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八十七話 フローリアside ③
しおりを挟むベレッタがあの評判が最悪という侯爵に嫁いでわたくしもジョシュア様と結婚した、約一年後の国王陛下主催の夜会に出席した時のことよ。
お母様もわたくしももちろん最高級のドレスとアクセサリーで豪華にお洒落をして参加したのだけど、あのベレッタがわたくしたちと比べても見劣りしないくらいの見るからに最高級のドレスとアクセサリーで着飾って、おまけに隣にいる侯爵様を初めて実際に見たのだけど、わたくしの夫ジョシュア様より遥かに美しくて、あの王太子殿下と張るくらいこの場で一番と言えるくらいの美貌の人だったのよ!
聞いてないわよ!いくら評判が最悪だった人でもあんなに美しい方だったなんて!
おまけにベレッタがあの国内初の女公爵となったレノバングリー公爵家のあのアンジェリカ様やエスフィテバン侯爵家のシャルロット夫人やプラグリジェン伯爵家のマナベル夫人、カエンシュルト伯爵家のメリアンナ夫人と友人とかで、ベレッタと侯爵様の評判は鰻登りに良くなって高評価ばかりで侯爵やベレッタの昔の評判なんてなかったことのようになっているのよ!
わたくしなんてアンジェリカ様や他のご夫人方がとても高位の方過ぎて、今まで近寄ることさえ出来なかったのに!
だってわたくし一家が近くにいてもお声をかけてもらったことがないもの。
身分が上の方にはあちらから声をかけてもらえないと挨拶さえさせてもらえないのよ。
私の夫とジョシュア様やお義父様、お義兄様はアンジェリカ様に声をかけて頂いたことがあると、ジョシュア様は言っていたけどうちは声をかけて頂いたことないわ!
なのにあのベレッタがアンジェリカ様たちと友人で親しいですって!
そんなの許せる訳ないじゃない!
おまけにあの美しい侯爵様がベレッタを溺愛して、片時も側を離れないなんてことも噂になっているのよ!
この美しい妖精令嬢と言われるわたくしよりベレッタが注目されて、あんなにこの国で一番と言える美貌の侯爵様の隣に立っているなんて許される訳ないわ!
お父様もお母様も小声で文句を言っているけど、実際にはあのベレッタに近寄ることも出来ないなんて!
いくら侯爵夫人になってわたくしより身分が上になったからってこんなこと間違っているわ!
本当に絶対許せない!
なのにあの侯爵様とベレッタはまるでわたくしたちのことなんか眼中にないってくらいに近寄ってもこない。
わたくしたちはベレッタの家族なんだから侯爵様とベレッタの方から近寄ってきて挨拶するべきでしょ!
でも結局夜会終わる直前になってもあの二人はわたくしたちのところに来る様子がないから、わたくしたちから近寄って行って声をかけてやったわ。
そしてわたくしが酷いですわ~家族なのに挨拶もなしに、ずっとわたくしはあんなことをされてきましたのに~って暗にベレッタがずっとわたくしを虐げてきたでしょう?と大勢がいる前で言ってやった。
麗しい侯爵様も妖精令嬢と言われるわたくしが目を潤ませて上目遣いをすればイチコロになって、卑しい平民女の娘の地味なベレッタなんか目に入らなくなるわよ。
そう思ったのに…美しい侯爵様はわたくしを冷たい視線で睨んできて、わたくしの無作法を咎めるようなことを言ってきたのよ。
おかしいわ!どうして?と思ったけど、お父様に咎められていったんは引き下がったけど、今までオロオロしてわたくしたちに何も言ってこなかったベレッタがお父様に言い返して嫌味を言ってきたわ。
それもお父様が何も言い返せないくらいキッパリハッキリと。
それにお父様もお母様も私も呆気に取られてポカンとしてしまったけど、すぐに頭に血が上ったわ。
何よ!お父様とお母様の間にお金で割り込んできた卑しい平民の子の地味女のくせに!
お父様がベレッタに怒って説教をしたのよ。
だってお父様やわたくしに対して酷い言い草だったからそりゃお父様が怒るのも無理ないわよ!
でもベレッタはさらにお父様に反撃して、侯爵様もそれに追随してお父様は顔色を悪くして何も言えなくなった。
何なのよ!わたくしたちが悪いって一方的に責めてきて!元はといえば、お父様とお母様の間に割り込んできたあんたの母親の平民女が悪いのよ!
わたくしは悲しそうな目をして目に涙を溜めて侯爵様に訴えたのに、侯爵様はまったく取り合ってくれずベレッタをさらに引き寄せてベレッタを守るようにさらにわたくしとお父様、お母様に脅迫するようなことを言ってきたのよ。
確かに事実は違うところがあるからわたくしたちは何も言い返せず、お母様が諦めてお父様に合図して、お別れの挨拶をして引き下がるしかなかったわ!
でも許せない!あの平民女の子の地味女のベレッタにやり込められるなんて!
邸に帰ってからお父様とお母様に何とかしてよ!と訴えたけど、お父様もお母様も顔色を悪くして、「今は何もしない方がいいから」と言うだけなのよ!
おまけにジョシュア様には夜会でのわたくしの言動を咎められてしまったわ。
どうしてよ!悪いのはあのベレッタとベレッタの母親の平民女でしょ!
あの女たちのせいでわたくしたちはどれだけ我慢してきたと思ってるのよ!
許せる訳ないでしょ!
でもいくらわたくしがお父様とお母様に訴えても、まったく動こうとはしてくれなかったの。
どうしてベレッタが侯爵夫人だから?何よ!身分を笠に着て酷いわ!
わたくしはそれから毎日不機嫌で堪らなかったわ。
気晴らしにドレスや宝石などの買い物をしたらまたジョシュア様に叱られたし…。
何なの!こんなことなら例え問題があってもわたくしがあのベレッタの夫の侯爵様と結婚したかったわ!
あんな美しい人なら例え少し問題があってもわたくしと二人並び立つだけで、きっとそのあまりの美しさにそんな問題なんて吹っ飛んだに違いないわ!
それがあの地味女のベレッタがあの麗しい侯爵様の妻なんて!
それに何だかわたくしの良くない噂と、ベレッタがわたくしを虐げていたという噂は嘘で、実は逆なんじゃないかってことまで噂が出回るようになったのよ!
わたくしが妻や婚約者のいる貴族男性にちょっかいをかけてるって噂なんだけど、それはその妻や婚約者たちがわたくしに嫉妬してあることないこと噂しているんだわ!
そのことをお父様とお母様にも訴えても何もしてくれないのよ!
どうしてよ!わたくしがこの美しいわたくしが貶められているのよ!
何とかするべきでしょう?ジョシュア様は頼むから大人しくしていてくれなんて言うのよ!
何故よ!貴方はわたくしの夫でしょ!わたくしを庇って守らなければならない立場じゃない!
どうしてよ?みんなあの夜会からおかしくなってしまったわ!
それも全部全部あのベレッタのせいだわ!
ほんとにあの夜会の時に言い返してきたベレッタのことを思い出すと腸が煮えくり返るわ!
ほんと許せない!と思っていたらある日わたくしにとても高貴な方から手紙が届いたの。
普通なら手紙はおろか公式の場でも家としてしか挨拶が出来ないような方よ!
あの侯爵様やベレッタ、アンジェリカ様より身分が上の方よ。
凄いわ!わたくしその方に二人きりのお茶会に招待されてしまったのよ!
これはわたくしの救いの神よ!こんなわたくしを可哀想に思った神がきっかけをくれたのよ!
さあドレスとアクセサリーを発注して存分にお洒落していかなきゃ!
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