怒れるおせっかい奥様

asamurasaki

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四十一話 ラファエルとお出かけデートよ ③

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 私はそれから二日に一度の割合で時間を作って、馬舎に通いキャンディーを触らせてもらった。

 ラファエルは最初から怯えることもなく、キャンディーを触ってはしゃいでいたけど、次にお馬さんのところに行くよと言うと、キャッキャッと嬉しそうに全身ではじゃぐようになったわ。

 本当にラファエルは賢いわね。

 五度ほど馬舎に通ったけど、私はその間フレオに馬のこと以外は一切質問しなかったの。

 次は馬車に乗るからラファエルと馬車の中にも入ってみたけど、ラファエルは物珍しそうにあちこちを見ながら、触ろうと手を伸ばすだけで、馬車の扉を閉めても怖がったりしなかったから安心したわ。


 そして今日はいよいよ馬車に乗ってラファエルとお出かけデートよ。

 と言っても邸の近くを往復で五分程回って帰るだけどね。

 もちろんフレオに御者をしてもらってね。

 馬車に乗るのはラファエルと私とケイト。

 いくら邸の近くといえどラファエルと私が外に出るから、護衛騎士二人が馬に乗ってついて来てくれる。

 こんな短い時間だけど騎士は嫌な顔ひとつしなかった。

 まあ侯爵夫人のすることに嫌な顔なんて出来ないだろうけどね。

 邸にいる間は私に専属の護衛が付くことはなかったけど、叔父様と連絡してカエンシュルト伯爵夫人が家庭教師になってくれることが決定した。

 まだ行く時期は決まっていないけど、これから王都に行くことが決まったから、専属の護衛が八人決まったわ。

 八人が多いのか少ないのか私にはわからないけど、とりあえずフィンレルが護衛を付けてくれるようになったの。

 今日はそのうちの二人がついて来てくれることになったのよ。


 いよいよラファエルを抱っこしてケイトも一緒に馬車に乗って、フレオが前の御者台から私たちの様子を確認して私に頷いて合図をしてから、馬車がゆっくりと動き出した。

 ラファエルが初めてのことに驚きはしないかと不安だったけど、ラファエルは肝が据わっているのか、好奇心旺盛なのか馬車が動きだすと、声を上げてキャッキャッとはしゃいでいたわ。

 それから三日に一度くらいで少しずつ距離を伸ばしながら私はラファエルとのお出かけデートを楽しんだ。

 一ヶ月くらい過ぎるた辺りから、距離もだいぶ伸びて邸近くにある小高い丘で一度馬車を下りて休憩してから帰るようになったのよ。

 青紫の花が沢山咲いている丘でケイトが持ってきてくれたシートに座り、お茶を飲みながらフレオとケイトとあれこれと話をしながら過ごすのよ。

 最初フレオは警戒心もあっただろうし、いち使用人が侯爵夫人とシートに一緒に座るなんてて拒否されたけど、そこは強引に座らせたわよ。

 そして空気の良い綺麗な丘でシートに座り、お茶を飲みながら同じ時間を過ごすようになると、だんだんとフレオの警戒心がなくなってきて、少しずつ心を開いてくれるようになった。

 それにはね、ラファエルも大活躍をしてくれたのよ。

 フレオにラファエルを抱っこしてもらったりしたのだけど、最初は戸惑っていたフレオもラファエルを抱っこをすると、顔を柔和に和らげて、心底嬉しそうな顔で笑うようになったわ。

 まさにラファエルの天使効果よね!

 私の前で笑うフレオは表面的な笑顔じゃなくなったわ。

 そして彼は少しずつ自分の家族のことを話してくれるようになった。

 彼には二人の息子がいたらしいの。

 彼が王都を追放になってから、奥様とは離縁したからそれっきり会っていないらしいのだけど、二年後に彼が無実だとわかってから、彼の両親が彼を探し出して、それからさらに一年後に彼の兄が彼に会いにきた時に、奥様や子供のことを聞いたらしいの。

 奥様も貴族だったらしいのだけど、フレオと離縁した後奥様は実家に帰ったらしいけれど、フレオの無実かわかってからすぐに再婚の話が出て再婚されたらしいのよ。

 お相手の貴族の方も再婚でお子様がいて、上手くいっているようだと聞かされたらしいわ。

「本当に良かったです。

 元妻と息子たちには元気で幸せになってもらいたいです」

 彼は遠くを見ながら切なそうに言っていたわ。

「息子さんたちはもう結婚してお子様もいるかしら?」

 私が聞くと。

「そうですね、それ以降両親にも兄弟にも会っていないので聞いてはいないですが、年齢からすればもう結婚しているかもしれませんね」

「家族の様子を聞いたりしていないの?」

 フレオは少し困ったように笑う。

「私なんかが家族の様子を聞いても何もしてあげられませんからね」

「そう、…でもフレオはもうおじいちゃんになったのよ、ほらね!」

 とラファエルを抱っこするフレオに私はウィンクする。

「侯爵家のご子息様が私なんかの孫なんて恐れ多いです」

「あら、サウスカールトン侯爵家では使用人もみな家族なのよ。

 だからラファエルにはたくさんおじいちゃんやおばあちゃん、お父さん、お母さん、兄弟姉妹がいるのよ」

 私の言葉にフレオは目を見開いた後。

「ありがとう、ございます…」

 フレオは少し声を震わせた。


 その日も丘で休憩して戻ろうとした所で、少し離れた馬車が止まっている所ら辺で大きな物音がした。

 私たちから少し離れたところにいる護衛二人がその方向を見て構える。

「ここにはケイトもフレオもいるわ!様子を見に行ってちょうだい」

 私が指示すると護衛がその方向に走って行く。

 あっちは馬車の方向だわ、何が起こっているんだろう?

「奥様、後へ」

 ケイトが異変を察知したのかスクッと立ち上がって私を後に庇う。

 えっ?でもケイトが見ている方向が護衛が走って行った方向とは違っていて、茂みがある方向なのよ!

 フレオも私を庇って前に立った。

 私は緊張して立ち上がって抱きしめているラファエルをキュッとさらに自分に引き寄せた。





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