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1.私の名前は

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 私の名前はユユ・ミーティア。ミーティア男爵家の次女として生を受けました。私の上にはお兄様が1人とお姉様が1人います。


 この世界には7歳になった年に教会に行き、お祈りをすることで必ず1人につき1つ以上のスキルが付与されます。それは魔法や武術に関するものであったり、鍛冶や裁縫など仕事や日常生活に関するものなど様々です。


 スキルを持っていなくとも魔法や武具などを扱うことはできますがやはりそのスキルを持っている、いないで習熟度に大きな差が生まれます。中には転移のようなその人しか使えないような貴重な特殊スキルを付与されることがあるので7歳の年のこの付与式はとても注目が高いものとなっています。



 そんな皆さんが注目する中、お兄様は話術と影魔法(上級)、お姉様は付与と爆破魔法(上級)というとても優秀なスキルを頂き、その他にもいくつかのスキルを頂いていました。そのため、私も周りの皆さんから期待されていました。


 …ですが、私に付与されたスキルは「***リープ※1回のみ」と「回顧」というよくわからないもの2つだけでした。あまり見かけないスキルであり、特殊スキルではありますが、「***リープ」は使い方がわからないことに加え1回しか使えないこと、「回顧」もただ自分の過去を見る事ができるだけと言うことで周りの方達の落胆は兄姉のことがあったため大きかったようです。

 
 貴族にとってはいかに使えるスキルを頂くかが重要です。いくら特殊スキルを授かろうともそれが使えないものであったのなら嘲る対象となります。


 そのため、私のスキルのことはすぐに面白おかしく周りに広められることとなり、私が役に立たないスキルを付与されたと嘲笑われ、蔑まれることが多くなりましまた。


 それに加え、私は魔法系統のスキルを頂くことができませんでしたがスキルを授かった後もお兄様やお姉様に負けないように魔法の訓練をしていました。でもそれは他の方にとってとても惨めなものに映ったのでしょう。その姿さえ滑稽なものとして笑われ馬鹿にされてしまいました。


 ですが途中から「回顧」は自分の過去を相手に見せたり相手の過去も見ることができると知られると今度は一気に人が近寄らなくなりました。私に近づくことで勝手に過去を覗き込まれては堪らないと陰でクスクスと嗤いながらお話ししているのを聞きました。そこからは遠くから笑われることが多くなりました。


 そんな中でも両親や兄、姉は優しく接してくれていました。ですが、どこか腫れ物を触るかのようにいつも気を使っているのです。今はそんなことはありません。ですが、小さかった私には家族のそんな態度に酷く傷ついてしまったのです。…家族も私が役に立たないスキルを頂いたと思って同情しているのだと。そしてスキルを使うことを恐れているのだと思ったのです。


 そこからです。私はいつも他の人の顔色ばかり窺っていました。嗤われるのが怖くて拒絶されることが怖くてこんな私がと初めから諦めてばかりいました。


 お茶会やパーティーに招待されても隅に寂しく1人、私に向けられる嘲笑う声を黙って耐えるだけです。そんな私には当然婚約者などいません。私ももう18歳です。明後日には学園を卒業する身。そうなれば何時迄もお父様達に甘えている訳にはいきません。これからどうなるのか、漠然とした不安がありました。


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