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第7話

「オールディーズトレイン_02」

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 アルミダブルスキン構体は、鉄道車輛に於いて側面、床面、屋根天井構体に用いられている。
 断面は段ボールの様に外側の板と内側の板の間に斜めの梁が入り、一枚の板と比べて飛躍的に強度が増す。近年アルミ車体と云えば一部の例外はあるものの、ほぼ全てがこのアルミダブルスキン構体となっている。
 製造方法は中空押出成形と呼ばれる、部材ごとに用意された金型の中をアルミ部材がところ天の様に押し出されて成型される。次々押し出されてくるので、理屈からいえば原料が切れるまでは長い板材を造り出せるが、工場のスペースなどの問題から現状では最大約25mまでとなっている。
 押出成形とは、身近なところではアルミサッシの枠などに利用されている。
 断面を工夫する事で、余計なビスや接着材を削減できる。
 鉄道車輛のボディに使用する場合は、側面をいくつかのパーツに分けて、組立時に溶接する。
 そのため、無塗装の車体は溶接部分を研磨して面処理を行うので、近くで良く見ると溶接した部分がすぐに判別できる。
 しかし、側面、床面、屋根が溶接されて筒状になるために、車体強度が高く骨組みが不要になった。そのため普通鋼で作られた従来車体と比べて大幅に軽量化できたのだ。
 それ以上に車体断面の設計自由度が上がり、裾絞りの車体(最近のJR東日本車の様に車体幅が広く、下部が狭い)と、例外はあるものの民鉄の横がストレートになっている車体で、一部の部材の共通化が可能だ。
 「つまり曲面以外は共通することが可能という訳よね。で、さっきのウインドウシル/ヘッダーの部分を専用の形にして、表現するってことでしょ?」
 奈美さんが感心したという表情で、目を輝かせて言う。
 「そうなんです。今まで外側は出来るだけ凹凸がない形状を求めていたものの、内側には配線やダクトの吊り下げ用ラックなどを出していたので、何も函形にこだわる必要はないんだと気付いたわけです」
 「そうよね。だって床下機器はみんな車体長手方向に部材の一部を飛び出さして、ラックレールとして吊り下げていたんだもんね」
 従来の台枠の上に車体を架装する場合は、台枠の梁に吊り下げ用の部材を溶接していた。
 そのため、抵抗器やコンプレッサーなどの重い機器類は、架装する位置が限定されているのだ。左右でもバランスを取らなくてはならず、全ての要件を満たしても梯子のような台枠に取り付けるのは大変だった。
 翻ってアルミダブルスキン構体はラック式になっているから、設計時に前後バランスや吊り下げ部材で左右への移動も簡単に行える。
 「ただ、FSWでの溶接にはある程度の幅が必要なので、部材は“凸”型にして溶接してウインドウシルの上側(窓下部)は、カットするそうです」
 「そかそか、そのカットした部分に窓ガラスが乗るのね」
 「そうです。そしてさっき話した“鉄コレ”ですが、側面は国鉄73系を元に設計して、東武の様に後年車体の更新や改造した部分は、パーツの使い分けで表現します」
 「じゃあ、片開き4扉、戸袋窓付になるの?」
 「基本的にオールディーズですので、ラッシュ時などの運用は行わないでしょうね。なので幅700~900mmの片開きでいくそうです」
 「あと前面は? FRPって訳にはいかないよね?」
 「車体剛性の問題があるので、ここには骨組みが必要です。けれどアルミ車なので、普通鋼やFRPって訳にはいきません。量産車ならコスト的にアルミフレーム+FRPでしょうが、イベント車ですから…」
 「? …から?」
 「アルミブロック削り出し工法です」
 「へ? ええっー! ものすごく高くならない? それ!」
 「量産車の製造なら時間的にもコスト的にも現実的じゃないです」
 アルミブロック削り出しとは、その名称通りアルミの大きなブロックから少しずつ削り、形造る方法だ。
 大まかにカットした後、コンピュータ制御により表面を細かく削り出す。裏側はフレーム代わりになるリブを残してくり抜く。時間はかかるものの、人力で行うよりは早く、精度は熟練工並み。個体差がほとんどないので、複雑な形状の成型にはもってこいのシステムなのだ。
 「新幹線の前面形状はほとんどこの工法よね?」
 「そうですね。特にJR東海/西日本のN700Aの様な複雑すぎる造形は、このシステムのお陰で実現したといっても過言じゃないです」
 「あ! そうか。“鉄コレ”って言ったのはこのことね?」
 「ですです。たとえ1編成のみでも、編成の前後で2面は同じものが必要です。なら手間がかからない方がいいですし、逆に1編成しか造らないのに金型起こすと、それだけで巨費が必要です」
 叩き出し成型でも、熟練工ならかなり複雑なものまで対応できるだろう。しかし、叩き出す為の金型/ジグという抑え型/部品の多分割が必要になる。
 しかし、コンピュータ制御の削り出しは、形状に関してはCAD/CAMを応用する。実際に試作品を造らなくても、モニター上で細かい調整が可能だ。
 データに不備がなければ、そのまま本番ということもできる。
 工作機械はビット(削り刃)を複数セットし、オートで使い分けられる。
 完全無人とは行かないまでも、作業自体は自動で行える。
 部品点数も必要最小限に抑えられるので、少数製造にも向いているのだ。
 「だから73系ベースでも、ノーシル/ノーヘッダー車も造れるし、ドア数も3扉とする事も可能です」
 「あ~ってことは、西武451系もできる?」
 「できない事はないですけど、あれは両開き3扉なので設計変更が大変そうですね(笑)」
 「基本的に73系ベースですから、南武線で運用されていた79系全鋼製車あたりなら、造りそうですね」
 「まあ、当分は東武がどういう形でデビューさせるのか、見守ってみましょうよ」
 エキサイトする奈美さんをクールダウンさせる為に、少し時間を置いた方が良さそうだと思った。
 「それより親友から頼まれた事があって、奈美さんの意見もお聞きしたいのです」
 「?…何?」
 「オールディーズトレインはレトロ(懐古)ではなく、1950年代のデザインを再現した新車なので、現在の技術で製造します。しかし、昔の雰囲気を味わえる様にアイテムを再現したいので、どんなものを再現したいかアイディアを出して欲しいとのことです」
 「ってことは、サボとか幕式の表示器とかがいいなぁ~って言えばいいの?」
 「あ、それいいですね。早速伝えておきます」
 「あと…ね。回転式の表示器ってできないかな? ただ、完全にアナクロなんだけど、ヘッドマークが付けられれば可能かな?って思うんだけど」
 「回転式? どういうのですか?」
 「父から聞いたんだけど、昔東上線で7300/7800系の前面窓下に付いていた行き先表示器なんだけど。
  接続用の輪がついてる数枚の金属板を開いた状態でぶら下げてて、そこに“池袋←→志木”とか“池袋←→森林公園”とか書かれてるの」
 「差し換えサボじゃなくて?」
 「差換えると予備を乗せておくか、各駅にストックしなくちゃいけないでしょ?」
 「国鉄はサボ置場なんてものがあったそうですね」
 「パタパタと回転させて、必要な表示に切り替えるので手間がかからないし、予備をおいておく必要もないから結構好評だったみたいね」
 「他の事業者では使ってなかったんですか?」
 「他社どころか本線ですら使ってなかったみたいよ。東武本線は貫通扉にある枠に差換えで使ってたそうよ。回転式はいわゆる東上線専用だったみたい」
 「でも実現すると面白そうですね」
 そんな他愛も無い話しをしていた俺たちは、半年後にもっと驚かされることとなった。
    <つづく>
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