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十一話 国王、作戦を決行する
しおりを挟む馬に乗っている黒髪に赤い瞳の男、多分ラルフだろう男があの男に一瞬見えた。
プラチナブロンドの髪に紫の瞳のあの男。いや、そんなはずはない!
あの男は俺の最期側にいて俺を看取って、俺の後を継いで大陸の国王になったはずだ。
あの男は女たちがみんな見惚れて騒ぎ立てる人形のように整った顔の中性的な美形だった。
馬に跨りこちらに向かい駆けてくるラルフの顔がハッキリと確認出来たが、切れ長な赤い瞳を持つキリッとした男らしい整った顔をしている。
整っているのは同じだが、まったく似ていない顔だ。
だからあの男のはずがない!
あの男とは俺が国王になる時に出会い、共に戦に出るようになっていつも一緒に戦っていたから、今が前の世の戦場のような場にいるから思い出したに過ぎない。
きっとそうだ。
近くまでやってきたラルフだろう男は自分の髪と同じ色の大きな毛並みの良い黒馬から下り馬の手綱を受け取りにきた兵士に馬を渡してから俺の方へ一直線に向かって悠々と歩いてきた。
さっき一瞬あの男に見えたからか心臓がドクドクと早い音を立ている。
「なんだ~スタンピードが起こってるって聞いたから来たのによ~子供の遊び場に来ちまったか~」
コイツいきなり失礼だな。ケンカ売ってんのか。
あいつも初対面はかなり失礼だったな。
なんて思いながら目を逸らさず見つめていると
「貴様!失礼ではないか!こちらはハーベント公爵令嬢だ」
ケングレットがラルフだろう男に食ってかかってる。
「あぁ~俺の雇い主様か~ふぅ~ん」
値踏みでもするように俺を下から上までジロジロ見てくる。
「貴様!…」
俺は飛びかからんばかりの俺と同じ歳ながら俺の頭の上にあるケングレットの肩を掴み押さえてから
「貴方がS級冒険者のラルフ様かしら?」
「そうだけど~」
ラルフが片方の口を吊り上げてニヤリと笑う。
コイツ顔は違うのに口調や仕草があの男に似てやがる。
「わたくしはリリアナ・ハーベントでございます。わざわざお越し頂いたことに感謝致しますわ。ラルフ様が来られて本当に良かったです。これで作戦実行出来ますわね!ゲオング様?」
すぐに自分を取り戻して動じない俺にラルフはキョトンとしているようだ。俺の後ろからゲオングじいさんが
「きたきた!ラルフ待っておったぞ」
「おぉ、じじいがこんなとこに来て珍しいじゃねえか。ぎっくり腰になったら食われるぞ」
ラルフはゲオングじいさんにまで臆することなく失礼なことを言う。
「ハッハ、ワシなんか食っても旨くないじゃろうがな。さて早速じゃが作戦を聞いてくれんか」
やはりゲオングじいさんと知り合いのようで、ゲオングじいさんも気にするでもなく気安く話してる。
ゲオングじいさんから作戦を聞かされたラルフは
「へぇ~このお嬢さんが聖魔法持ちに俺と張るくらいの魔力持ちだとは驚きだねぇ~」
と言いながらラルフは顎に手をやりながらニヤニヤしてる。
そんなことちっとも思ってないことは顔を見ればわかる。
俺はラルフを近くにしてその魔力の凄さに背中がゾクッとした。
確かにこんなに魔力を持った者を俺は知らない。
俺も同じくらいの魔力のはずなのにこの男はその魔力でもって相手を威圧することも出来るようだ。
俺は素直に凄いと思った。
こんな凄い奴に出会えたことが嬉しくなってきた。
「作戦成功には後方のラルフ様たちが魔物たちをいかに引き付けて下さるかにかかっております。
ですので、ラルフ様の到着をお待ちしていました」
ラルフから目を外すことなく強く見つめる。
「なるほど~お嬢さんの為に俺が囮になると」
フンッとラルフが鼻で笑う。
「そうです。瘴気の沼を早く消す為です」
俺とラルフは身長差が凄くあるが、お互いを強い視線で見つめ合っている。
俺が嬉しくなっている気持ちが表情に出てしまったのかもしれない。
ふと、ラルフが目を見開いた。
「どうされましたか?」
「いや、何でもない…俺はいつでもいいぜ!」
「わかりました。それではゲオング様!最終確認しましょう」
「そうじゃな」
メンバーがすべて集まったので最終確認の為、みんなで集まる。
まずラルフがブラングドンを倒して作戦開始の合図となる。
ブラングドンは2体に増えてる。
2体ともラルフに倒してもらう。
ラルフがブラングドン倒したら俺たち瘴気の沼に向かう者たちが俺を真ん中にして円というより、三列になって二列目の真ん中に俺がいて変形四角形のような形になって、左端から走る。
スタートする前にすぐ俺の指示でゼノンが1回目の目眩まし魔法を使う。
アルフはゼノンの目眩まし魔法を増強する補助魔法をかけ俺たちは目を回してる魔物の間を突っ切って沼に向かって走る。
その間にラルフや隊長、魔術師、冒険者など魔力が高い者たちが魔物をたちを引き付け攻撃していく。ゲオングじいさんとミランは後方で囮になるラルフや魔術師、冒険者たちに魔力増強の補助魔法をかけより魔物を引き付けるようにする。
俺たちはゼノンの目眩まし魔法以外あまり魔法攻撃しないようにひたすら沼に向かい走る。それでも飛びかかってくるだろう魔物には外側に配置されてる騎士がなるべく対応する。
そして沼に到着したら俺が聖魔法で沼を消す。沼を消すことに成功したら、同行してる魔術師が炎の玉を空に放ち合図する。
そこからみんなで魔物たちを一気に叩き討伐するというものだ。
「それじゃあ、いっちょいくか~」
ラルフが言ったかと思うと簡単に俺の張った防御壁を擦り抜け、すぐさま大きな炎の玉がラルフの両手にの間に出来ていく。
ラルフも無詠唱で出来る奴なんだ。
魔物がラルフに向かい飛びかかっていくが、防御壁を自分で張っているのか、飛びかかってきた魔物がラルフの身体に触れることなく大きく弾き飛ばされる。
俺も周りもそれに声も出せずに固唾を飲んでラルフに注目する。
どんな防御壁を張っているんだ?
見えないぞ。
ラルフの両手の中の大きく赤々としている炎に俺だけでなくみんながまた驚いてラルフに釘付けになっている。
見たこともないくらい強力な炎の玉だ。
これもしかしてラルフが最上級魔法をかけたら今ここにいる魔物たちを一撃ですべて倒せるんではないかと思ったが、その時ラルフがブラングドンに向かい炎の玉を放った。
放ったのは火の初級魔法イグニスだが、ブラングドン2体が瞬時に姿形がなくなりこっぱ微塵になった。
どんだけ凄い威力なんだよ!
それにより魔物たちが一層興奮状態になり、狙い通り次々とラルフに飛びかかっていく。
それを見て俺は自分が張った防御壁を消す。
左端にいる俺たちは
「ゼノン!今だ!右側と前方の魔物たちに向かい頼む!」
俺が指示すると「はい!」ゼノンが目眩まし魔法をかける。アルフもすぐ補助魔法をかけ、間に合わず飛びかかってきた数体の魔物たちはケングレットや外側にいる騎士たちが剣で斬って倒していく。
ラルフたちが多くの魔物たちを引き付けてくれているが、それでも少数はこちらにやってくる。
「よし、みんな走れ!ゼノンいいぞ!次の指示まで待て」「はい!」
俺は走りながら指示した。
魔法の波動でわかったが、ゼノンが目眩まし魔法を飛ばせる範囲は10メートルと言っていたが、アルフの補助で3倍くらになってて30メートル先まで効いてるようだ。
目眩ましが効く時間はゼノンが5分と言っていたので、3倍だとすると15分は効くはず。
瘴気の沼までは200メートル程。
ゼノンは目眩まし魔法をあと6回は使えると言っていた。数字だけで単純に計算すれば到着するまでで使い切るか1回くらい残る計算だが、走っているので、不測の事態が起こらなければ、もっと少ない数で済んで沼の近くまで行けるはずだ。
なるべく沼に到着した地点でも使えるように残しておきたい。
自分たちが走っていることも計算に入れてそれでも襲ってくる魔物たちをなるべく外側の騎士たちに剣で薙ぎ倒してもらいたい。
早く突っ切ってしまいたいが、あまり早く走ると咄嗟に行動出来ないし、体力のことも考えるとそんなにスビードは出せない。
俺は走る速度も指示しながら作戦の確認の為にもう一度言う。
「なるべく今のスピードを緩めず、離れず騎士たちは魔物が襲ってきたら斬っていってくれ。魔術師たちは騎士たちが斬れそうにない分頼む。
前後左右に仲間にも注意を払え!
魔物が自分に襲いかかってきた時は立ち止まってもいいから落ち着いて対処してくれ。
一人が立ち止まったらみんなで声をかけて止まるぞ。
落ち着いてみんなで誰か一人がはぐれないよう周りを見ながら進もう。いいな!」
「「「はい!」」」
後方でラルフたちが囮になってくれてるとはいえ、俺たちが突進していくと数は少ないが、目眩まし魔法を食らっていない魔物たちが集まってくる。
俺たちの後ろの目眩ましに遭っている魔物たちは後方の者たちが倒していってくれてる手筈だ。
一応全方位注意せねばならないが、後方は任せておいて大丈夫だろう。
50メートルくらい進んだだろうか。
「ゼノン次だ!」
「はい!」
ゼノンが目眩ましを使う時は走る速度を緩める。
2回目だ。
目の前と右横に集まってきた魔物が目を回している隙に走り抜ける。
さっきの通り50メートル進めるとしたら
あと2回同じようにすれば沼に到着出来る。
沼の近くまでは俺の予想通り順調にいった。
しかし沼の近くまで来て残り10メートルというところでヌゥッと沼から出てきた魔物は今までと違った。
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