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四十話 ラファエルとお出かけデートよ ②
しおりを挟む私がラファエルを抱っこしながらケイトを引き連れて、馬舎にやってくるとフレオがちょうど馬を一頭外に出しているところだった。
「フレオご苦労様、時間を作ってくれてありがとう」
「いえいえ、奥様のご命令ですから当たり前のことです」
フレオは微笑んで頭を下げた。
フレオとのあの面談から少し日が経っている。
私はフレオに諦めないと言いながらそれから一度もフレオとは接触しなかった。
私は前世で子供たちを叱った後、その話題をすぐ後にまた出すことはなるべくしないようにしていた。
自分が一度頭を冷やして冷静になりたいのもあったけど、子供たちにも冷静になってちゃんと何故叱られたか考えて欲しかったからだ。
私は家族や周りにおせっかいと言われたりしたし、自分でも本当は気になってすぐにでもその話をしたくなる人間なんだけど、私の母がそうしない人だったの。
私や妹をその原因のことで叱った後はその話題を母から出さることはなかった。
そりゃまた同じことをしたらその時にまた叱られたわよ。
でも一度叱られた後、しばらくしたら自分が冷静になれて何をしたから何を言ったから叱られたかわかって、私は自分から母に謝りに行ったりしていた。
妹は意地っ張りだったからなかなか謝れない子だっだけど、それでもちゃんと反省していたわ。
だからフレオは大人で今世のベレッタよりうんと年上だけど、一度時間をおいて少しでも考えてもらいたかった。
それに固まってしまった彼の心をそんなに簡単にとき解せるとは思っていないから、じっくり時間をかけるつもりなのよ。
「そう、良かったわ。
今日はね、わたくしももちろんだれどラファエルに馬を見せてあげたかったの。
ラファエルもいずれ乗馬を習ったりするでしょ?ラファエルには馬をただ乗って移動するだけの手段に必要な動物だと思って欲しくないの。
ラファエルにも馬を大切にしてもらいたいし、馬にも彼を認識して信頼関係を築いてもらいたいのよ」
私の言葉にフレオが少し驚いた顔をする。
「奥様は馬を近くに見たことがないとおっしゃっておりましたのに、そんなことを思われているのですか?」
「ええ、わたくしは犬や猫動物が幼い頃から大好きなのよ。
馬のことも興味があったけれど、自分から接する機会が今までなかったの。
でもこちらに来て自由に動くことを旦那様が了承してくれているから、わたくしは自分がやりたいことをやることにしたの」
そう言ってフレオに微笑みかけると、フレオは一瞬戸惑ったような微妙な顔になったけど、すぐに表情を戻した。
「…そうでございますか…馬は賢く警戒心がある動物なのです。
だからいきなり無闇に近寄るのは危険なのですよ。
足の方から近付いてはなりません。
後足で蹴られてしまうかもしれませんからね。
馬の目の届く範囲から頭の方横から近寄ってきて下さい」
「わかったわ」
私はラファエルを抱っこしたままゆっくりフレオに言われた通りに横から馬の頭に向かって歩いて近寄っていく。
今まで大人しく私に抱かれていたラファエルが、手足をバタバタと動かして、「あぅ、あぁ」と声を出す。
「まあ、ラファお馬さんに興味ある?今からお馬さんの近くに行かせてもらうからね」
私がラファエルに声をかけるとラファエルがキャッキャッとはしゃぐ。
「ラファ嬉しいのかな?これからお母様と一緒にお馬さんに触らせてもらいましょうね。
でもお馬さんがいいよって言ってからよ。
わかったかな?」
私が言うとラファエルはまるでわかってるよというように、「うぅ、うぁっ」と声を出した。
ラファエルは本当に賢いわ、さすが私の子よ!
私たちが馬に近付いても馬は頭を下げていてとても大人しい。
「あら、とても大人しそうなお馬さんね。
名を聞いてもいいかしら?」
私がフレオに言うと、フレオが馬を撫でながら。
「はい、キャンディーと言います。
とても大人しく利口なのですよ」
フレオがちゃんと大人しい子を選んでくれたのよね。
「まあ、キャンディーってお菓子の名なのね、可愛いわ。
雌なのかしら?」
「ええ、そうでございます。
お触りになるのならこの辺をゆっくりとどうぞ」
フレオか手綱をしっかりと持ちながら言う。
「ありがう、ラファ今からキャンディーに触ってもいい?ってお母様と一緒に聞いてから、触らせてもらうわよ、いい?せえの!」
「触ってもいい?」
私と同時にラファエルも「あぁ!」と声を出した。
「ラファもとってもお利口よ」
私はラファエルの頭を撫でる。
それに気持ち良さそうにするラファエル。
「それじゃあラファゆっくりね!」
私はラファエルの小さい手を持ちながらキャンディーに近付けていく。
そしてラファエルの手がキャンディーに触れた時。
「あぁゃぁ~」
とラファエルが声を発しながらはしゃいでいるように手足をバタバタとさせた。
「まあラファ嬉しいの?キャンディーの肌は気持ち良いかしら?
お母様も触らせてもらうわね」
そして私もラファエルの手を握っている手でキャンディーに触れる。
しっとりとしていながらサラサラの毛が手の平を滑っていくのが気持ち良くて、思わずナデナデとしてしまう。
ラファエルはキャンディーに触りながら凄く興味があるのか、ジッと見ながら手をポンポンと上下させた。
「ラファ叩いては駄目よ。
キャンディーが痛いよ~ってなっちゃうからね、優しくナデナデよ」
するとラファエルはポンポンをやめてわかっているのか、キャンディーの身体に手を置いたので
私がラファエルの手を持って優しく小さく上下させてちゃんとナデナデした。
「そうそうよ、ラファ上手だわ!キャンディーの肌はとても綺麗で気持ちいいわね」
それからしばらくラファエルとキャンディーと触ったり話しかけたりして、その日はそれだけで私たちは邸に戻った。
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