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27.記憶
しおりを挟む「旦那様、奥様は大丈夫ですか?」
私がなんとか笑顔を作ろうとしていると、さっきロゼリア様を引きずっていっていたローレンさんがもう戻ってきました。
「私は大丈夫です」
「ユユ、本当に大丈夫なのか?」
「はい」
「そうか…。ロゼリアは?」
「ロゼリア様ならまだ色々と喚いていましたが無理やり馬車に押し込んで帰しました」
「そうか。あいつには困ったものだな」
「本当ですね」
「せっかくいい雰囲気だったのに…」
「残念でしたね笑」
「…おい笑うな」
「大丈夫ですよ旦那様」
「またチャンスは来ますよ」
「「ふふ」」
「……お前らなぁ」
旦那様はローレンさんやランさん達に笑われてしまい肩を落としてしまわれました。本当に皆さんとても仲が良さそうです。そんな皆さんに私も楽しくなってきてしまいます。
「ふふ」
「ユユ?どうしたんだ?」
「「「奥様?」」」
急に笑い出した私にみなさん不思議そうな顔をしています。
「ふふ。すみません。あまりにも皆さん仲が良さそうだったので。どうしてそんなに仲がいいんですか?」
私の言葉に皆さん目を合わせます。
「そうだな。私達は皆子どもの時から一緒に育った仲だからな」
「え?ランさんやラミさんもですか?」
「ええ、そうです。私達は幼少の頃生き倒れていた所を」
「旦那様に拾って頂いただいたんです」
「そうだったんですか…」
「はい。だからこそ旦那様に恩があります。ですが」
「旦那様は私達の主人でもありますが、勝手ながら弟のようにも思っておりますので」
「っおい!弟ってどう言う意味だ!お前達の方が私よりも年下だろう!!」
「はは、それは仕方ないですよ。ーー旦那様はあまり固すぎるのは好きじゃないみたいで昔はよく私達が他人行儀すぎると言って泣き出すことが多かったんですよ」
「っローレン!いつの話をしているんだ!」
「泣き出すですか?」
「はい。本当にもうそのだだの捏ね方がすごくて…。だから私達も人目がないところでは普通に接するようにしているんです」
「…ローレン。お前はもう少し敬いを持って接しろ」
「ああ?いいだろ別に」
「……素がでてるぞ」
「…そうだったんですね」
何だか少し羨ましいお話しです。
「まぁ旦那様はしっかりしているようで抜けている所もありますからね。特に恋愛に関しては」
「「うんうん」」
「…お前らなぁ」
「だけどそんな旦那様を俺たちは慕っていますし、尊敬もしています。だからこそこの命に変えても守りたいと思っているんです。それほど私達にとって旦那様は大切なお方なんですよ」
大切…
「~~~///」
「ん?何だ?照れてんのかヨルト?」
「やっぱり旦那様は可愛いですね」
「やっぱり旦那様は揶揄いがいがありますね」
「~~黙れお前ら!!」
そう言って旦那様は顔を赤くしながらニヤニヤと笑っているローレンさん達に文句を言っています。その光景はとても微笑ましいものに見えます。ですがどうしてでしょうか?私の心が晴れません。それよりもさっきより不安が渦巻いています。
ローレンさん達は旦那様のことがとても大切だと仰いました。では何故『あの日』、旦那様が死んでしまった日に皆さんはいなかったのでしょうか?
ドクンッ
また、私の身体が震えてきます。それでも思い出さずにはいられません。
「ん?奥様?」
「どうしたんだローレッ!ユユ!!」
「「奥様!?」」
青ざめ、身体の震えが止まらない私に皆さんが焦ったような声を出して駆け寄ってきます。本当なら大丈夫だと言わなければならないのに、皆さんに声をかける余裕すらありません。次から次へと『前』の出来事が思い出され、とうとう膝から崩れ落ちてしまいます。
「ユユ!大丈夫か!?どうしたんだ!!」
「っおいラン!ラミ!すぐに医者を呼んでこい!!」
「「はい」」
「ヨルト!お前は奥様を部屋に連れていけ!」
「っわかっている!ユユ大丈夫だからな」
そう言って旦那様は私を抱き上げます。焦る皆さんをみて私は何故今まで思い出さなかったのか後悔で涙があふれます。
…そうです。『あの日』あの場に皆さんがいなかったのは当然です。だって『あの日』よりも前にローレンさんもランさんもラミさんも皆さん亡くなってしまっていたのですからーー。
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