57 / 65
五十五話 国王、攻略者たちと会合する ③
しおりを挟む俺はレンの話を整理してみんなに話した。
「う~ん、レン曰く可能性の話らしいが、聖魔法で巻き戻りをさせることは可能だけど、あの女もこの世界を守っている神獣がやったのではないと。
邪魔する存在でもないんだよな?」
俺の話を聞いてラルフが顎に手を当て逡巡しながら俺の目を見て聞いてきた。
「邪魔する存在はリリアナが処刑された後に目的を達成しようとしてるとウルヴァランが考えているから違うんではないかしら?」
「邪魔する存在にとってリリアナが死んだ後に巻き戻っていることは予想外のことか起きているということか…で、その巻き戻してるのはウルヴァランでもないとすると創造神か?と思っているということか」
ラルフの言葉に俺は頷く。
「そうなの、でもそれも確かではないわ。
まだわからないこだらけなのだけど、ラルフたちがこの世界で新たに生を受けたのもウルヴァランではないと言うの。
もちろん邪魔する存在ではないと思うから創造神かも?と思ったのよ。
いろんなことを解明するにはまずはサイアン男爵令嬢と繋がっている他国の者たちの正体を掴むことが大事だわ」
「あの女とその他国の者が前の世界の者と繋がっているというのがウルヴァラン様のお考えなのですね?」
ルドルフが俺たちの話を聞いて確かめるように言って、もうすでに温くなっているであろうお茶を一口飲んだ。
「そうね、その為には今まで通りサイアン男爵令嬢を監視し続けなくてはならないわね」
「あの女は邪魔する存在のことをどこまで知っているんでしょうね?」
ケングレットが疑問を呈してくる。
「どうかな?今のところ邪魔する存在の目的が何だかまったくわからないけど、サイアン男爵令嬢がどこまで知ってるかもまったくわからないわ」
「あの女は邪魔する存在によりこの世界にやってきたと聞きましたけど、単に利用されているだけの可能性があるのかもしれませんね」
ルドルフの鋭い指摘に俺は目線をルドルフに合わせる。
「ルドルフはサイアン男爵令嬢は利用されているだけだと思っているの?」
「あの女を見ていると、男たちを弄んでチヤホヤされることを喜んでる頭の中に花畑だけしかないのではないかと思うくらい何も考えていないように見えるのです。
その邪魔する存在はただ自分の目的を達成する為にあの女をリリアナ様を排除する為だけに利用しているのでは?と私は思いました」
なるほど。
ルドルフの話を聞いて俺もそうかもしれないと思った。
「サイアン男爵令嬢はリリアナ様が処刑されるまでだけの存在ということですか…」
ロランが目付きを鋭くしながらルドルフを見つめている。
「私にはそう見えます」
ルドルフの見解にラルフも眉間に皺を寄せた厳しい顔をする。
「ということは相手はどうしてもリリアナを排除しなくてはならないということか」
「今のリリアナ様なら全属性を使えてウルヴァラン様の加護があり、神獣のレン様も側についていますからわかりますが、以前のリリアナ様はそこまでの存在ではなかったのではありませんでしたか?」
ラルフの言葉を受けてケングレットが言ったが、それは尤もだな。
でも以前のリリアナも排除しなければならない存在だったのなら?繋がってくる話だ。
「以前のリリアナも邪魔する存在には脅威であったと考えれば、どんな手を使ってでもあの女を利用して排除しようとしたことが理解出来る」
ラルフが俺が思ったことをそのまま言った。
「そうですね。
以前のリリアナ様にも目覚めていない力があって、あの断罪の後、お亡くなりにならず生き残っていたら目覚めることになっていたから、目覚めてしまえばその存在にとっては脅威になる。
だから必ず排除しようとしたということではないでしょうか」
「そういうことなのかもしれないわね」
ロランの話に俺もみんなもより厳しい深刻な顔になる。
「それでは今は今までの五回と状況は変わっていますが、それをわかった上でも相手は変わらず何としてもリリアナ様を排除しようとしてきますね」
ケングレットの言葉に俺は唸る。
どうしてもリリアナを排除しなければならないなら今回も間違いなく俺は狙われるな。
それに今回はウルヴァランも俺についてるならフローラを使ってかそうでなくとも何としてでも俺を殺そうとしてくるだろうな。
「相手がどんな者であれ、俺たちはリリアナを守ればいいんだ」
ラルフの力強い言葉に俺はハッとなりラルフを見やる。
相手は想像もつかない相手なのにラルフが澱みなくキッパリと言ってくれたことで俺は嬉しさが込み上げてくる。
本当にこの男のこういうところは心強い。
「私もどんなことがあってもリリアナ様をお守りします」
「ありがとう」
俺はラルフとケングレットの言葉に感謝を述べる。
「私たちも魔導具の開発を急ぎます」
ジョシュアが大きく頷く。
「ジョシュアもありがとう。
お願いします」
俺が笑顔を見せると。
「私たちももちろんリリアナ様をお守りします。そうだろ、レアンドロ」
「はい!もちろんです」
ルドルフ、レアンドロもそう言ってくれて今の世のリリアナはたくさんの仲間に恵まれていることに感謝する。
「みなさんに感謝するわ。
ルドルフとレアンドロには引き続き、殿下とサイアン男爵令嬢の監視をお願いします。
何かあったらすぐ教えてね。
それに十分に注意してちょうだい。
ジョシュアの魔法制御の魔導具が出来上がれば危険は減るかもしれないけど、今はまだないからくれぐれも無理はしないで。
ジョシュアはワイルとセシルティアと共に魔導具を開発頼みますわ。
わたくしは魔導具の進歩状況と学院での様子は影から知らされているでしょうけど、わたくしからも陛下と王妃殿下にお伝えするわ」
「「承知致しました」」
「了解で~す」
ルドルフ、レアンドロにジョシュアが返事してくれて今日は会合は終わりとなった。
俺たちは時間差で別々に大神殿を出て徒歩で馬車に向かい、邸へと戻って行った。
明日にでも陛下と王妃に会って話をしたいが、面会の希望をお伝えしなければならない。
俺は急ぎ陛下宛の書状を認めて執事長に渡した。
邸へと戻ってからミランとユーラに手伝ってもらいコルセットのいらない簡易なドレスに着替えて、俺の私室にラルフ、ロラン、ケングレット、アルフを呼んで話し合いをすることになった。
それにミランも同席する。
ユーラがお茶とお菓子を用意してくれ、ユーラは部屋から出て行った。
「先程の話をしていて思ったのだけど、サイアン男爵令嬢周辺は王家の影やうちの魔術師たちが見張っているけど、ラルフとロランにはそちらに行ってもらった方がいいと思うのだけど」
俺が言うとラルフはすぐ首を横に振る。
「邪魔する存在のことを考えて王家の影や魔術師たちを心配して俺とロラン二人ともをそっちにと思ったんだろうけど、そうすればリリアナがより危険になる。
お前に何かあったら本末転倒だろ?
それなら俺はリリアナの元に残ってロランだけをそっちに行かせた方がいい。
ロラン一人でも十分に力がある」
「そうですね。私がそちらに参ります」
ラルフとロランからロラン一人に行かせるべきだと言われた。
「わかったわ。
それじゃあロランはそちらに行って。
でもくれぐれも無理はしないでね」
「リリアナ様、承知しました」
ロランが頷く。
「ピートにもロランと一緒に見張るように俺から言う」
「ピートまで?ピートはギルドマスターよ!
そんな暇はないでしょう?」
ラルフがピートもロランと一緒にフローラを見張らせると聞いて俺はピートまで?と思った。
「リリアナ、これは一大事だ。
リリアナのことはもちろんたが、相手の目的はまだわからないが、国のいや世界が大混乱になることかもしれないんだ。
ピートに事情を話せば喜んでやってくれるだろうよ」
ラルフの一大事だという言葉に俺だけじゃなくこの場にいるケングレット、アルフ、ミランも顔を引きつらせる。
俺もそんな大きなことなのかと息を呑む。
「わかったわ。
それならアルフもロランと共に見張ってもらうことにするわ。
わたくしにはラルフ、ケングレット、ミランがいるもの。
アルフにはみんなを補助する力がある。
ロランやピート、影や魔術師たちを補助して欲しいの」
俺の言葉を聞いてアルフがまた息を呑む。
「お嬢様、私をそこまで買って下さっているのですか?」
アルフは引き締まった顔をしながらもどこか嬉しそうだ。
「もちろんよ。
貴方の補助魔法の実力は素晴らしいし騎士としても努力を怠らない姿をいつも見ているわ。
ロランやピートを助けて欲しいの」
「承知致しました」
「そうだな。アルフにロランやピートの魔法を強化してもらっていた方が安心だな」
ラルフも俺の意見に賛同してふむと頷く。
「ラルフ様!」
アルフはラルフにも認めてもらえたことに感激しているようだ。
「アルフ、相手がどんな存在か見えないからとても危険よ。
くれぐれも無理はしないでね」
「はい。
リリアナ様は大丈夫でしょうか?」
アルフが俺やラルフを見ながら尋ねてくる。
「リリアナには俺もケングレットもいる。
ケングレットは教室内でもリリアナと一緒だし、ミランも学院内、教室の近くまで行くことが出来て、俺たち護衛よりリリアナの近くにいれる。
ミランもじじいの指導の元、補助魔法を頑張って取得したことは知っている。
リリアナのことは俺たちが必ず守る。
ミランも頼んだぞ!」
「ラルフ様承知致しました。
お嬢様、私ミランはどんなことをしてでもお嬢様をお守りします」
ミランもラルフに評価してもらって嬉しそうだ。
最初の頃はアルフもミランもラルフの不遜な態度に怒ってラルフと対立するようなことがあったが、ラルフの折り紙付きの実力を見てきたから尊敬もしているのだろう。
「それじゃ決まりね。
みなさんお願いするわ」
それから2日後、俺は陛下と王妃に面会して魔導具の進歩状況と学園での王太子とフローラのことを報告した。
「本当に我が愚息が腹立だしい」
陛下は溜息交じりに王太子のことを嘆いた。
陛下と王妃にはリリアナの巻き戻りや邪魔する存在の話はしていない。
しかしロラン、ピート、アルフをフローラを見張る方にいかせることを了承してくれた。
陛下も王妃も只事ではないことを感じているのではないだろうか?
それか俺が言うことを全面的に信じてくれているのか?
両方かもしれないが、陛下と王妃がすんなり了承してくれて安心した。
「ラルフとケングレット、王家の影がリリアナについていてくれるから安心しているが、リリアナよ!
くれぐれも注意するのだぞ」
「陛下有り難いお言葉感謝致します」
俺は陛下の言葉に姿勢を正す。
それからジョシュアたちの魔導具の進歩状況を聞いて、記録する魔導具だけでなく魔法防御や位置を知らせる魔導具の研究が進んでいることに陛下も王妃も大変興味を持ち、喜ばれた。
新しい魔導具が完成したら陛下と王妃にも見せることを約束した。
今の調子でいけば、学院の各所に記録出来る監視の魔導具を配置するのも思ったより早く出来るかもしれない。
それに陛下はその魔導具が出来た暁には王宮にも取り入れようと考えているのではないだろうか。
王宮には王国魔術師団が張っている結界があって守られているが、ワイルたちがが開発した魔導具を配置した方がより安全になるだろう。
これから何があるかわからない。
俺もその方がいいと思った。
「リリアナこれからわたくしとお茶をしませんこと?」
陛下との面会が終わってすぐ、王妃からお茶のお誘いがあった。
何だろう?と思ったけど
「王妃殿下、お誘いありがとう存じます。
よろしくお願い致します」
俺は王妃とお茶をすることになった。
2
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。
四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」
突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。
婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました
由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。
彼女は何も言わずにその場を去った。
――それが、王太子の終わりだった。
翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。
裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。
王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。
「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」
ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?
サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。
「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」
リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる