恋する乙女なロリ魔王は『百万回のキンキン』を経て、勇者に恋をする。~交わした剣の数だけ募る想い。~アイ・ラブ・キンキン!

おひるね

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15 キンキンの末に──。

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「あいつら皆殺しにしたら勇者はどう思うかな?」

 ふと、魔王様がこんなことを口にした。
 心中お察しいたします。

 愛する者を奪われ、あまつさえ揶揄の数々。
 こちらに是非がないとは言え、二人は通じ合っていたのです。それを引き裂いた──。

「どうでしょうかね。やらなければ私たちがやられるだけですから、仕方のないことだと思うのではないでしょうか」

 実際、ここまで事が進んでしまってはもう……。

 勇者との約束を果たすことだって、もう……。

「それは違うよルー君。なんとなくだけど、わかるんだ」
「じゃあどうするというのですか?」
「少し話してみようではないか」

 魔王様は人間に何かを期待しておられる……。そもそもとして、話が通じるのであれば今日この場に大部隊で構えたりしていないでしょうに……。

 それでも、ここは魔王様の気の済むようにさせてあげましょう。私は執事。魔王様に付き従う者──。

 人間たちよりひとつ高い場所に姿を見せると、これみよがしに扇子を広げた。

「聞け愚かな人間どもよ。妾は魔王である」

 おお!
 これはなんと!!

 ま、ま、ま?! 魔王様がご自身のことを妾呼びしておられる!!

 しかも扇子の使い方まで御達者だ!

 いつのまに……こんなにご立派になられて……!!

 「噂には聞いていたがまだ子供じゃないか」
 「あのポンコツレオンのことだ、情でも湧いたのだろうな」
 「こんなガキ、早くやっちゃいましょうよ」

 愚かしい。愚かしいぞ人間ども。
 魔王様が今まさに、妾呼びという大人の階段を一歩登ったというのに! なんというガヤを飛ばすか!!


「聞いたかルー君? 勇者のことをポンコツと言いよった」
「ええ。本当に愚かな種族です」

 こんな時でも勇者のことなのですね。

「そこはルー君! 但し勇者は除いてな! って付け加えなきゃおかしいだろ! 勇者も人間だ!」
「これは失敬しました魔王様……!」

 勇者の話になると笑顔が戻る、のか。

 そんなことを思っていると、大きな号令が鳴り響いた。

 「放てーー!」

 私が「え?」と思った時には既に極大魔法の類が、それはもう嵐のように迫って来ました。

 あ。終わった。

 そして無残にも直撃──。


「こんなものか」

 死を覚悟した私は、もうてっきり死んだものだと思っていたのだが、なんと魔王様が右手のひらを出し、なにやらバリア的なもので全攻撃を防いでいた──。

「なっ──。魔王様?」

 その表情は余裕に満ち溢れ、時折あくびをする始末。これはいったい……? 

「うすうすそんな気はしていたんだ。たぶん歴代最強クラスに強くなってしまった、とな。それは勇者も同じこと」

「な、なんですと? 左様にございますか?」

「うむ。だってほら、これがきっとあいつらの全力なのだろう? 屁の河童ってやつだルー君」

「確かに。魔王様のこのバリア的な何かの前に成す術ない感じですね!」
「うむ。ちょっと強くなりすぎちゃったのかも!」

 なんと大胆なことをこうも呆気なく言ってのけるとは……魔王様、さすがです!

「たぶんなのだが、この力差だとこんなこともできちゃうと思う」

    『「跪け」』

 そういうと魔法を放っていた者、その場にいるすべての者が一斉に跪いてしまった。

 な、な、な、なんと?!

 だって私も跪いちゃってるのですから、これはもう驚くしかないでしょう?! ……うぐっ──。


「ほら、全員跪いちゃった。レベル差ってやつだと思う。あああ! ルー君まで跪かせちゃった! ごめん!!」

「いえ、な、なんのこれしき……。しかしこれは素敵な未来が見えましたぞ?」

「そんなもの今となってはもう。勇者が居ないのでは、望むこともあるまいて」

 やはり、どこまでいっても勇者なのですね。

「勇者との素敵な未来にございます!」

「な、な、な、なんだとぉぉおお? 嘘だったら怒っちゃうぞ? いいのか?! 魔王権限で怒っちゃうぞ?」

 一瞬でお顔に笑顔が舞い戻った。

 いやはや、これはなんとしても勝ち取りましょう。魔王様の絶対的力を持ってすれば不可能などございません!!


 ◇


「ひとつだけ確認したいのですが、勇者も魔王様と同じくらいに強いのですよね?」

「うむ。勇者は強いぞ! たぶんなのだが、毎日キンキンしてたせいで、知らず知らずの内にお互い強くなっちゃった的な感じだと思う!」

「ずいぶんとあやふやで適当ですね……」

「そんなこと言ったってわたしだってびっくりしてるんだ。たぶんこれな、死ねって言ったらみんな死ぬやつだぞ! なんでも言うこと聞いちゃう感じのあれだな! あれ!」

「な、なんとも恐ろしい……」
「わたしだって怖いよ! いきなりこんなことになって! どーすんのさルー君!!」

「その点につきましては、お任せください」

 いやはや、まさかこれほどまでとは。
 死ねと言ったら死ぬって、もう神に等しき存在ではありませんか。

 ということはつまり、大概のことは命令として下せるということ。

 ならば!
 魔王様にとって最高の未来へと導きましょう。

 悪魔大執事ルシファー。
 ずっと魔王様のお側に仕えて見てきました。

 
「即席ではございますが、プランCの発動を宣言いたしましょう」
「うむ!!」

「魔王様は一語一句漏らさずに私の言うことを復唱してください」

「魔王様は一語一句漏らさずに私の言うことを復唱してください」

「そういうお約束はやらんでいい!!」

「はうっ。こ、怖いってルー君。でもこの感じ、ノリノリだな! ノリにノッておるな! いつものノリノリなルー君だ!」
「当然にございます。それでは、プランCの開演といたしましょう!!」

 ◇ ◇ ◇

 そこから少しばかし、黒い炎なんかを出したりして人間たちに絶対的強者たる力を誇示してもらいました。

 跪いて動けず、その黒い炎は魔王様の気分ひとつで以下用にもできてしまう。そういう恐怖と支配を多分に植え付けたところで、お膳立ては終了です──。

 さぁ、プランCスタートです!

 ◇

「断言してやろう。うぬらが寿命を全うするまで力を欲し努力をしたとて、妾の足下にも及ばん。無駄な努力などせず、畑を耕し家庭をもつのだ」

 「わ、わか、わかりました。畑やります!」
 「俺も畑をやります!」
 「私も畑やるわ!!」
 

 「(ねえ、ルー君。これなに?なんで畑なの?)」
 「(いいですからそのまま続けて)」
 「(まあ、ルー君がそういうならいいけど)」


「うむ。その誓に嘘偽りはないな?」

     「「「はい!」」」

「畑は大好きか?」

     「「「大好きです!」」」

「大根は大好きか?」

    「「「大好きです!」」」

「ならばたくあんを作れ!!」

      「「「はい!」」」


「うぬらのその想い、魂に刻んでやろう。祈れ、畑をやって温かな家庭を築きたいと。大根が好きでたくあんを作ると、願え! 祈れ! 魂で叫ぶのだ!!」


 おそらくはここに居るのは精鋭たち。
 人類を代表する最強の使い手たち──。

 いつ魔王様に仇なすとも限らない。本来なら殺してしまうのがセオリーでしょう。

 しかしそれでは恨みの連鎖に拍車が掛かる。
 なにより勇者が守ろうとしたその想いに背くことにもなる。

 あの日、勇者と最後に言葉を交わした日。
 あの言い振りから察するにおそらく彼なら魔王様を討てたのでしょう。

 でもそれをしなかった。

 ならばその想いに報いるのが悪魔大執事ルシファーの務め。

 あの日交わした約束のために──。


 
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