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35.大切なことは言っちゃダメっす!
しおりを挟む「フ、フレイ君、い、今なんて言ったっすか?」
「え? 僕の魔法は自分で解くか看破魔法を持っている人がいない限りは大丈夫って――」
「ああ!! ごめんっす! 全部は言わなくていいっす!!」
「えぇ……?」
ああ……これはやばいっす!
急いで辺りを見渡し確認する。
ま、まだ大丈夫そうっすかね……?
「ツキさんどうしたんですか? もしかして看破持ちがその辺にいると思っているんですか? ふふ。そんなわけないですよ。いたとしてもそれを常時発動してる人や僕に魔法をピンポイントで使ってくる人なんて流石にいませんよ」
「ああ~! ダメっすよ! なんでそういうこと言っちゃうんっすか!」
「心配すぎですよ?」と微笑むフレイ君はめっちゃ可愛いっす! けどそんなフラグ立てちゃったら絶対来ちゃうっすよ!! 俺のこと舐めちゃダメっす!!
「――おい!! いたぞ!! あいつ晴天族だ!!」
「「!?」」
ほらっ!! 来ちゃった!!
「うわっツキさん!?」
声がしてすぐに俺はフレイ君の手を掴んで走り出した。相手がどこの誰かはわからないが晴天族を探しているということは悪い奴らの可能性が高いからだ。
っだって晴天族なんて俺もボスもイーラさんも知らないっすもん! 他のみんなに聞いても知らないって言ってたっすのに「晴天族だ!」って叫ぶ奴なんてフレイ君の知り合いかフレイ君を誘拐した奴等のどっちかしかないっす!
そのどちらかとなれば、フレイ君の知り合いなら種族名ではなくフレイ君の名前の方を呼ぶだろうし、呼ばないということは後者の可能性が圧倒的に高い。もし違うとしても今は怪しいと思うなら逃げるべきだ。
「あ! 待てお前ら!! おい追いかけるぞ!!」
「ああ!」
「そんな……どうしてバレて……」
「ごめんなさいっす! たぶん俺のせいっす!
「え?」
目を丸くさせ、後ろを見ているフレイ君に謝りながら俺も後ろを向き確認した。追ってきているのは男二人だけのようで、距離も少しある。このままどこかの路地へと入って逃げれば撒けるかもしれない。
「ツキさんのせいってどう言うことですかっ?」
「それはっ――」
「おいっ、でもあいつが本当に晴天族っていうやつなのか? 聞いてた色合いと違うぞ!?」
「ふっ俺の看破を舐めるなよ? あの人の言う通り常時使っててよかったぜ! ……まじ魔力無くなって死ぬかと思ったわ」
はい! 説明ありがとうっす!
「看破……常時……」
「そういうことっす!」
ああーっこんなことならフレイ君にちゃんと説明しておけばよかったっす!
何故事前に注意事項を伝えていなかったのか後悔した。こういうバレてほしくない時にそのバレる方法を絶対に俺に話してはダメなのだ。昔から「こうしなければ」「こうならなければ大丈夫」と言われたことの「こう」を高確率で引き起こしてしまうのが俺だ。だからバーカル達関連のことも考えないようにしていた。嫌だなと思いながらいたら高確率で遭遇してしまうから。……さっきフレイ君は、「看破持ちが常時、魔法を発動させていない限りは」と言った。俺も思ってしまった。だからフラグ回収の如く常時魔法発動中の看破持ちが来てしまったのだろう。
「え、ええ……? それも不幸体質の一環ですか?」
「たぶんそうっす! ほんとごめんっす!」
これも体質の一環。そうなのだ。これがあるから俺はボスの役に立てないのだ。せっかく立てた計画やら作戦も、俺が聞いて仕舞えば台無しにしてしまう可能性が高いから。だから俺は、ボス達が俺に黙って行こうとするのを察知してバレないようにボス達のあとをコッソリとついて行くしかないのだ。何もわからないまま、情報は進みながら手に入れる。
邪魔しちゃうかもと思っててもやっぱり仲間に入れてもらえないのは寂しいんっすよ!!
そんな俺の厄介な体質だが、何も悪いことばかりではない。ボスはそれを逆手に取って相手を罠に嵌めたり、倒したりと色んなことに使ったりする。その結果、見事逃げようとしていたバーカル父を捕まえたことがあるくらい俺の体質は使い方によっては有効で便利なものでもある。
一発で店を潰せるような奴隷商売の証拠は出てこなくとも、バーカル父は結構な悪さをし逃げていたため、姉さんから指名手配され、ボスがその行方を追っていたのだ。そして、俺の体質を利用することによってそんなバーカル父を捕まえることに成功したのだ。もちろんそれは俺には内緒でのことだった。だって知っていたら作戦が成り立たなくなってしまうから。だからイマイチ何がどうなってそうなったのかはわからないままに全てが終わっていたが、そんな感じでボス達が俺の体質を使う時は俺にバレないように、自然に作戦の一部に組み込まれ使われる。本当に気付かない。のほほんとボス達に言われるがままに行動し、「悪りぃな。助かった」と言われてから気付き教えられるのだ。
……ボスってちょっと狡猾なところもあるんっすよね。使うって言っても俺が危険に晒されるようなことには使わないっすし、終わったあとにはお菓子もくれるっすから別にいいんっすけどね? だけど……
一度だけ、そのバーカル父を追う際にガッチガチの筋肉モリモリの人を食う凶暴な魔物、 魔人喰悪鬼の群れに襲われたことがあり、結構なピンチに陥ってしまったことがあった。そこには俺とバーカル父しかいなく、怖かったがボスはちゃんと助けに来てくれて俺を守ってくれた。……こんな俺でもボスの役に立てるのならいつでもどんなことにでも使ってくれてもいいと思うのに、ボスはその件があって以降、仕事では俺の体質を全く使わなくなってしまった。
……使ってもいいっすのにね。じゃないと俺…………ん? あれっす?
過去のあれやこれやを思い出していると、ふとなぜバーカルは俺のことが好きなんだろうと疑問に思った。バーカルの父を捕まえ、牢に入れたのは俺とボス達だ。もしや、あの好きは憎しみからの裏返しによっての発言なのだろうか……。
「……いやいやいやっす」
頭を振る。
今こんなこと考えている場合じゃないっすよね。逃げることだけに集中しないとっす!
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