ぼくらの森

ivi

文字の大きさ
122 / 122
第四章 出会い

第122話 本当の友達

しおりを挟む
 セロは好奇の視線を感じて、顔を上げた。

 いつの間にやって来たのだろう。彼の前では、ジンが気まずそうに棒立ちしていた。

 目が合うと、少年は忙しなく目を泳がせる。

 「あ、あの……」

 何か用があるのかも知れない。

 セロは首を傾げた。

 「どうした?」

 「えっと……な、なにしてるの?」

 「ああ、地図を見ているんだ。明日には出発しないといけないから」

 セロは見やすいように、地図を広げてみせた。

 茶色く色褪せた地図を、ジンはおずおずと覗き込む。

 紙には複雑な線と文字が描かれているばかりで、それが何を意味するのか、わからなかった。

 「これは、なに?」

 小さな世界を興味津々で見渡すジンに、セロはかつての自分と似たものを感じた。

 「もしかして、地図を見たことがないのか?」

 ジンは小さく頷いて、紙の左端に描かれた絵を指さした。

 「この、蛇みたいなのはなに?」

 「これは山脈だ。ここからは見えないが、あっちに大きな山が連なっているんだよ。今、僕たちはこの森の……ここにいる」

 セロは西の森を指さした。

 複雑に分岐した山脈を囲む、巨大な森の一点だ。

 「すごい……すごいね!地図って、ぼくたちがいる世界の絵なんだ!ねえ、これはだれが描いたの?」

 「僕も詳しくは知らないんだが、作ったのは魔法使いじゃないかな。彼らは空を飛ぶことができるからね。地理については、よく知っているはずだ」

 ジンはきらきらと目を輝かせた。

 「ねえねえ、魔女さんにお願いしたら、ぼくも空を飛べるようにしてくれるかな?ぼくも地図を作ってみたい!」

 セロは肩をすくめた。

 「さあ、どうだろう?魔女は意地悪な人が多いから、君のお願いは聞いてもらえないかも知れないな」

 「ええ……あっ!それなら、ドラゴン乗りさんにお願いすればいいんだ!ドラゴンに乗って空を飛ぶの、かっこいいもん!」

 すっかり打ち解けた様子の二人を、スノーはメーノと並んで眺めていた。

 「よかった。仲よくなれたみたいだね」

 「魔法、使えるの?」

 メーノの問いに、スノーは苦笑する。

 「あはは……。ごめんね、本当は魔法じゃないんだ。おまじないって言う方が正しいのかも」

 スノーは少し疲れてしまったのか、背後の木にもたれた。

 「あれはね、好き好きのおまじないって言うんだ。面白い名前でしょう?
 このおまじないはね、自分の心を相手に開いておけば、相手もそれに答えてくれるっていう、お守りみたいなものなんだ。
 反対に嫌い嫌いのおまじないもあるけど……自分も相手も傷つけてしまうから、おすすめはしないよ」

 最後の言葉に、メーノは違和感を感じた。まるで、過去に嫌い嫌いのおまじないを使ったことがあるような言い方だ。

 黙ってしまったスノーの横顔は、とても悲しそうだった。

 「……ああ、ごめんね。ちょっと、昔のことを思い出したんだ」

 わざとらしく笑ってみせると、スノーはジンとセロに目を向けた。

 「こうして見ていると、魔法の力なんていらないように思えてくるね。もし、魔法に頼って仲よくなったとしても、本当の友達にはなれなかったはずだから」

 メーノは耳をすませる。

 どうやら、ジンたちも魔法の話をしているようだ。

 彼らの会話の中に『ドラゴン』の言葉が聞こえた、そのときだった。

 「ハハハッ!そいつはやめとけよ、ジン。ドラゴン乗りには、関わるもんじゃないぜ?」

 森に響く声とともに、大きな馬が低木を飛び越える。

 重い足音を立てて颯爽と現れた馬の背には、ダイがまたがっていた。
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

 エンゼルクリーム

続きを楽しみに待っています♡頑張ってください!

解除
蒼月丸
2024.10.08 蒼月丸

良い作品なのでお気に入り登録しました!
こちらも作品を投稿しています!お互い書籍化目指して頑張りましょう!

2024.10.08 ivi

蒼月丸 様

温かいコメントをありがとうございます!
お褒めいただき、本当に嬉しいです。

頑張りましょう!

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

ペーパードライバーが車ごと異世界転移する話

ぐだな
ファンタジー
車を買ったその日に事故にあった島屋健斗(シマヤ)は、どういう訳か車ごと異世界へ転移してしまう。 異世界には剣と魔法があるけれど、信号機もガソリンも無い!危険な魔境のど真ん中に放り出された島屋は、とりあえずカーナビに頼るしかないのだった。 「目的地を設定しました。ルート案内に従って走行してください」 異世界仕様となった車(中古車)とペーパードライバーの運命はいかに…

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。