃系の魔法は少し知っている。ボスがその類の魔法書をいっぱい持っていたため、小さい頃俺もコソッと読み試してみようとしたことがあったのだ。やはり使ってはダメだと言われると人間使いたくなってしまうものなのだ。……まぁ、すぐにバレてしまったが。
いや~あの時のボス達の焦りようはすごかったっすよね~。
急遽、「魔法は危険」講座が始まり、その講師たるモー達に懇々と諭されたのだ。それでも使ってみたいと言った俺にボスが使わせてくれたが、軽く爆発してしまい、髪がボワボワになって地面も軽く陥没してしまったのは今となってはいい思い出だ。俺もあれで魔法の怖さを知ったし、俺に攻撃魔法は合わないと知れたいい機会にもなった。
……まぁ、それからボス達も余計に絶対俺の目に触れさすところに魔法関連の本は置かなくなったっすしね……。
っと、話を戻そう。
「それって元の色にはその魔法を解けば戻れるんっすか?」
「もちろん!」
「その魔法って何色にも変えられるんっすか?」
「できますよ?」
「! じゃ、じゃあボスの色とかでも?」
「できますよ。今度かけてあげましょうか?」
「! いいんっすか!」
俺の言いたいことなどフレイ君には全てお見通しだった。
……ボスとお揃いっす!
想像するだけで楽しくなってしまう。ボスも仲間達もきっとみんなびっくりするであろう。なんていったってお揃いなのだ。俺もボスみたいにかっこよくなれるかもしれない。
それに、髪とか瞳とか色が少し変わるだけでいつもと雰囲気がガラッと変わるため、かくれんぼや仲間達へのドッキリを仕掛けるのにも使えそうだ。染め粉はあるけれどなんとなく不自然な色合いになるし髪もパサパサするしで、自然な色合いに、他どこにも色もつかず簡単に色を変えられるというのはすごくいいと思う。一回子どもの頃に何故かモー達が持っていた染め粉を内緒で使って酷い目にあったことがあるからこそ、なおさらそう思う。
「いいっすねその魔法! 魔法を解除しない限り変えたままにできるってのもいいっすし! 途中で解けないっていうのもいいっす!」
「そうですね。自分で解くか看破魔法を持っている人がいない限りはこの魔法は解けませんし見破れませんからこういう時便利といえば便利ですね。看破なんて魔法、こんな街中で歩きながら常時使っている人なんてそうそういないでしょうし」
「そうっすね~」
看破魔法は知ってる。仲間にも何人か使える人がいるから。確かにフレイ君の言う通り、街の関所や罠だらけのダンジョンとかならいざ知らず、街中をただ歩くだけで常時看破の魔法を発動させている人なんてそうそういないだろう。何を見破ろうとしているのかという話になるし、これならフレイ君の正体も絶対バレずに安心して過ごせ……ん?
「……え?」
……あれ? 今なんて言ったっすか?
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