幼馴染に告白をしたら「ごめーん。勘違いしちゃったよね!」って軽いタッチで振られ「まっ。今までどーりってことで、よろしく~!」と、肩を叩かれた

おひるね

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第8話 ラブパワー注入☆

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 「みゆきぃぃいい!!」

 海に向かって彼女の名前を叫ぶ男。
 その姿をみゆきちゃんと思しき女性が、トキメキながら見つめている。
 
 「みーゆきぃぃぃ!!」
 「みーゆーきぃぃ!!」

 そして彼氏が三度、叫び終わると──。

 「すきぃ! だぁいすきぃ!」

 みゆきちゃんと思しき綺麗なお姉さんが彼氏に抱きつき、人目を気にせず……キッス! キッス! ぶっちゅっちゅーッ!

 ……やばい。想像以上にやばいよ。なんだよ、此処。

 やってくれたな、花純……。
 こんなところに連れて来やがって。あまつさえ俺をひとりにするなんて……。

 恋愛岬に着いて早々、花純はお手洗いに行ってしまった。……かれこれ10分以上は戻ってこない。

 俺は大海原を一望できるベンチに腰を掛け、花純の帰りを待っていた。

 「マー君まじ格好良いよぉ……。ねえ、わたしもう我慢できないかも……」
 「次はみゆきが俺の名前を叫ぶ番だろ? ちゃんと言えたら今夜も可愛がってあげるから、頑張ってこい!」
 「わたしのマー君への愛は、ラブパワーなんてなくても一生ものなんだぞ?☆」
 
 もうやだ。聞きたくない。聞きたくないよ。

 ……これも花純の思惑なのだろうか。
 ひとりで居るのがあまりにも心細くて、花純の帰りを待ってしまっている自分が居る。

 頼むから早く戻ってきてくれよ……。

 「ねぇ、キスして?」
 「さっきしてやっただろ?」
 「もう一回して欲しいにゃん……」
 「仕方のない子猫ちゃんだな」
 
 本当にやばい……。頭がクラクラする。

 見渡す限り──カップル! カップル! カップル!

 そして誰かしらが海に向かって愛を叫んでいる状況が、あまりにも辛すぎた。

 「ケンジぃぃいい!!」

 先ほどのみゆきちゃんと思しき綺麗なお姉さんが等身大の愛を叫び始めた。……結局、ラブパワーもらうのかよ。

 しかし意外にも、冷静な男の声が耳に届いた。

 「やっぱなんつーか、恥ずいだろ。あほかよ。もう帰ろうぜ?」

 おぉ。俺の心の代弁者もしっかり居るじゃないか!
 だよな! そうだよな! これが普通なんだよ!

 なんて思っていると──。

 「だーめ。わたしの名前を叫んでくれなかったら、パンティ膝枕で耳かきはおあづけです!」
 「ちっ。ずるい女だな。そんなん、叫ぶしかねえだろうが!! この場に居る誰よりも、大声で叫ぶしかねえだろうが! ここに居る誰よりも! お前が一番の幸せ者だって、証明するために!! 叫ぶしかねえだろうがよ!!!!」
 
 あ……。さっきバスで乗り合わせたカップルだった。オラオラ系甘えん坊のパンティ膝枕が大好きな強面なお兄さんでした。

 ……もうやだ。本当にやだ。

 早く戻ってきてくれ、花純……。

 されども花純は戻ってこない。どれくらいの時間が経ったのだろうか。……たぶん30分は経ったと思う。

 どこか遠くで俺の様子を見て居るのではないかと疑うレベル。

 「そこのベンチで膝枕してくれよ」
 「ここじゃパンティにはなれません!」
 「少しめくるくらいいいだろ?」
 「じゃあ、少しだけよ」
 
 いやっ。ちょっ。え⁈ 隣に座っちゃったよ……。めっちゃらぶらぶしよる……。
 ていうかこれはもう一歩間違えれば公然わいせつだろ……。

 場所を移動すればいい。ただそれだけの話だ。
 でも花純とはここで待ち合わせをしている。俺がここを離れれば「なんでなんでー?」と、からかってくるに違いない。

 だから明鏡止水の心で、隣に座るいちゃラブカップルを意識しないことに徹する。

 「あ? ソロプレイヤーか? 見せもんじゃねえぞ? どっかに失せろや!」

 ひぇっ。なんでそうなるんだよ……。
 たとえ甘えん坊属性だとしても、ベースはオラオラ系。いう通りにしなければ危険だ。

 でも、ここから離れれば──花純に馬鹿にされる。

 だから知らんぷりをしてやり過ごす──。

 「なんだこのガキ? 喧嘩売ってんのか? ああ?!」

 ど、どうして……。こんなことに……。

 「絡んじゃだーめ! それにこの子はバスで一緒だったでしょ? ソロじゃないよ?」
 「そうだったか? 悪ぃ。俺、お前のことしか見てなかったからよ。まったく気づかなかったよ」
 「もぉ! わたしに夢中なのは仕方ないけど、ちゃんと周りもみて!」
 「お前の太ももはそそり過ぎるからな。そいつは無理な話だ。俺の瞳はお前以外写らないようになってんだよ」

 あ、あれ……もしかして……。俺は愛を囁くための餌に使われたのか? あ、なんかそんな感じっぽい。本当になんなんだよ。もうやだよ……。

 もはや、俺の心は限界に達していた。
 まんまと花純の術中にハマってしまったのかと思うと悔しいが、こればかりは仕方のないことだった。


 そうして──。

「しょーちゃん、おーまたぁ! いっぱいでたぁ!」

 やっと戻って来たかと思えば、後ろから抱きついて来た。……だから、振った男に抱きつくなよ。

 とは思うも、今は花純の温度が心地よく──安心にたるものだった。

「どしたの? ひとりきりで心細かった?」

「べ、べつに……」

 くそったれが。そんな言葉がすぐに出てくるってことは、やっぱりわざと時間を置いて戻って来たってことじゃねえかよ。……くっそ。どこまで俺を愚弄すれば気が済むんだよ……。

「ふふんっ。そんなしょーちゃんにぃ、くっつき虫ぃ~! うりゃあっ!」

 あぁ……。本当に勘弁してくれよ。
 昨日振られたってのに、心地よさすら感じてしまう自分が愚かで悍ましい。

 吊り橋効果的ななにかに感情が支配される。
 お化け屋敷に入って、興味ない異性に抱きついてしまう的な、なんかそんな感じに近いのかもしれない。

 そうだ。此処はある種のお化け屋敷なんだ。……ラブラブするカップルたちが、怖いんだよ。

 ……ふざけやがって、花純。

 だからなのか、体は自然と花純へと傾いてしまう。

「あれぇ? しょーちゃんもくっつき虫してくれるのぉ? いいよぉいいよぉ! もっと花純ちゃんにくっつきなさーい!」

 ……悔しい。けど、引き剥がすことができない──。

 もう、わかっているんだ。こいつはどうしようもないロクデナシのヒトデナシだ。
 純情を弄んで至福を肥やすモンスターだ。悪魔だ。デーモンだ。サキュバスなんだよ!

 だからこんなのはダメだ。此処に長居をしては絶対にダメだ!

 早急に去らねばならない!

 それなら──。
 俺のやることは決まっている。
 一石二鳥でここから立ち去る方法はひとつしかない。

 ──愛を叫ぶ! そんでラブパワーを貰う!

 こいつの考えは透けて見えるからな。大方、ここで俺に叫ばせて弄ぶ算段なのだろう。

 残念だったな。それに関してはむしろ好都合なんだよ。奢らせアイス計画の告白をより自然に行えるからな。

 ここで名前を叫べば、振られはしたけど諦めのつかない男ってのを装うことができる。

 すべては奢らせアイス計画、最高のフィナーレのために!

 俺は叫ぶ。声を大にして、思いっきし叫ぶ!

「かすみぃぃいいいいい!」

 あと二回──。

「しょーちゃあぁぁあああん!」

 え……。いや、なんでお前まで叫んでるんだよ?


 ……は?


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