怒れるおせっかい奥様

asamurasaki

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五十六話 さあ大移動ですわよ!

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 さて、フィンレルもほとんどの使用人も王都で暮らすことが決まって、大移動のお引越しの為に一ヶ月しかないから、凄くバタバタして忙しかった。

 私前世の記憶が甦ってからずっとバタバタ忙しいような気がするわ。

 でも元が貧乏性だから暇よりは忙しい方がいいのだけどね。

 それにしてもあっという間に日々が過ぎていくわ。

 年いくと時が早く感じるようになるとは言うけど、六十代の頃より今の十九の私の方が早く感じるくらいよ。

 私中身は前世の六十代から引き続き年を取り続けているということかな?


 そしてフィンレルと私、ラファエルが王都に出る日があっという間にやってきた。

 もうほとんどの使用人が王都に移動して私たちを待ってくれている状態で、残るは私たちと残り少ない使用人だけで王都に出発する日になった。

 ラファエルもすくすくと成長していて、今で七ヶ月なんだけど言葉はまだ「ああおん!」とか「ばぶぅー」とかの擬音なんだけど、その発音がしっかりとしてきて、私たちが言葉をかけたらその言葉にちゃんと返事を返そうとしている感じなの。

 ラファエルはほんとに幼いまだ三ヶ月くらいから私たちの言うことにちゃんと反応を返してくれる子だったけど、それがより顕著になってきた感じ。

前世で早い子はもう言葉を話せる子もいたけど、ラファエルはそこはまだなのだけど。

 身体は順調に大きくなっているし、よく活発に動くしね。

 だから私が長時間抱っこしているの結構大変になってきたの。

 何だか前世の子供より身体の成長が早いような気がするのよね。


 大きな病気をすることもなく本当に順調だから、とても嬉しいのだけど、これから成長したら抱っこ出来なくなるのちょっと寂しいのよね。

 早く大きくなって欲しいようなずっと抱っこしていたいような複雑な気持ちなのよ。


 いよいよ領地の邸を出発する時間よ。

 馬車には私とラファエル、ケイトが一緒に乗ったの。

 フィンレルは馬で私たちが乗る馬車の横を護衛しながら並走することになった。

 フィンレルも護衛される立場なんだけど、馬で私とラファエルを安全を守る為に護衛するんだと張り切っていてやると言って聞かなかったのよ。

 まあ私は同じ馬車に乗るのはまだ何だか気まずいからそれは有り難いのだけどね。

 フィンレルとは毎日朝食と出来る時は夕食、それからラファエルに必ず会いにくるからその時に顔を合わせて話をしてるわよ。

 前よりは会話もいろいろとするようになった。

 私はもう冷たくあしらうような大人気ないことはなるべくしなくなったわよ、なるべくね。

 普通に会話するしお互い笑顔になる時もある。

 ほとんどラファエルの話でだけどね。

 あとは仕事に関することかな。

 でも何ていうか、立場的なもの?それは変わらないな。

 夫婦だけど、あくまでラファエルの父親と母親って感じで、ラファエルを中心にラファエルの話をしているだけ。

 私はまだ許していないとかいうのでは…う~んどうなんだろ?


 でもフィンレルには今も愛している人がいると思っているから、私は男女のことについては踏み込んで聞いたりもしていない。

 フィンレルの方はね、どうなんだろう?私とコミュニケーションを取ろうとはしてくるわね。

 私に配慮してくれて優しいし、あれこれと気が利く人よ。

 それに私の反応に一喜一憂してわかりやすくて素直な人だけど、でもある一定の距離を保とうとしているのよね。

 やっぱりあのヒロイン?のことがまだ好きなんじゃないのかな?

 別に私はそれでもいいと思うけどヒロインのエレナ様って王太子妃殿下だから、どうしたって叶うものではないよね?

 これからフィンレルと私と社交の場に出て行くことになるわ。

 そしたら王太子殿下であるエレナ様と会うこともあると思うの。

 私は息子であるラファエルのことにちゃんと目を向けて、愛して育ててもらえればそれだけでいいのだけど、後継であるラファエルが生まれた今、もう子を作る必要はないからとまたエレナ様への気持ちが再燃して、エレナ様のことにだけ夢中になってしまったら?ラファエルのことに目を向けなくなってしまったら?って心のどこかで少し心配になっているの。

 まあフィンレルも自分でやらかしたことを十分にわかって反省しているみたいだから、家のことやラファエルのことを放ったらかしにはしないとは思うけどね。

 もしそんなことになったらまた思いっきり叱ってやるけど、己の立場を知れ!ってね。

 でもそんな起こってもないことを心配しても仕方ないわね。

 私は愛しいラファエルの為に頑張って日々生きるだけよ!












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