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第三章
第26話 間取り図と鏡像
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翌週早々に山本弁護人から神野に連絡が入った。現場の図面が完成したので、最短で明日10時に説明できるとの事であった。神野に異存はなく即答で決定した。
いつもの客室で早速、3Aサイズにコピーされた図面を見せて貰った。きれいに清書されている。
図面は2種類作成されていた。一つは現場の間取り図、もう一つはその上に告発人、被疑者、目撃者の位置と最初の目撃位置から鏡に映る範囲を示したものだった。
「これは一目瞭然、分かり良いですね。先生が作成したのですか?」
「いや、これは彼女が」
「あ、やはり…」
「私にできる訳がないでしょう」
「そうですね」
三人揃って、ニコニコ、ニヤニヤ。
「現場で確認してはいますが、明らかに神野さんの指摘の位置では鏡には映りません。告発者の描いた図面での位置でははっきり映りますね」
「そうですね。先日、現場で確認済みですけどね」
「現場で撮った動画ですが、パソコンに転送してますのでお見せしましょう」
「あ、それはぜひ見たいです」
現場でスマホで一度見ていたが、パソコンだとより鮮明に見える。
「神野さんの指摘の位置を前提に話します。目撃者の目線では、2人は腹筋台を降りた後ストレッチ位置まで歩きますが、到着直前に鏡から消えますね。その後、彼女は通路とマシンフロアの境まで歩きますが、鏡を見ながらだと再び鏡に映るのと直に見えるのとがほぼ同時です。最短距離を歩くと鏡には映りません。逆に左寄りに遠回りすると鏡に早く映りますが直に見えるのが遅くなります」
「そうですね。確かにそうなりますね」
「どの方法を選択したか? まあこれはさほど重要ではありません。大して違いはないです」
「そうですね。それより彼らとしてはずっと鏡に映っていたと証言したいのですよね」
「そうです、その通りです」
「故に、2人で相談してストレッチ位置を通路に近い位置にシフトした」
「はい、告発者の描いた図からそう推測されます。神野さんは目撃者の意図だと考えているんですね?」
「はい、自分の逆恨みの復讐の為、彼女を利用していると思います」
「先日の現場検証での我々の動きを見て、本店長がどう彼らに話したか? それを聴いて彼らがどう判断するか見ものです。裁判では最初の審理として『原告尋問』がありますが、ここで彼女が『ストレッチ位置をどこに証言するか』は以降の公判に大きな影響を与えます」
「………そうですね……」
「この間取り図を告発者、裁判が始まれば原告になりますが、彼女に見せてどのように動いてどの位置でストレッチをしたのか説明して貰います。その情報は検事から目撃者、裁判では目撃証人ですが、彼女に伝わると思います。検事が正義感の強い真の検事であれば、敢えて伝えないかもしれませんが。原告が記述した動きと位置情報のコピーは原告には渡しません」
「いずれにしても、原告から目撃者には伝わりますね。裁判官と検事には渡しますか?」
「裁判官には渡します。検事には…欲しいと言われれば…どうするか? 渡さない!」
「悪用されるかもしれませんものね」
「悪徳検事なら。まあ、法廷ポリシー順守を信じて、渡すかもしれませんが」
「きれいな裁判になると良いですね」
2種の図面のコピーを貰って、神野は山本法律事務所を後にした。
この山本弁護人なら大丈夫だ、きっと勝てる。こんなにしっかりやって貰って勝てない訳がない。
神野は心静かにでペダルを踏んでいた。
いつもの客室で早速、3Aサイズにコピーされた図面を見せて貰った。きれいに清書されている。
図面は2種類作成されていた。一つは現場の間取り図、もう一つはその上に告発人、被疑者、目撃者の位置と最初の目撃位置から鏡に映る範囲を示したものだった。
「これは一目瞭然、分かり良いですね。先生が作成したのですか?」
「いや、これは彼女が」
「あ、やはり…」
「私にできる訳がないでしょう」
「そうですね」
三人揃って、ニコニコ、ニヤニヤ。
「現場で確認してはいますが、明らかに神野さんの指摘の位置では鏡には映りません。告発者の描いた図面での位置でははっきり映りますね」
「そうですね。先日、現場で確認済みですけどね」
「現場で撮った動画ですが、パソコンに転送してますのでお見せしましょう」
「あ、それはぜひ見たいです」
現場でスマホで一度見ていたが、パソコンだとより鮮明に見える。
「神野さんの指摘の位置を前提に話します。目撃者の目線では、2人は腹筋台を降りた後ストレッチ位置まで歩きますが、到着直前に鏡から消えますね。その後、彼女は通路とマシンフロアの境まで歩きますが、鏡を見ながらだと再び鏡に映るのと直に見えるのとがほぼ同時です。最短距離を歩くと鏡には映りません。逆に左寄りに遠回りすると鏡に早く映りますが直に見えるのが遅くなります」
「そうですね。確かにそうなりますね」
「どの方法を選択したか? まあこれはさほど重要ではありません。大して違いはないです」
「そうですね。それより彼らとしてはずっと鏡に映っていたと証言したいのですよね」
「そうです、その通りです」
「故に、2人で相談してストレッチ位置を通路に近い位置にシフトした」
「はい、告発者の描いた図からそう推測されます。神野さんは目撃者の意図だと考えているんですね?」
「はい、自分の逆恨みの復讐の為、彼女を利用していると思います」
「先日の現場検証での我々の動きを見て、本店長がどう彼らに話したか? それを聴いて彼らがどう判断するか見ものです。裁判では最初の審理として『原告尋問』がありますが、ここで彼女が『ストレッチ位置をどこに証言するか』は以降の公判に大きな影響を与えます」
「………そうですね……」
「この間取り図を告発者、裁判が始まれば原告になりますが、彼女に見せてどのように動いてどの位置でストレッチをしたのか説明して貰います。その情報は検事から目撃者、裁判では目撃証人ですが、彼女に伝わると思います。検事が正義感の強い真の検事であれば、敢えて伝えないかもしれませんが。原告が記述した動きと位置情報のコピーは原告には渡しません」
「いずれにしても、原告から目撃者には伝わりますね。裁判官と検事には渡しますか?」
「裁判官には渡します。検事には…欲しいと言われれば…どうするか? 渡さない!」
「悪用されるかもしれませんものね」
「悪徳検事なら。まあ、法廷ポリシー順守を信じて、渡すかもしれませんが」
「きれいな裁判になると良いですね」
2種の図面のコピーを貰って、神野は山本法律事務所を後にした。
この山本弁護人なら大丈夫だ、きっと勝てる。こんなにしっかりやって貰って勝てない訳がない。
神野は心静かにでペダルを踏んでいた。
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