恋する乙女なロリ魔王は『百万回のキンキン』を経て、勇者に恋をする。~交わした剣の数だけ募る想い。~アイ・ラブ・キンキン!

おひるね

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 その日の夜。
 なんのことなしに魔王様は帰ってきました。

「あ、あっ! 明日こそほっぺにちゅうするから!!」

 明日など、もうないというのに……。

「そうですね魔王様。今日は日頃の疲れを取るように、ゆっくりとお休みになってください。来たるべく明日に備えて」

「うむ!! ってそれだけ?! ルー君どしたのさ? いつもの小言はどうした?!」

 私としたことが、これでは感づかれてしまいますね。

「明日は一張羅で行きましょう。お召し物の準備をしておきますので、いつもより早く起こしに参ります」

「うむ! ヨレヨレのTシャツだな!」

 魔王様……。なんて健気な…………クッ。
 ここは話を合わせて、今日はゆっくりしてもらいましょう。

「はい。そうでございます!」

「うむ! がんばる!!」
「では、また明日──」

 ◇ ◇

「なんだ! この服は!!」
「着物でございます」

 今日、勇者は来ない。
 普段のうさ耳リュックにパーカー姿では舐められてしまう。

 かと言って魔王様は魔王衣装をひどく嫌う。

 そしてなにかとピンクを好む。この魔王城が華やかなお城になってしまったように。

 ならばここは、古代より伝わる和をテイストにした、かの歴代最強魔王の衣装で迎えてやりましょう。

「ヨレヨレのTシャツはどうした?! それにこの武器はなんだ? 邪剣クロスソードじゃなくていいのか?」
「ええ。扇子と呼ばれるものでございます」

「う、うむ。なんだか動きづらいな……」

 馬子にも衣装とはよくいったものです。

「魔王様、とてもよくお似合いでございます」 
「そ、そうか? まあルー君がそういうなら今日だけ特別にこれで行くか! 早起きしたし!」

「ありがとうございます。では、参りましょう」

「え? ルー君も来るの? どゆこと?」
「今日は特別な日ですから。ご一緒させていただきます」

「な、なんだ? ひょっとしてサプライズか? サプライズなのか?」

「ええ。そんなところです」

 ああ。言えない。言えるわけがない……。

 ◇ ◇

 そうして勇者との決闘場所、空中闘技場が見えるところまで来ると、その異変に絶句した──。


 ああ、なんと。協定をこうも軽々と破ってきましたか。魔法団体が……ひーふーみー……この数、ガチで潰しに来てます。

 総勢、千人は軽くいますね。空中闘技場が上も下も満員状態とは。

 なんとも、愚かな。これはれっきとした協定違反だぞ。奴らは何も知らずに来た魔王様を全勢力でもってして、一気に叩き潰すということか……。

「なんじゃあれは? お祭りでもあるのか?」

 なにを呑気なことを……。
 いや、こればかりは仕方のないこと。まさかにも勇者が来ないなどと、思っていないのですから。

「魔王様。お気を確かにお聞きください」
「おっ、ひょっとしてサプライズなのか?」

 ああ、言いづらい。
 言いづらくて言いづらくて、いっそ言わないでこのままにしてあげたい。

 でも、時は待ってはくれない──。


 ◇ ◇ ◇


「あぁ、なんだそういうことか。わたしがほっぺにキスをするのをためらったせいで、ルー君のいう通りになっちゃったのだな」

「ええ。左様にございます。どうなさいますか?」

「勇者は元気にしておるのか?」
「確かなことはわかりませんが、おそらく幽閉されております」

「そっか」
「魔王様。お気を確かに」

「わたしが、キスするのをためらったから。キスさえしてれば……」

 あくまでキスは第一段階なので、キスをしてもこの未来は避けられませんよ。とは言える雰囲気ではありませんね。

 さてはて。どうしたものか。
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