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第10話 証明書発行まで、あと──……
しおりを挟む花純に手を引かれるがままに『恋愛岬事務局』とやらに着いた俺は絶句した──。
公民館程度のハコに所狭しとカップルたちがラブラブしていた。
その密度は1平方メートルあたり、2ラブラブちゅっちゅカップル。
……ど、どうして俺は……気づかなかったんだ。
考えてもみれば当たり前のことだった。愛を叫び終わったカップルたちは全員漏れなく此処に集まるに決まっている……。
や、ヤバ過ぎる……。息が、苦しい……。
当然、バスや岬の比ではない。
耳を澄まさずとも、あちらこちらから愛の囁きが聞こえてくる。
「ねえ、まー君……唇が寂しいよぉ♡」
「まったく。みゆきの唇は寂しがり屋さんだな。一日にどれだけ唇を重ねていれば気が済むんだ?」
「そんなのきまってるじゃん。……ずっと♡ だよ?」
「わがままな唇だな。そんなわがままな唇は塞いでしまおうね」
や、やめてくれ……。そんなに見せつけないでくれ……。
こんな所には五分と居れない。さっさと用事を済ませて立ち去らないと……。えっと確か、ラブパワー獲得宣言証明書だったよな!? は、はやく!
「うぅ。証明書の発行待ちが一時間は長いと思ったけど、まーくんと一緒に居る時間は体感二秒♡ 永遠の時間も二秒だもん♡」
「そうか。みゆきは二秒なのか。俺は一秒の気分だったんだけどな」
「ずるーい! そんなの後だしじゃん。本当はわたし、0.00000001秒なんだから! 一瞬なんだぞ?♡」
「やれやれ。本当のことを言うとな、俺は一瞬のその先のさらに先──刹那だ」
「うー。まーくんずるーい……! 刹那とかもう意味わかんない! でもすきぃ♡」
ちょっとまーくん? 今なんて?
え、みゆきちゃん? 今なんて?
一時間待ち? 嘘だろ……? だってあんたら、俺たちよりも早くに愛を叫んでラブパワーゲットしてたもんな? ってことは俺たちよりもずっと早くにここに来てたってことだよな?
……あぁ、そうだよ。待ち時間でもなければ、こんなに窮屈になるはずがない。
1平方メートルあたり、2ラブラブちゅっちゅカップルになんて、なるはずがなかったんだ……。
冗談じゃない……。
「冗談じゃねえ! 証明書なんかいらねーよ。一時間も待ってられっかよ! 俺は先に帰るからな」
お、おぉ。俺の心の代弁者! できることなら俺も花純に言ってやりたい……。しかしここで帰れば、奢らせアイス計画がパァになる……。
だが、こんな場所で一時間も耐えられるとは思えない……。
「証明書なんか貰わなくてもよ、ここにあんだろ? 俺のハートにはよ、しっかりラブパワーが刻まれてるから心配すんな。だから帰ろうぜ? 俺たちの愛の巣へ」
なるほど。この手があったか! これなら自然と帰れる!
でもなんだろう。なんかこの声、聞き覚えがあるような……。
「そうやって駄々を捏ねる子には膝枕はおあづけです」
「なっ?! それはずるいだろうが!」
あ。パンティ膝枕の強面お兄さんだった。
ってことは、これは単なる口実……。
「もぉっ。いい子にできたら特別に♡ 半脱ぎストッキングで膝枕してあげるから」
「おいおい、まじかよ。とんでもねえご褒美じゃねえか! いっつも蒸れてて臭いからやめてくれって、嫌がるのによ! 本当に良いのか? 二言はねえな?」
「ふふっ。約束だよ? 今日だけ特別♡ おまけに綿棒で両耳ぐりぐりもしてあげるよ?」
「たまんねぇな、おい! よーし決めた。立派な額縁買って、ラブパワー獲得宣言証明書を玄関に飾ろうじゃねえか!」
あ。やっぱり。思ったとおりだった。
………………………………………………。
もうだめだ! 此処はソロプレイヤーが足を踏み入れていい場所じゃない!
このままではアイスを奢らせる前に、俺の精神が先にだめになる。
だからって逃げるわけにはいかない。……お前への憎しみは、ここで逃げてしまう程、軽いものじゃないからな。
だからここは緊急手段を使う。
待ち時間の間、トイレに籠る!
そう思い、隣に居るはずの花純に声を掛けるも──。
「か、花純! ちょっとトイ…………え?」
あたりを見渡しても、どこにも──。
花純の姿がなかった。
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