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9.モヤモヤ
しおりを挟む私が嫌だというのを全く予想していなかったのでしょう。お2人とも驚いた表情を見せています。ですが、私の意見は変わりません。ここで大人しくじっとしているだけなんて嫌です。
「…ユユ?」
「…奥様?」
「私も何かお手伝いします」
「何を言っているんだ!君はここに…」
「どうしてここにいないといけないのですか?」
「…それは…ユユ、よく聞きなさいこの間のキメラの時と状況は全く違う。君が来たとしても何もできない」
「それはわかっています。ですが、このままここでじっとしておくことなんてできません。ローレンさん他の使用人さん達はどうされているのですか?」
「…他ですか?…今2階の広間に集まってもらっている所です」
「なら、私もそこに行きます」
「ダメだ!」
「どうしてですか?私はちゃんと他の皆さんと待っているといっているんですよ?何故ダメなのですか?」
「……それは。…万が一のこともあるだろう。もし屋敷の中に魔物が侵入した場合の時のことを考えるとこの部屋が1番安全だ」
確かに『あの日』屋敷にも何体かの魔物が侵入していました。そして、そのために何人かの使用人の方達が亡くなってしまわれていました。でも、だからこそこの部屋で1人ぬくぬくと守られていることなんてできません。
「「旦那様、ローレン様そろそろ…」」
「…わかった。ユユ時間だ。すまないが話はここまでだ。絶対にこの部屋から出るな」
「ヨルト様待ってください!まだ話は終わっていません!!私も皆さんと一緒にいます!!」
「だからダメだと言っているだろう」
「どうしてですか!?ヨルト様達の邪魔はしません!ただ他の皆さんと一緒に待っているだけです!」
「それでもダメなものはダメなんだ」」
「ですが!!」
「っユユ!!いい加減にしろ!!」
「ビクッ‼︎」
初めてヨルト様にぶつけられた怒気に思わず固まってしまいます。いつも優しいヨルト様しか知らないため、初めて向けられた怒りの感情に涙がこぼれてしまいます。
「…っすまない。ローレン後は頼んだぞ」
「………」
「…はい。ーー奥様大丈夫ですよ。旦那様はこの命に変えても必ず護りますのでご心配なさらないでください」
涙を流す私にヨルト様は一瞬後悔するような表情を浮かべた後苦い顔をして部屋から出て行ってしまいました。そして、ローレンさんも最後に私に微笑むとヨルト様の後について部屋から出ていきます。その姿が『前』の時と重なって見えました。
パタン
「………っあ、待って下さい!」
部屋の扉が閉まる音にやっと正気に戻った私は急いで扉に駆け寄りますが、どれだけノブを回そうとも扉は開きません。
ドンドン
「ヨルト様!ローレンさん!ランさんラミさん!開けてください!!」
ドンドン
「ヨルト様!」
……返事がありません。
「…やはりこちらも開きませんか」
やっぱり窓も開きません。
「………」
…ヨルト様が怒鳴ってしまったのは仕方がありません。魔物に屋敷を囲まれていていつ襲ってくるかわからない状況なのでしょう。だからこそ私の聞き分けのない様子に焦ってしまったのでしょう。だけど
モヤモヤ
何でしょう。何だか胸がモヤモヤします。そうわかってはいるんです。わかっているんですがあんなに一方的にダメだと怒鳴る必要はあるのでしょうか?私を1番に守ろうとしてくれることは嬉しいですが、部屋をロックするなら他の方とも一緒でもいいはずです。
モヤモヤ
…これはきちんとお話しなければいけません。
ガサゴソ
「確かここに…!ありました」
『前』の経験を活かし、ちゃんとこの施錠を解除する魔道具をお姉様にお願いして用意してあります。流石に施錠の解除となると専門の方に頼まなければいけなかったのでそういう方に伝手を持っているお姉様にお願いしました。そのせいか何故そんなものがいるのかと長い手紙が来ましたがきちんと閉じ込められるかも知れないからと説明しました。でなければ何かよからぬことに使うと誤解されてもいけないので。
「えーと…確かこれに魔力を流して…扉に…バチンッっつぅ」
大きな音がした後、少し衝撃がきましたがこれで…
ガチャ…キィー
開きました!
「確か…皆さん広間に集まってらっしゃるんですよね」
私はそのまま人気のない廊下を走り、急いで広間に向かいます。そして広間に近づくに連れて話し声が聞こえてきました。
「ーーだーさーーが」
「ーーなーと!?」
!よかったまだヨルト様達はいらっしゃるようです!
応援ありがとうございます!
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