奴隷はツライよ。

百合子

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3. 将軍閣下に息つく間はない

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「王よ!!
南方併合完了との一報がございましたぞーっ!!!」


ドワーーーっ!!と
王宮内の王の間は大きな歓声につつまれる。


「おお!さすがは余の弟!!アレクセイはもう勝利を収めたか!」




太陽と海の神"ギエキス神"を崇めるこのローマン帝国は祖先の代々の悲願、大陸の統合をとうとう果たした。



この偉大な勝利から約2ヶ月…。




都は喜びに活気づいて、国民は神と王家を讃えて神殿に次々と貢物を納め、
王宮に連なるようにそびえる神殿は日夜、人で溢れている。




南方での雑務を終わらせ、アレクセイはようやく都に凱旋した。


今年37になる端整な美丈夫、2メートルはありそうな強靭な体躯に黒い軍服を纏う、王弟将軍閣下の人気は絶大だ。


「きゃーっ、アレクセイ様ぁーー!!」

「アレクセイ閣下万歳!!!」

「アレクセイ様素敵ーっ!!!」


老若男女問わず割れるほどの賞賛の声、さけび声、黄色い声援。。

最強の将軍閣下の隊列を国民は両手を挙げて迎えた。


王宮でもそれは同じで、兄王からの労いの言葉、貴族からの賞賛。。
勝利の宴は夜が更けてもその賑わいはおさまらない。。



「王よ、そろそろ宮へ下がっても?」

気持ちよく酔っている兄王に耳打ちする。

「ああ!弟よすまぬ、其方は久しぶりの帰城であった!

宮でゆっくり妃達と過ごせ」

皆に惜しまれながらも宴を後にした。



約8ヶ月ぶりの帰国だが、妃達は誰も召さずに、広すぎるベッドに1人で眠る。。


裸の肌に冷んやりとしたシーツの感触が心地よく眠気が訪れたが、
少し眠りにつくとすぐに悪夢が襲う…。


ここ半年ほど、この悪夢でまともに眠れないのだ。
女を抱いて寝たり、睡眠薬を飲み寝たり様々とためしたが、どれも結果は同じだった。

あぁ、自分の宮でも同じなのか…。


酒を飲み横になる、1時間続けて眠れれば良い方で、そんな事を断続的に続けているうちに朝を迎えた。


神経が張り詰める戦争も落ち着けば、不眠も治るであろうと思っていたがその気配もなく、最近は頭痛も酷くなってゆく有様だ…。



太陽が現れてまもなく、、小姓達に囲まれ着替えていると神殿からの使いがきた。

「おはようございます閣下、ウラク大神官にご神託が降りました。
大神殿へお越しくださいませ」


「……今か?」


「はい、王。宰相殿もお越しになります」


「…わかった、すぐに行く」


大神殿の奥深く祭壇の間にはすでに王、宰相、大神官が揃い椅子に掛けていた。


「アレクセイ待っていたぞ、顔色が優れぬようだが大丈夫なのか?」

兄王の隣りの席に促されるまま掛けて長い足を組む。


「はい、大事ありません王よ。
ところで、ウラク大神官、早朝からの神託とはなんだ?」


ズキズキと痛むこめかみを抑えながら問う。


「閣下に関するご神託でございました。
国の重鎮たる貴方様に関する事項でございましたので、王、宰相にもご臨席賜りました」


ウラク大神官が神より賜る神託は今までただの一度も外したことがない…。


「ウラクよ!何なのだ!アレクセイに関することとは!」
そう叫ぶ王も宰相も顔に緊張が走る。




""安息日キフリンヘ来ヨ身ヲ蝕むモノを祓ゆ、安息ヲ得ネバチカク壊レ死スル""




「と、夜明けの祈りを捧げた際、そう神は仰せになりました………。」


「なんとっ!アレクセイが…!弟は、国の英雄、守護神ぞ!」

王も宰相も血の気が引いて真っ青になっている。


「王よ、落ち着かれよ。私は大事ありません。
して、ウラク大神官安息日はいつだ?」


「本日でございます。
ギエキス神はアレクセイ様が御生れになって以来貴方様をいつも祝福なさっていらっしゃる。
ご無事にお戻りになられるでしょう」


「都からキフリンの神殿まではかかっても半日といったところか…
王よ、数刻の後出立致します」


「ああ、弟よ…神の意に従い必ず無事に戻ってくるのだぞ…!」


颯爽と神殿を出る。




まったく。。息つく間もないな…。











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