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12.知っています

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「…すまないな嫌な気持ちにさせてしまって」


「気にしないで下さい。私は大丈夫です」


 あれからロゼリア様は追いかけてくる様子はありませんでしたが、ヨルト様に元気がありません。


「旦那様、奥様お帰りなさいませ」


「旦那様はどうされたんですか?」


「…実はーー」


 そのままランさん達が待っている馬車の所まで戻りましたが元気がないヨルト様の様子にお2人ともとても不思議そうに尋ねてきたため、さっきあったことをお話ししました。


「ーーということがあったんです」


「…なるほど。それは災難でしたね…」


「まだロゼリア様がこの辺を彷徨いている可能性もありますしこれからどうされますか?」


 確かにまだロゼリア様がヨルト様を探している可能性はあります。


「…そうだな。少し早いがあの場所に向かうか」


「…あの、ヨルト様は大丈夫なのですか?」


 ヨルト様は御者さんの所に次の場所を伝えに行こうとしますが、おじいさんに言われた「厄介なもの」という言葉に心配になってしまい、ヨルト様を呼び止めます。


「ん?何がだ?」


「さっきおじいさんの言っていた…」


「…ああ大丈夫だ。害はないと言っていたし、それほど急を要するものではないだろう。帰ったらきちんと診てもらうさ」


「…でも…」


「…そんなに心配しなくても大丈夫だ。どうしても今日、君を連れて行きたい場所があるんだ」


「連れて行きたい場所ですか?」


「ああ。次はいつ休みを取れるかわからないからな。だから頼む。一緒に行ってはくれないか?」


「……わかりました」


「!ありがとう!では、ここで待っていてくれ」


 私の言葉にヨルト様は嬉しそうに今度こそ御者さんの所に行くと次の目的地を伝えました。少し心配はあるものの確かにおじいさんも害はないと言っていましたし、ヨルト様の仰る場所にも興味があります。


「さぁ、行こうかユユ」


「はい」


 私を馬車に乗せるとヨルト様も乗り込み出発しました。


 移動する間、ヨルト様とお話をしたり、ランさん達にイヤリングを買った時のお話をしているとあっという間に目的地に着きました。


「さぁユユ。おいで」


「はい。……ここは」


 ついた場所は少し山を登った辺りにある整備された場所であり、そこには色とりどりの花が咲いていてとても素晴らしい場所でした。


ドクン

「素晴らしいだろ?ここの花畑は」


ドクンドクン

「私も近くにこんな場所があるだなんて知らなかったんだがこないだ部下に教えてもらってな。君と一緒に来たかったんだ」


ドクンドクンドクン

「気に入ってくれたか?」


 いけません。早く答えなければ…


「は、はい」


「そうか。よかった…では行こう」


 私の言葉にヨルト様は微笑むと私の手を握り。歩き出します。


ドクンドクンドクン

 心臓がとても嫌な音を立てます。


 ……私はこの場所を知っています。『前』にも来たことがあるこの場所を…。でも、どうして?
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